夜を歩く

帰り道。家に着きたくなくて、隣の駅で降りた。暗い夜道、できるだけすぐに家につかなように遠回りして、でも反対方向に進む勇気はなくて。

幸せなことに家は遠かった。駅から徒歩20分、遠いけど、ここなら貧乏な私たちでも住めるねって。一緒に帰るのも楽しみだねって。

不幸なことに家は遠かった。歩けば歩くほど、あの時間を思い出す。それでもやっぱり、反対方向に進む勇気はなかった。この先に、まだ消えないあの人の匂いが待ってる。

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