ささひなちゃん

おふとんに 恋をした 普遍的な文章を書きます

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最近の記事

不吉なエスカレーター

地下鉄から改札に向かう長いエスカレーター。 昔、ここでワイヤレスイヤホンを落とした。イヤホンは遥か下へ、そのまま見つかることはなかった。 少し前、ここの改札で集合した日、あの人に振られた。このエスカレーターが悪いわけじゃないけどね。 そして今日、またこの先の改札口で、新しい人と待ち合わせ。私は縁起とか気にするタイプじゃないから。もしそういうのがあっても、今からいいスポットにしていけばいいし。きっと、大丈夫だよね。 ん? 何かが目に入った気がした。

    • 夜を歩く

      帰り道。家に着きたくなくて、隣の駅で降りた。暗い夜道、できるだけすぐに家につかなように遠回りして、でも反対方向に進む勇気はなくて。 幸せなことに家は遠かった。駅から徒歩20分、遠いけど、ここなら貧乏な私たちでも住めるねって。一緒に帰るのも楽しみだねって。 不幸なことに家は遠かった。歩けば歩くほど、あの時間を思い出す。それでもやっぱり、反対方向に進む勇気はなかった。この先に、まだ消えないあの人の匂いが待ってる。

      • ちょっと怖いはなし

        いまからおはなしするのはね、ちょっとだけ怖いはなしだよ。私が怖いはなしめちゃくちゃ苦手だって言ってたのに、無理やり聞かせて喜んでたあの頃とは立場が逆転してるね。 私、あなたのことが今でも好きだよ。毎日あの頃のこと思い出して、毎日泣いてるよ。でもそれは悲しいからだけじゃなくて、そうすることで私の中で過去の話にならないためでもあるんだよ。 え、いまのはなしのどこが怖いのって?

        • 自己紹介

          莫迦むすめ 場数を踏んで 化かされる

        不吉なエスカレーター

          衣替え

          8月ももう終わる。夏の気温が誤魔化し続けた私たちの恋も、きっともうすぐ温度を失う。同棲なんてしなきゃよかった。あいつと付き合わなきゃよかった。あいつを好きにならなきゃよかった。あいつと出会わなければよかった。そんな恨み言をクマのぬいぐるみにぶつける。あいつがはじめてくれたプレゼント。すっかり色褪せたそいつは、私自身。 8月ももう終わる。次の季節の準備をしないとなあ。でも、ほら、ニュースでまだ猛暑日が続くってやってるよ。今日はもう疲れたし、秋の準備はまた今度でいいかな。そうこ

          冷凍保存

          誰にだって昔の恋人に連絡したくなる日があるでしょう?夜、自分の部屋で、布団の中、意味もなくスマホ見て、あいつ今何してんのかなって。寝られなくて私のこと思ってたりしないかな、なんて都合のいいこと考えて。そのすぐ後にはもうとっくに他の人と一緒に寝てるかも、なんて悲観的に考えて。結局気づけばカメラロールの中のあの人を探してる。スマホの中でだけ生きてる、私の恋人。 思いが通じた。翌日あいつを見かけたんだ。ひとりでいる姿を見てホッとした。やっぱりあいつの良さがわかるのは私だけなんだ。

          LIFE

          一生に一度の恋だと思っていた恋は、あっさり終わった。あの人にとってはただの青春の1ページかもしれない。私だってたくさん辛い思いもしたし、いなくなればいいと考えたこともあった。それでも、私にとってはあらゆる初めてを捧げた、かけがえのない恋だった。前に進もうと手当たり次第に新しい恋を探そうとした。恋は上書き保存するもの。でもそんなの嘘だった。寝ても覚めても忘れられない。隣に他の人がいるほど、あの人を思い出してしまう。 それから月日が経った。記憶は薄れゆくもの。あの人との思い出は

          戦場

          今日もたくさん傷ついた。毎日毎日、言葉のナイフが私を突き刺す。少しずつ、少しずつ傷は深くなっていく。痛くて痛くてたまらない。それでも私があの人にしがみついてるのは、自分に自信がないから。これを逃したら、もう。私にはあの人しかいないんだ。 今日もたくさん傷ついた。降り注ぐ刃物はついに私の心臓を捉えた。瀕死の私の恋心はとうとう事切れた。戦友の亡骸の前で、明日からのことを思った。それでも私にはあの人しかいないから。流れる涙に話しかける。 「あなたはまだ生きてたんだね」 たくさんの

          不満

          夏休みなのに私に自由がないのは夏期講習のせい。だけど別に不満じゃない。あの人に今日も会えるから。 帰り際、雨が降り始めた。いけない、傘持ってき忘れた。下駄箱でぼんやり外を眺めていると、あの人の声がした。「傘ないの?貸し出し用の傘あるよ」そういって、ビニール傘を渡された。「じゃ、また明日」 雨なのに同じ傘で帰れないのは私が生まれてくるのが遅かったせい。とってもとっても不満だな。生徒の私じゃ届かない。

          目覚める

          大好きだよ。 そう言って私は抱き寄せる。ぬくもりを感じる。ああ、私はこの人のことが本当に好きなんだ。目を閉じて幸せを噛みしめる。もう一度目を開けた時、私は布団の上だった。夢に見るほど想うなんて私らしくもないな、なんて思いながら、その気持ちを忘れないうちに急いで恋人に連絡をして、別れを告げた。

          チャットモンチー

          中学生のとき、好きな人ができた。話題を作りたくて、その人の一番好きなアーティストの曲を全部覚えた。恋が終わったとき、私の手元に残ったのはその曲たちだけだった。 高校生のとき、一目惚れをした。その人の全部が大好きで、いつも聴いている曲も大好きになった。恋が終わったとき、私の手元に残ったのはその曲たちだけだった。 大学生のとき、優しい恋人ができた。その人が教えてくれた曲が、大人になれない私の心を支えてくれた。恋が終わったとき、私の手元に残ったのはその曲たちだけだった。 恋に

          チャットモンチー

          向き合う

          みなさんは朝ごはん、ちゃんと食べてますか? 私は朝という概念とはすっかりご無沙汰な生活を送っているから、1日2食が原則。でも私にだってたまには朝起きなきゃいけない時がある。そんな時くらい朝ごはんを食べようと何度か食事を試みたけど、どうもお腹の調子が悪くなる。都合の良い時だけ欲してもダメなのは恋人と一緒。見かねた母が「朝食べられないで出かけるときはこれを飲みなさい」とメイバランスという栄養ドリンクを冷蔵庫にストックしてくれた。 でも人間は怠惰な生き物。ごはんを食べないならその

          短文

          はじめまして、ささひなちゃんです!note始めました! という記事を投稿して、それ以降まめに新しい記事を更新する未来なんて、私には想像できなかった。 そういえば、昔お付き合いしていた方に「ささひなちゃんとの未来、想像できなくなっちゃった」と言われて別れを告げられた。私との未来って、どんなのだったのかな。そもそも未来ってなんだろう。まだ私たちが過ごしていないときのすべてを指すなら、1秒後も立派な未来。 「1秒先のことも想像できないなんて、想像力に欠けてますね」なんて嫌味をいう