留学の振り返り①
2022年8月18日に出国し、オランダのライデン大学(Advanced LL.M. Air and Space Law)にて2023年10月10日に帰国しました。備忘も含め留学に関するいくつかの事項を記録しておこうと思います。多分2回か3回くらいになります。
1 出願準備
出願において主要なものは、①志望動機書、②推薦状、③各種証明書(卒業証明書等)、④英語試験でした。
①に関しては、ライデン大学の同じコースを過去に卒業された先輩に志望動機書を共有いただき、参考にさせていただきました。ちなみにもしLeiden大学への出願を考えていらっしゃる方がいれば、私の資料でよければ共有しますので、適宜ご連絡ください。
②に関しては、事務所のパートナー弁護士と研究会等でお世話になっていた宇宙法関係の先生(教授)にお願いをしました。事前に下書きをしてご確認いただくという流れでしたが、教授に関してはほとんど1からオリジナルの推薦文を書いていただくことになりました(ありがとうございました。)。
③は大学の卒業証明書や成績証明書は、オンラインで申請をしてコンビニで取得するという方法でなんとかなりました。なお、高校の卒業証明書も必要でしたので、こちらは電話とメールをして郵送をしていただきました。ライデン大学への成績証明書等の送付は原本での送付が必須で、しかもなぜか私の大学の成績書がオランダの税関で差し止められるというよく分からない状況になり、到着までに相当時間を要したので、注意が必要です。
④は次の項目でちょっと細かく書きます。
なお、出願準備から入学までのタイムスケジュールはだいたい以下のとおりなのですが、私はこの出願手続で色々とポカをしており、(i)合格通知に気がつかない(ii)pre-session(英語コース)に申し込み漏れるというやらかしをしています。(i)は合否は登録メールアドレス宛に来るものと思っていたところ、実際には出願手続で使うStudylink(?)というプラットフォーム上で結果通知がなされていたこと、(ii)は条件付き合格ということで自動的に英語のpre-sessionコースの案内が来るものと思っていたところ事前の申し込みが必要だったという愚かなやらかしによるものです。最悪です。
2021年9月:IELTS初受験(思っていたよりとれていたので、余裕ではと自意識過剰な勘違いをする。)
2022年1月:推薦状依頼/各種証明書手配
2022年2月上旬:出願受付開始/出願(IELTSは2021年9月の若干足りていないものを提出)
2022年2月下旬:(IELTSのrequirementをクリアすることを条件とした)条件付き合格。ただし、この時点では合格に気がついていない。
2022年3月下旬:合否通知が来ないことを不思議に思い、プラットフォームを確認したところ1ヶ月前に合格していたことに気が付く。なお、IELTSのrequirementは5月末の期限までにクリアできれば良し、できなければpre-sessionコースでなんとかなるだろうと余裕をこく。
2022年4月下旬まで:IELTSを数回受けながら、壮行会や家探しなど
2022年4月下旬:pre-sessionコースについて大学に問い合わせをしたところ既に満席であり、5月末までにIELTSのスコア取得が必須であるとの連絡を受け慌てる。
2022年5月末:なんとかラストワンチャンスでスコアを取り、大学に送付。
2022年6月下旬:家が決まる。居住許可関係での必要書類を大学側に送付。
2022年8月18日:出国
という流れでした。
2 IELTSについて
前提として、私は帰国子女ではなく、長期の留学経験はありません。大学時代にシドニーに1ヶ月ちょっと留学をした経験と、実務で海外案件を扱うことがそれなりにあった(契約書ドラフトや英語会議への参加等)があったという程度ですので、英語への「強い苦手意識」まではないものの、「得意」だとは到底言えない状況でした。
出願半年前(2021年9月頃)に受けたIELTSはReading7.5、Listening6.5、Speaking6.5、Writing 6.0の Overall6.5でした。
上記のとおり、pre-sessionコースを受ければなんとかなるやろと申込もせずに怠けていたので、(それまでもダラダラと英会話等はしてましたが)お尻に火がついたのは2022年5月頭ということになりますが、そこから1ヶ月の猛勉強と訓練で、なんとか最終は、Reading 9.0、Listening 7.5、Speaking 7.0 Writing 6.5のOverall 7.5で出願をすることができました。
英語の本質ではないTipsも含めていくつかメモをしておきます。
まず、IELTSの(決して本質ではない)対策として、短期間に複数回受けると同じ問題と遭遇するという点があります。もちろん、全ての問題は回収されてしまいますし、公式の解答は発表されないので対策しようがないのですが、特にReadingやListeningセクションで同じ問題が出たときの有利さは半端ないです。私は上記のように5月に慌てて受けまくったので(週末に別会場で3日連続で受けたりしてました。)、何度か同じ問題に遭遇することがありました。試験問題が回収されてしまう&解答は発表されないという性質上、復習することは難しいですが、SpeakingやWritingは終わった後にどう回答するのがよりベストだったかを考え直すのは有意義かと思います。なお、これは英語力という意味では邪道で本質的ではない対策なので、あくまでも「そういうことが起こりうる」という程度です。
また、総論的な対策としては、バークレーハウスという予備校とNativve CampでSpeakingとLisetning対策をし、Writingはこの本を使っていました。その他、問題集としてはこのシリーズを2冊購入し時間を計って3回ずつ解きました。なお、英会話は4月・5月の2ヶ月間は平日毎日5時間(朝2時間、夜3時間)、週末のIELTSを受けない日は6-7時間程度やっていました。大学受験・司法試験時代からそうですが、とりあえず、「インプットは手を広げすぎず反復する」「アウトプット(英会話・英作文)をしまくる」ことが正義だと思っていたので、同じように対策することにしました。
科目別ですが、
Readingは、そもそもそこまで苦手ではなかったですが、上記の問題集を①時間を計って解く、②知らない単語や読めなかった文章は全てチェックする、③問題文との関係で最悪どの程度読めていれば8.0くらいをとれそうかを確認する、④時間をはかって解き直す、というのを繰り返しました。多分ですが、大事だったのは③の工程でした。IELTSのReadingで重要なのは(といよりは個人的に性に合った進め方は)、80%の精度で頭から読んで、ただ、時間が足りなくなって後半20%を読めないよりも、60-70%の精度でとりあえず「全部」読み切って、問題文で関連する箇所は精読するというような方法だと気がつき、よくわからない単語や文章は無視して「ざっと最後まで読む」を心がけるようにしたところ、受験後半は、安定して8.0以上をとることができるようになり、たまに同じ問題文が出ると9.0(満点)をとることができるようになりました。
Listeningは、とにかく英会話を増やして耳を英語漬けにすることを注意しました。初回受験時から1.0上がったので、やっぱり耳の「慣れ」は大事だと思います。あとは、よく分からない問題が出たら「3」と回答することに決めていました。(できれば事前に問題文に目を通す→)英語を聞く→問題文を確認する→回答するという流れが正しいのですが、よくやってしまうミスとして、英語が聞き取れていないのに問題文を読んで内容を推測しようとするものがあります(あるような気がします。)。本人は問題文から英文を「思い出そう」としているつもりなのですが、ぶっちゃけ聞き取れていないものは問題文を読んでも解答は分かりません。そこに時間を使って、本来回答できるはずのものを落とすのが最悪なので、「一読して分からなかったら3」というのを自分ルールにしました。これがスコア改善に役立ったのかどうかは分かりませんが、1つに時間をとられて、後の問題が引っ張られてできなくなる自体は回避できるようになった気がします。
Writingが一番の鬼門でした。これは英語力云々もあるのですが、そもそもIELTSのWritingはAcademic Writingを求めており、何かなじみのないお作法があります。まず、このお作法を学ぶところから始めないとスコアは伸びません。ライデン大学はIELTSやTOEFLにつき、他のLL.M.同様にスコア別の足切りがあり、最後まで私が苦しんだのがWritingを6.5以上にすることでした。問題集に記載されたお題について、書きまくり、英会話の先生に添削してもらうということを繰り返しました。結局6.5ギリギリしかとれず(厳密には7.0を取れた回は他のパートのスコアがイマイチでした)、Writingに関しては7.5以上に届いたことがないので、未だに不明です。ただ、大学の試験やレポートでは、特にWriting能力について教授からダメ出しされたことはなかったので、6.5あれば一応なんとかなるんだと思います。
Speakingは、練習に尽きると思います。役に立たないアドバイスですね。IELTSのSpeakingは、3つのセクションに分かれており、多くの人にとって急激に難しくなるのはお題にそって話し続けなければならないセクション2と問いかけが急激に難しくなるセクション3かと思います。これも本質的ではないのですが、セクション2は馬鹿正直にその場で回答を考えようとするとめちゃくちゃな英語になったり、最悪詰まってしまったりするので、私がやっていて(それなりに意味があったかなと思う)小手先のテクニックは、いくつか30秒程度よどみなく「完璧に話せるシナリオ」(「基本シナリオ」といいます。)を準備しておいて、それを「お題に即して調整する」というものです。例えば、「大学時代にフットサルをしていて、真面目なサークルだったので練習はしんどかったが、フットサルもうまくなったし、青春ができた」という話を「完璧に話せるシナリオ」とします。そうすると、「あなたが経験した困難」というお題には「基本シナリオ」を機械的に話した上で「特に新しいフォーメーション・戦術を覚えることが難しかったが、ビデオを録画して見直し、チームメイトと朝練をすることで乗り越えた」といった「現場対応の話」を30秒程度話せば済みます。「あなたが経験した重要な意思決定」については、「基本シナリオ」を話した上で、「司法試験への勉強に注力するために3年生で引退した。名残惜しかったが、引退後もチームメイトとの関係性は続き、フットサルで培った体力をフルに勉強に使うことができた」といった形でつなげます。こういった「基本シナリオ」を5つ程度準備し、かつ、そのポジティブな側面とネガティヴな側面を準備しておく(フットサルの経験であれば、例えば①青春できた、チームメイトとの協調性を学んだ等のポジティブな側面と②練習がしんどく勉強時間がとれなかった、怪我をした等のネガティヴな側面)と、どのようなお題でも開始30秒程度はよどみなく話せる上に、お題への対応もしやすくなります。数十秒与えられる準備時間でゼロから話す内容を決めるのは非ネイティブには難しすぎるので、話す大枠は決めておくに越したことはないと思います。ちなみに、セクション3以降ですが、よく分からない質問や聞き取れなかった質問があれば聞き返すことをおすすめします。3回聞き返しても7.5がとれた回もありましたので、聞き返すこと自体は大した減点にはならないんだと思います。
[続く。]
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