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【特別指定選手】"在学中" に学生がNPBに挑戦する可能性

お久しぶりですね😸  しばらく書くこと自体を放棄していたので当たり前なのですが🤔

新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、様々な制約の中ではあるものの、無事2021年は大学野球の春季リーグを開催することができました。
近畿学生など一部連盟を除き、多くの連盟が一般の観客も入れた有観客試合のスタンスを執り、この大変なご時世ではあるものの開催にこぎ着けてくれたことには本当に感謝の思いでいっぱいです。

追記|3度目となる緊急事態宣言の発出により、多くの連盟が無観客開催に切り替え。


東京六大学野球・東都大学野球といった、いわゆる中央球界では、法政大の三浦銀二(福岡大附大濠④)投手が開幕戦でノーヒットワンランの快投を魅せたり、青山学院大の佐々木泰(県立岐阜商業①)内野手が、いきなりの4本塁打で鮮烈すぎるデビューを飾るなど活躍が目立ちます。

一方これらの中央球界を離れ、地方リーグに目を移すと、北東北大学野球では、富士大の金村尚真(岡山学芸館③)が毎回の18奪三振で完全試合を達成。
野手では、関西学生野球の関西大の久保田拓真(津田学園④)捕手、野口智哉(鳴門渦潮④)内野手の大黒柱など目白押しです。

やはり、中央球界・地方リーグともにこれだけ活躍する大学生の逸材が多くなると、プロ野球ファンの中からはこのような意見も出始めてきます。『なんとかインチキして〇〇を贔屓チームに連れてきたい』などと。

ただ、現行のNPBでは、現役の学生をNPBにそのまま連れてくる制度はありません。
非現実的だからこその声でもあるのでしょう。

しかし、日本のプロ野球以外のプロスポーツに視線を移すと、現役の学生がプロの試合に出場していることはザラにあります。
今回はこのことについて、《在学中に現役の学生がプロ野球に来ることはありえるのか?》について綴って行きたいと思います。


1 特別指定選手制度

山口 颯斗選手(SG/SF¦レバンガ北海道)
小酒部 泰暉選手(SG¦アルバルク東京)
野本 大智選手(PG¦滋賀レイクスターズ)
津屋 一球選手(SG¦三遠ネオフェニックス)

現状、現役の学生がプロスポーツリーグの試合に出られるところとして代表的なのが、国内男子サッカーのJリーグ、そして男子バスケットボールのBリーグの2つが挙げられます。

Jリーグ、Bリーグともに《特別指定選手制度》という制度が設けられており、これは現役の学生が学校の体育会部活に在籍しながら、プロのチームでもプレーできるというルールです。
(少し違う部分もあるのですが)一般企業でいう "インターンシップ" として考えて貰えると分かりやすいかなと思います。

Jリーグでは、2018年のルール改定をもって、卒業後の本契約が予定されている内定済みの選手のみにしかこの制度は適用できなくなりましたが、Bリーグでは現状この "縛り" はないため、下級生時からプロチームと "特別指定選手" としてプレーすることが出来ます。
Bリーグでは、特別指定選手としての期間が終われば、そのままチームを離れるか内定(翌年の本契約)を貰う…といった形が多くなっています(Jリーグはそのまま内定)。

昨年、"高校生Bリーガー" として、福岡第一高校から三遠ネオフェニックスに加入し、僅か2ヶ月の所属ながらレギュラーを勝ち取り、新人賞ベスト5も受賞した、河村勇輝選手(PG・東海大2年)が最たる例として挙げられるでしょう。
その河村選手は、今シーズンは横浜ビー・コルセアーズに特別指定選手として加入し、 "シックスマン"(控えの切り札の選手)として大きくチームに貢献しました。現在は東海大学に戻ってプレーしています。

(Bリーグ1部 京都ハンナリーズvs横浜ビー・コルセアーズ。写真はフリースローを打つ河村選手。
横浜はこの日京都に完敗を喫するも、河村は約25分の出場で12得点・5アシストとチームを牽引した)

特別指定選手の詳細においては、こちらのWikipediaのページを参照いたたければと思います。

2.NPBでネックとなる理由

Jリーグ・Bリーグともに制度に改善の余地はあるものの、学生から見れば早い段階からプロの舞台を経験できる。プロチームから見れば時に選手補強にも繋がるしチームを活性化できる。運営(リーグ)から見れば話題の若手選手が加入することで更なるリーグの繁栄に繋がる。大学から見れば部や大学自体の認知度のアップに繋がるなど、どの立場から見ても良いメリットが伺える特別指定選手制度。
後発のJリーグ・Bリーグで成功を収める実績があるにも関わらず、なぜNPBでは導入の議論すら起きてないのでしょうか。
個人的に考えられる理由は幾らかあると思っています。

❶統一組織の存在の有無

《特別指定選手》の制度に限らず、プロ野球に関する多くの案が頓挫している大きな要因には、統一組織が存在していないことが挙げられるのではないでしょうか。

サッカーでは、日本サッカー協会(JFA)が全てのカテゴリーを束ねており、トップリーグとなるJリーグから、各クラブの育成年代となるユース・ジュニアユース、そして学生サッカーまでを一括で管理されています。同一組織が束ねるからこそ年代や立ち位置の障壁がなく物事を進められていると言えます。
このことはバスケットボールにもいえ、日本バスケットボール協会(JBA)が、育成年代の統括、審判や日本代表、3人制バスケットetcの強化などを幅広く統括しており、トップリーグとなるBリーグ、女子バスケのWリーグも傘下にすることで、実質的に全てのカテゴリーを統治していることになります。

その一方で、野球ではプロ野球とアマチュア野球は異なる組織が運営・統括しており、ここが最大の障壁になっています。
またプロ野球の中でも、セパ12球団から構成される日本野球機構(NPB)と、ベースボール・チャレンジ・リーグ(BCL)を始めとする "独立リーグ" と呼ばれる各組織で異なり、一方のアマチュア野球でも、社会人野球やクラブチームを統括する日本野球連盟(JABA)、高校生では高野連、大学生では全日本大学野球連盟とこちらもバラバラの状態。

そのことが、『野球』という競技で捉えたときに風通しの悪さとなって物事が進まなくなっている…ということが往々にして起こっています。

主に高校生・大学生が在学中にプロ野球に挑戦するとなると、少なくとも高野連・全日本大学野球連盟・NPBの、3つの立場の異なる組織がそれぞれに権力を持って争うことになります。
当然割を食うことになるJABAなど他組織も黙っていないでしょうから、これでは同じ方向に物事を進めるのは限りなく難しいと言わざるを得ないでしょう。


❷移籍システムの違い

また《特別指定選手》の制度が既に導入されているJリーグ・Bリーグと、NPBの間で決定的に異なることとして、移籍システムの違いが挙げられるでしょう。
それはJリーグやBリーグが自由獲得システムを採用しているのに対して、NPBはドラフト制度を採用しているという点にあります。
前者を欧州サッカーを模して『ヨーロッパ型』、後者をMLBやNFL、NBAを模して『アメリカ型』ということもありますね。

自由獲得システムは文字通り、全ての選手の獲得が自由に行えるということです。もちろん、クラブと選手間で複数年契約を締結している場合など一部(現実的に)獲得できない選手が存在しますが、基本的にはリーグが定めた獲得ルールにさえ則っていれば、あとは好き放題に選手獲得に動くことができます。これは新人選手にも該当します。
実はNPBでも限定的に採用されており、外国籍選手や自由契約選手、そして首脳陣がこれに該当します。

一方でNPBが採用しているドラフト型のシステムは、日本の新人選手は全てドラフト会議を通じて最初の所属先が決定することになります。
これは、チーム間の戦力の均衡(特定球団への寡占状態の抑止)に対して大きな役割を果たす一方、ドラフトによって所属先の球団がほぼ確定してしまうこと、そしてNPBでは自由契約選手にならない限り、FA権(フリーエージェント)を獲得するまで本人に移籍する権限がないという決定的な違いがあります。
要するに、JリーグやBリーグとは違い、NPBでは選手の移籍(特に日本人選手)が限りなく限定されているということです。

日本人選手の移籍が限りなく制限されているリーグにおいて、(例え学生年代だけであっても)"インターンシップ" 的に移籍を繰り返すことができるレギュレーションでは、そもそもないということです。

かつては "希望入団枠制度" という名目で、一部自由獲得システムが組み込まれたドラフトが行われていましたが(1993〜2006年)、西武・巨人などを筆頭に裏金問題が顕在化したこともあり、囲い込みが可能で "ルールの抜け穴" と捉えられかねない《特別指定選手》を導入することはないと言えるでしょう。
ドラフト制度と自由獲得型の《特別指定選手制度》は限らなく相性が悪い
のです。

なお、このことからドラフト制度は球界のために悪だ‼️ かの勢いで伝わっているかもしれませんが、結局のところどちらのシステムにも長所・短所は存在しており、一方的に優れているということは特にはないと思っています(本当にそのスポーツの特性による)。

選手獲得に対して特に制限が設けられていないということは、それだけ資金力(を始めとする要素)によってリーグ内でのチーム格差が開くことを意味します。

資金力のない広島東洋カープから、資金力が豊富な阪神タイガースへと、主力選手の移籍が相次ぎ、『広島は阪神の二軍』と揶揄される時代が15年ほど前にあったのですが、それが自由移籍システムだとより明確に表れてしまうのです。

昨シーズン、Bリーグの滋賀レイクスターズは、高い育成能力と試合出場経験を積極的に積ませるチーム方針から、多くの有望な選手の育成に成功し、過去最高のチーム成績を納めましたが、その全てが資金力によって他所のチームに引き抜かれることとなりました。
同じ "B1" というトップカテゴリーの中でも格差が明確に存在してしまうことは、ある意味で残酷であると思っています。

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2020ー21年、滋賀から他所へ移籍したメンバー。ほぼ全員が一斉にチームを去る緊急事態となった。

#2 齋藤 拓実(PG)▶︎名古屋へ
#6 シェーファー・アヴィ・幸樹(C)▶︎三河へ
#11 佐藤 卓磨(SF)▶︎千葉へ
#12 ヘンリー・ウォーカー(SF/PF)▶︎退団
#13 中村 功平(SG/SF)▶︎茨城へ
#15 谷口 光貴(SG/SF)▶︎20年途中に香川へ
#19 ジェフ・エアーズ(PF/C)▶︎名古屋へ
#24 髙橋 耕陽(SG/SF)▶︎三河へ
#25 荒尾 岳(PF)▶︎広島へ
#32 狩野 祐介(SG)▶︎名古屋へ
#33 クレイグ・ブラッキンズ(PF/C)▶︎越谷へ
小川 伸也AC▶︎京都へ
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3 有望選手は有力チームに寄せ集められるのか?

✨有望選手が強豪チームばかりに集まる?
▶︎▶︎既に《特別指定選手》の制度が採用されているプロスポーツリーグを観ると、有望選手が一部の強豪チームに偏りすぎることはないと感じました。

これは、進路選択をする選手が『どこに重きを置くか?』によって、行き先が変わってくることが考えられます。

ここでいう "重き" がNPBでの試合出場経験ならば、特に出場できるイスが1つしかない野手では、一層チーム選択が大事になります。
例えばポジションがCF(センター)の選手が、柳田選手を擁するソフトバンクに行っても、NPB一軍の試合に出られる可能性は限りなく低いわけです。ならば、同じパリーグでもオリックスのようにセンターがガラ空きのチームに行く方が、腰掛け的な "出場機会" としては得られる効果が大きいわけです。

また、設備や二軍の環境面でじっくりとNPBに見て欲しいといった場合には、これらのハード面の施設に積極的に投入しているソフトバンクがリードすることになるでしょう。
特別指定選手として受け入れたからといって、この後確実にその選手を獲得出来る保証はないですが、球団から観れば『その選手がどういう特性を持っているか?』の育成データを手に入れられることは大きなメリットでしょう。

なお、インターンシップの扱いですから収入面は望めないのを前提とします。

以下は、 "出場機会を得る" ことを重視して、プロのキャリアを2部リーグで始める選手が増えていることに関しての記事です。
J1・ヴィッセル神戸に所属する、日本代表FWの古橋恭梧選手を排出した興國高の内野監督の《J2狙い》の進路選択は、選手としての若年代に出場機会を得ることがなにより大切なことかを示している面白い文献です。ぜひご覧ください。

4 まとめ

結論から言うと、現行のレギュレーションでは、在学中の学生がプロ野球でプレーすることはありえないというのが正直なところです。そして、戦力均衡・アマチュア選手の初年度報酬の抑制という目的を(一応は)成していて、更に現在ではドラフト会議は一種のエンターテイメント的な要素を孕んでおり、大きく成功しているものと言えます。
お役所的な日本国において、成功慣習を破壊してまでわざわざ新制度導入に踏み切るとも考えられませんし、現行レギュレーションが変わるのは何かしらの問題が生じるまでないと見ています。

だからこそ『〇〇欲しい!!』みたいな意見がアマチュア時代から盛り上がったり、ドラフト会議で有望選手の交渉権を獲得した際に、より一層盛り上がるという点は間違いなくあります。

ぼくは新潟医療福祉大のMax150km/h左腕・桐敷 拓馬投手(本庄東④)がオリックスに来ることを信じてやまないです‼️😸  
現在は、新型コロナウィルスの影響で、関甲新リーグも一般客への観戦は認められていませんが、コロナが少しでも落ち着いて秋季リーグに観戦が可能になることを望んでいます。観にいきたいですね☺️☺️☺️

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