電脳虚構#19|マッチング・アベニュー
ダイニングテーブルを分つ、ふたつのカップ。
口も付けず、その熱と珈琲の香りだけが天井へと逃げていく。
長い沈黙を破ったのは、夫の方だった。
「ごめん・・。」
二人を隔てる乾いた空気。その声はポツンと虚しく響いた。
「あやまらないで。実は私も・・」
”どっちが先”という話ではない。
互いが互いを裏切り、別の人を愛した。
ただそれだけだった。
Chapter.1 アベニュー
「アベニュー」というマッチングアプリがある。
自分のアバターを作って仮想世界で異性と交流する