見出し画像

シロとクロの世界の物語(お題小説@2,200文字)

朝起きると、私の小説を読んでくれた友達Aさんから感想が入っていました。一枚のイラストと共に。

「この世界にはどんな物語がみえる?」

せっかくなので、自分にチャレンジする意味で書いてみました。
ただひたすら感じたままに見え始めた私なりの世界観。

シロとクロの物語

白い部分と黒い部分。それらの世界は、互いに交じりあう事が決してなかった。
その理由はシンプルで、白の管理者と黒の管理者が世界を綺麗に掃除していたからに他ならない。

「ふぅ、今日も美しい世界だ!」

白と黒の管理者が満足そうに微笑んだ。

彼らの仕事は、ただひたすらに世界の均衡を保つことにある。
白と黒の世界はバランスが崩れ始めれば一瞬にして消失してしまう。それゆえに彼らの役割は重大だった。

白と黒の世界

白と黒の世界には、管理者ですら認識できない2つの生物が存在した。シロとクロである。

シロとクロは猫の姿をしているが、管理者には猫であることすら認識できない。
その理由もシンプルで、シロは真っ白で白い世界に重なりクロも真っ黒で黒い世界に重なり生き続けているからだった。

「管理者に見つかれば掃除されるかもしれにゃぃ」

これを教訓に彼らは今日まで生きてきた。

ところがシロとクロには困った性質が存在する。排泄物が目立ちすぎるのだ。
シロの体から出るのは黒色で、クロの体からは白色のものが出てくるからこの世界では目立って仕方がない。

管理者が現れる前では彼ら自身でそれを丁寧に処理していた。一定の法則に基づいて。
そうして出来上がったのが、花型のような白と黒の世界という訳だ。

彼らの排泄物を管理者は、世界のゴミと称して削除していた。
実際それ自体は問題がなかった。シロとクロにとっても願ったりかなったりで良い管理者が来てくれたと思っている。それでも認識されていないシロとクロにとっては、認識されること自体が大きなリスクに感じた。

世界の選択肢

「それにしても退屈だにゃぁ、旅に出たいにゃぁ」とクロが嘆く。

シロは「この世界で生きるには隠れるしかにゃぃ」と経験的に語る。

クロが小さい頃、この世界はだだっ広く退屈することがなかった。
それでも大きくなるにつれて感じる窮屈感。
元々アクティブな性格のクロには更なる刺激が欲しくてたまらなかった。

「やっぱり旅に出るにゃ!こんな世界まっぴらゴメンだにゃ!!」とクロが決意を表明する。

シロは「クロが居なくなったら私は寂しいにゃ…」と涙ながらに訴えた。

それでもクロの決意は変わらない「一緒に来ないのにゃら、一人でいくにゃ!」

クロの決意の固さに根負けしてシロも頷く「わかったにゃ、掃除されたとしても一緒にだにゃ」

意を決して外の世界に出る事を決断するシロとクロ。
外の世界へ出る方法はシンプルだった。

『クニャイム!』と叫べば、世界のド真ん中にそびえたつ白と黒の塔に移動することが出来る。
そして塔の頂きで30秒以内に『ニャーラ!』と叫ぶ。すると外の世界へワープできる仕組みであることを彼らは生まれながらに知っていた。ただし塔に登れるのは1回だけ、一度登ってしまえば塔は崩れ去り世界は完全開花した花型となる。

「「クニャイム!!」」

シロとクロの声が同時に聞こえた。
お互いの姿形は見えないが、確認の合図をする。「シロにゃ!」「クロにゃ!」声が近い。
二人は無事に塔に登ることができたようだ。すぐさま次の呪文を唱える。

「「ニャーラ!」」

こうしてシロとクロは外の世界へワープを始める。
外の世界に出た瞬間、管理者に掃除されないことを祈りながら、二人は眠りについた。

外の世界

ワープ負荷が大きすぎて、思うように体が動かない。シロは真っ白な世界で一人佇んだ。

「…クロ!クロはどこへ行ったにゃ?」

返事がない。やっぱり掃除されたのだろうかとシロが嘆く。

こうなる運命はシロ自身が一番に理解していた。
実は白の世界からは外の世界が見えていた。その色は同じ白色で、シロなら外でも生きる事が出来るだろうと思っていた。でもクロが白の世界では生きられないのなら意味がない。だからシロは外に出る事を拒み続けたに過ぎなかった。

「クロ、ごめんだにゃ…」そう呟くとシロの真下から声が聞こえた。

「…勝手に殺さにゃいでほしいにゃぁ」クロがシロの心配を拭うように声を振り絞った。

「クロ!生きていたのにゃ!」しかし、シロは真下を見て驚愕する。

「にゃ、にゃんじゃこりゃあああ!!!」シロは思わず失神しそうになった。初めて見るクロの姿に。

シロとクロ

シロが言葉を詰まらせながらクロに問うた「ク、クロは…シロのウンコだったのにゃ?」

予想外すぎる言葉にクロは意味が分からず「んにゃわけあるかぁ!!!」と、とりあえず怒りを露わにする。

シロがそう思ったのも無理はなかった。
シロの排泄物は黒色で、クロの排泄物は白色だったので、シロからすればクロがウンコにしか見えなかったのだ。

そしてクロが反撃する様にこう言った「外の世界はクロのウンコまみれだにゃ、きったにゃぃ!管理者は掃除しろだにゃ!」

その言葉を聞いてシロは理解した。
クロはシロのウンコなどではなく黒色の猫だという事に。
そして外の世界で生きる事が出来ている事実を。

無限に続くこの白と黒の世界に終わりはあるのか、今はまだ分からない。
それでも彼らが好奇心を絶やさぬ限り、別の色の世界が見え始めるかもしれない。

あとがき

このイラストを見ている時、友達Aが猫好きだったのを思い出したんです。
で、よく猫の変なリアクションとか姿を写真で送ってくる。

恐らくイラストは花なんでしょうけど、私には塔が上から光照らされて、灯台下暗し状態に見えました。
黒い部分が多重影にみえたんです。だから影の中に居る時って凄く不安が続く。

そして今尚チャレンジする事を続けている友達Aの姿勢を合わせていくと、浮かんだ世界観とか、込めたいメッセージ性なんかも自然と出てきてそれを思うがままに書き綴ることが出来ました。

伝わり辛い表現かもしれませんがシロとクロが外の世界に出たあと、花の形が完全開花する理由は「挑戦している事は確実に実を結んでいるよ!」という意味を込めました。

書くのに2時間と時間はかかりましたが、なかなか楽しかったです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?