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ヒナドレミのコーヒーブレイク      廃屋へ

 こんにちは、ヒナドレミです。noteを始めて7月で丸2年になります。これからも、サクサク読むことのできるA4サイズの記事を書いていきたいと思います。今回は廃シリーズ、廃屋です!

                廃屋へ

 その家は、何十本もの樹木に囲まれて建っていた。まるで樹木に守られているかのように・・・。他に人家は見当たらない。何本もの木の枝が、割れた窓ガラスから家の中へと入り込んでいる。触れると崩れ落ちそうなほど朽ち果てた木造の家は、風雨にも負けずに何とか建ち続けていた。その家の主が去ってから、どれだけの歳月が流れていったのだろうか?集落自体も無人となって、ひっそりと静まり返っている。枯れ葉で埋め尽くされた地面を踏むカサコソという音だけが妙に耳に響く。

 割れた窓ガラスの隙間から家の中を窺うと、抜け落ちた天井や床が見えた。そして床の上に散らばったいくつものモノたち。床のホコリが厚く堆積していて、永い歳月が経っていることが推測できる。壁に掛けられたカレンダーもセピア色に色褪せて、時の経過を物語っている。生気が露程も感じられない廃れた家。

 オモチャを見つけた。子どもがいたと思うと、切なさや虚しさが襲ってくる。

 この家の持ち主は、何故ここを去らなければならなかったのだろうか?床に散乱したモノを見ると、覚悟の家出ではないように思える。地震などの自然災害でモノが散乱したのか。どちらにしても、この家の持ち主にとってはここを立ち去らなければならない複雑な事情があったのだろう。自分たちがこういうことになるとは、夢にも思わなかったに違いない。私がもしこの家の主だったら・・・と思うと、私は立っていられないほどの戦慄を覚えた。               

                                完

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