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【続】「精子がありません。」

美容院の最寄駅に着いた。

朝食にパン屋でサラダと豆乳ラテを流し込んだ。

そう言えば昨晩、ここ最近連絡をとっていない友人茜にLINEをしたけど、返事がまだ来ていない。

パン屋を出て、美容院に着いて席に案内された。

その時ちょうど茜から返信があり、LINEを開いた瞬間頭を強く打ち付けられた。



出産報告だった。



妊娠していたことさえも知らず、突然の報告に動揺した。


茜と最後に連絡を取ったのは半年前。

その頃、子宮頸がん検診に引っ掛かり病院通いが続いている時期だった。

たまたま通院日に何も知らない茜からの連絡に対し、私は冷たく返してしまった。

その日、もしかしたら妊娠報告をしたかったのかもしれない。


茜とは10年以上の付き合いで、なんでも話せる大切な友人だ。

でも、子宮頸がんの疑いが晴れず精密検査が続いていたことや不妊治療を始めたことは話せずにいた。




頭が真っ白な状態のまま髪型を整えてもらい、会計を済ませ駅に戻る。


最初の一文しか読めなかったLINEをホームで再び開いた。

そこには、

コロナもあって周りに報告していないこと。

私に報告しようと思っていたがタイミングがわからなくなってしまったこと。

これからも友達を続けたいこと。

これらが謝罪の言葉と一緒に綴られていた。


茜のこれ程にない優しさや思いやりとコロナ禍で不安を感じながら妊娠期を過ごし出産したであろうこと、自分は自然妊娠できないと宣告された事実、これらが複雑に混ざり合い涙が止まらなかった。


夫が待っている家に帰り、ひたすら泣いた。



この日は朝から雨が降りしきっていた。



おわり





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