見出し画像

フリー台本『寝ずの番用』

*注意とお願い*
・どのプラットフォームで使用していただいても構いません。
・ご使用の際はTwitter等で一言いただけますと嬉しいです。
・また、作者として「やまこし」並びに
 Twitter(X)のID「@yamako_shi」をクレジットしてください。
・著作権は放棄していません。
・一人称、言い回し、語尾等はご自由にご変更いただいて構いません。
(内容に変更がある場合はご遠慮ください)
・自作発言は絶対にしないでほしい。
この内容は2023年8月時点のものです。
最新のお約束は、Twitter等をご確認ください。

*****

「寝ずの番用」

妹「おかえり〜」
姉「ただいま〜、ごめんねさっき電話出られなくて」
妹「ううん、大丈夫よ」
姉「葬儀屋さん来ててさ、供花で確認したいことあるって」
妹「あ〜、大丈夫だった?」
姉「うん、おばさんの下の名前の漢字のこと」
妹「そっか、旧字だもんね」
姉「そうそうそう、わかったから大丈夫だったよ」
妹「ありがとうね」
姉「うん」
妹「TSUTAYA久しぶりだったよ〜」
姉「おん、DVDあった?」
妹「あったよ、これ。監督は伊丹十三だよね」
姉「そうそう、よかった〜!」
妹「おじいちゃんこれが好きだったの?」
姉「そうよ〜」
妹「なんか…なんだろう、縁起が悪いわけじゃないんだけど…」
姉「変な感じ?」
妹「変な感じ〜」
姉「おばあちゃんの葬式の時ね、おじいちゃんがね、寂しくて起きてられないし寝ることもできないって駄々こね始めてね」
妹「はぁ」
姉「じゃあみんなでオールナイトムービーパーティーだ!って」
妹「なるほど…」
姉「映画一本ずつ起きてたのよ」
妹「それいいシステムだね、2〜3本でおわるしそれ」
姉「そうなのよ。で、おじいちゃんと私で見たのが"お葬式"だったの」
妹「ほ〜ん」
姉「今から起こることをわざわざ映画で見なくてもってみんな思ってたんだけどね、結局みんなで見ちゃったのよね」
妹「おもしろい?」
姉「わたしは好きな映画よ。葬式ってさ、そういう、なんというか、特別なことばっかじゃん?」
妹「うん」
姉「それが詰まってて、いいのよ」
妹「そういうもんですか」
姉「うん、そういうもんよ」
妹「まぁたしかに、寝ずの番ってすでにイベントみたいな感じだもんね」
姉「いいと思うのよ。そうやって楽しく乗り越えないとさ、急に悲しくなって、何にもできなくなっちゃうから」
妹「たしかに。さっきさ、私一人で買い出し行ったじゃない?」
姉「うん」
妹「信号待ちしてたら、おじいちゃんが好きだった和菓子屋さんが目に入ってさ」
姉「うん」
妹「もうおじいちゃんとあそこのあんころ餅食べることもないんだなあって思ったらね」
姉「うん」
妹「気づいたら信号変わってたんだよね」
姉「それがね、人が死ぬってことだと思うの」
妹「どれが?」
姉「ふと空白の時間ができた時に、きゅっと悲しくなること」
妹「確かに」
姉「喪主がゆっくりできない葬儀なんていやだ、って聞くけどさあ、忙しくないと悲しくなっちゃうんだよ。そんなのやってられない」
妹「だったら忙殺されてたほうがいいか」
姉「謀殺って、なんか」
妹「ダメじゃないけど変な気持ちになるよね」
姉「その映画にもね、通夜振る舞いが終わった後に”東京だヨおっ母さん”を歌うシーンがあるんだけど」
妹「うん?」
姉「楽しく歌ってたのに、突然悲しくなっちゃうシーンがあって」
妹「なんか、リアルだね」
姉「そうなの。リアルで、なんだかグロテスクで、これが人が死ぬってことなんだって」
妹「おじいちゃん、そういうのに弱そう」
姉「よくわかってんね〜弱いよ。めっちゃ泣いてた」
妹「お姉ちゃん?」
姉「ん?」
妹「今日は二人で寝ずの番しようよ」
姉「初めからそのつもりだったよ?」
妹「え?」
姉「それ見終わったら次はネトフリで海外ドラマ見よ!」
妹「おじいちゃん理解できるかなあ?」
姉「おじいちゃん病院で海外ドラマばっかり見てたよ」
妹「え?!?!?!!?」

*******

▼PDF版

https://1drv.ms/b/s!AnX5UykczaqxgeBbsOhsaKMLtDbwkQ?e=d9RKdJ

▼創作物まとめ

▼フリー台本まとめ

▼ポートフォリオ


いただいたサポートでココアを飲みながら、また新しい文章を書きたいと思います。