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続・打牌速度(渋川氏の主張について)

まず最初に

平澤さんの引用ツイートを見て気になり、渋川さんのYouTubeを見てみたところなかなか興味深い主張をされていたので、私の見解をnoteにすることにしました。

個人的には渋川さんは同郷の後輩であり、お父さんもよく知っていて麻雀も一緒に打ったことがあるので、彼の言葉尻を捕らえて批判するような内容にはしたくないのですが、Mリーグから麻雀を見始めた初心者の人達に変に誤解されても困るし、私が以前に書いたnoteの真意を麻雀プロの人達に誤解されるのも困るので、そういったところを今回のnoteで分かりやすくお伝えできればと思っています。

前回のnoteはこちら↓

YouTubeの内容について

■渋川氏の主張※Mリーグ公式解説者としての見解
1.放送対局は遅いのが当たり前
・見ている人がいる
・解説が追いついていかない
2.早く打つ事が正義ではない
3.放送対局ではいつもより遅く打つように指示されている
4.プロの対局には決まりがある(公平性を保つ為)
・ポンが入らない事を確認してからツモの動作に入る
・チーの時はポンが入らない事を確認してから発声する
・リーチ棒が出るのを待ってからツモの動作に入る
・副露時も見えやすいように牌を持ってきてから切る
5.確かに2時間は長過ぎる
・上級者は遅く感じており、初心者は早く感じている
・長過ぎると主張しているのは上級者の意見
・Mリーグでは初心者を取り込む目的でやっており、早過ぎてユーザーが離れるのか遅過ぎてユーザーが離れるのか、正解が分かっていない状態
6.現状Mリーグもプロの公式戦も成功しているから変える必要はあまりない
7.大長考した上で苦しい顔をして牌を絞ってツモるのも面白いと思う
8.スマートに時間をかけず淡々とツモる人もいて、様々な人達がいるから面白い
9.上級者と初心者がいる事を踏まえて一番良い落としどころを見つけるのが良い
・今まで通り個人の裁量に任せるのが良いのではないか
10.将棋を例に出して、
・早い対局もあれば遅い対局もある
・麻雀も同じようにどちらもあって良いと思う
11.放送対局を上級者に合わせて初心者からクレームが来た場合、
それに合わせて方針がコロコロ変わるのは嫌
12.配信以外の対局で打牌が遅いのは別に構わない
・集中力を削ぐために打牌に1時間かけるような奴はいません
・それは立会人が指摘するから問題ない(極論を考慮する必要はない)
・早く切る人が長考がズルいと考えるなら、打牌を遅くすればいいだけの話
・結局お互い様なんじゃない?
13.SNSで主張している人達は上級者だから早く切るように主張している
14.Mリーグを見ている初心者にとっては今のMリーグは早過ぎるくらいなので、遅くした方がいいくらい

■結論
・現状のままで良い

というわけで、1~14それぞれの主張について見ていくことにしよう。

渋川氏の主張と私の見解

まず最初に言っておきたい事がある。
「Mリーグ公式解説者」→だからどうした?そんなものは関係ない。
何かの権威付けなのか、その言葉でイニシアチブを取りたいのかわからないがMリーグ公式解説者が必ずしも正しいとは限らない。

以前にもツイートした事だが、有名人が話している内容が必ずしも正しいとは限らないわけで、特に麻雀のような歴史が浅く研究が進んでいない分野においてはそう簡単に信用するのは不味い。例えば「平場」や「本手」といった言葉の誤用はトッププロでも平気で使ってしまっているのが現状だ。

渋川氏のYouTubeを見た時「Mリーグ公式解説者」という言葉をまるで水戸黄門の印籠のように振り翳して語っていることに大変不快感を覚えた。
そうでもしなければ自分の主張や考えを伝えることが出来ないのかな?と残念に思ってしまったというのが正直なところだ。まぁ実際のところライト層(初心者)を納得させる為のキャッチとしては効果は絶大なんだろう。その言葉を盾にして語るのはあまりお勧めしないが・・・

さて閑話休題。

1番について
↓↓↓
1.放送対局は遅いのが当たり前
・見ている人がいる
・解説が追いついていかない

視聴者がおり、解説も必要なのだから遅いのは当たり前の話。
しかし、だからといって連盟の放送対局は早くその他のプロ団体の対局(最高位戦、協会、RMU)が遅いのには疑問を感じる。裏を返せば連盟の対局はちゃんと解説できていないのか?視聴者から早過ぎるとクレームが出ているのか?という解釈にもなってくるのだが当然そんな話は聞いたことがない。

つまり連盟と比較してその他の団体の選手達が、
・打つスピードが遅い
・解説慣れしていない

→実際はこんなところだろう。

雀力がどうのこうのというよりも放送対局をビジネスとして考えた時にやっぱり連盟が一歩先を進んでいる感は否めない。番組のクオリティーで明らかに負けてしまっている。それをそのままで良しとするか、奮起して改善していくのかは各団体のスタンスによるのだろう。

「打牌速度が早い=初心者からクレームが出る」という話は一部では勿論当て嵌まると思うが全体的な話として捉えてしまうのは危険だと思っている。

また私が連盟に在籍中の話だが、
放送対局の際にカメラのスイッチャーの切替タイミングを意識して打牌するようにしていると、ある選手から聞いたことがある。他団体の選手からこういった類の話は全く聞いたことがない。そもそも対メディア戦略という観点で麻雀の対局を商品として一番考え抜いているのは連盟だったんだな~と退会してから思わされることが多かった、というのが正直な感想だ。

2番について
↓↓↓
2.早く打つ事が正義ではない

真意がよく理解できないのでコメントは差し控えるが、
そもそも善悪の話ではない。

3番はその通りで全く異論無し
↓↓↓
3.放送対局ではいつもより遅く打つように指示されている

4番について
↓↓↓
4.プロの対局には決まりがある(公平性を保つ為)
・ポンが入らない事を確認してからツモの動作に入る
・チーの時はポンが入らない事を確認してから発声する
・リーチ棒が出るのを待ってからツモの動作に入る
・副露時も見えやすいように牌を持ってきてから切る


競技麻雀を齧ったことがある人間ならば誰でも知っていることなので敢えて議論に上げる事はしない。但し、公平性を保つ為とYouTubeで述べているところには疑問符が付く。公平性というならば、選手それぞれの思考時間にも公平性が求められるべきではないか?と考える。これについては後々の話にも関連してくるので後述することにする。

5番について
↓↓↓
5.確かに2時間は長過ぎる
・上級者は遅く感じており、初心者は早く感じている
・長過ぎると主張しているのは上級者の意見
・Mリーグでは初心者を取り込む目的でやっており、早過ぎてユーザーが離れるのか遅過ぎてユーザーが離れるのか、正解が分かっていない状態

正解が分かってないならば、なぜ正解を見つけようとしないのか?
ユーザーアンケートや市場調査、KPI分析をしないのはなぜか?Mリーグ公式解説者だというのであればMリーグの改善に向けて何か提言はしないのか?などなど色々言いたい事はある。

またMリーグは初心者を取り込む目的でやっているから遅くてもいい、というのであれば上級者はMリーグのターゲット層としては見ていないということなのか。上級者の方が一度取り込んでしまえば離脱率が低い分、安定して課金してくれると思うのだが、その辺りは考慮していないのだろうか?
いずれにしてもまずはデータを分析してそこから議論を深めていかなければ話が始まらないと考えている。

6番について
↓↓↓
6.現状Mリーグもプロの公式戦も成功しているから変える必要はあまりない

これは全否定だ。
現状で成功しているとなったら、今後麻雀番組の進歩発展はない。
客観的に見てもまだまだ発展途上とみるのが妥当だろう。それを今のままで良いとして思考放棄してしまったら麻雀界に未来はない、終わりだ。

7番8番について
↓↓↓
7.大長考した上で苦しい顔をして牌を絞ってツモるのも面白いと思う
8.スマートに時間をかけず淡々とツモる人もいて、様々な人達がいるから面白い

これは一定程度の理解はできる。
やり過ぎは良くないと思うが視聴者と一緒に苦楽を共にするというか、感動を分かち合うという意味ではそれが麻雀の魅力を伝える事にも繋がってくるので必要だと思っている。が、これが今回の議題の根本的な原因ではない(そもそもそういう局面は頻繁に起きるものではない)のでここでは議論を深めない。対局が遅くなっている要因は1番で書いた通りだ。

9番について
↓↓↓
9.上級者と初心者がいる事を踏まえて一番良い落としどころを見つけるのが良い
・今まで通り個人の裁量に任せるのが良いのではないか

これも同意だが、今まで通り個人の裁量に任せると何でもアリになってしまうのでレギュレーションは必要だと思う。この辺は公平性の話(4番)にも繋がってくる。

10番について
↓↓↓
10.将棋を例に出して、
・早い対局もあれば遅い対局もある
・麻雀も同じようにどちらもあって良いと思う

将棋と麻雀はそもそもゲーム性が異なるので、同じ土俵で話すのは間違っている。確かに早い対局、遅い対局、両方あって良いとは思うが、それはまずシステムが確立されてからの話だ。個人の裁量に委ねている時点で何でもアリの状態になっているわけで、それが果たして本当に「競技」と呼べるのか?麻雀はまだまだ競技に成り得ていないのだ。

11番について
↓↓↓
11.放送対局を上級者に合わせて初心者からクレームが来た場合、
それに合わせて方針がコロコロ変わるのは嫌

これはまずABテストをするところからだろう。
早い遅い云々を議論する前に最適解を見つけるところから始めなければならないのだから、最初はコロコロ変わるのも仕方ない面はあるだろう。視聴者に最適なスピードというのを模索していくしかない。或いはシステム的な仕様の改善で放送スピードをユーザーの任意で調節出来るようになればそれがベストな形だと思う。ABEMAの倍速ニュースのような形式が取れれば最高だな~と考えている※その場合、生放送では無くなる可能性があるが。

12番について
↓↓↓
A:配信以外の対局で打牌が遅いのは別に構わない
B:集中力を削ぐために打牌に1時間かけるような奴はいません
C:それは立会人が指摘するから問題ない(極論を考慮する必要はない)
D:早く切る人が長考がズルいと考えるなら、打牌を遅くすればいいだけの話
E:結局お互い様なんじゃない?

1~14番の中で一番否定しておきたい内容だ。

まずABCについて。競技において性善説を前提にしてはいけない。
それを語っていいのは道の世界だけだ。
※道の世界とは華道・茶道・合気道などの事

日本人は真面目な性格なのでアンフェアなプレーは起きにくいが、
海外で麻雀をやるとルールに記載されていない事は何でもやってくる。
実際に私の知り合いでロサンゼルス在中の日本人がアメリカ人に麻雀を普及させる活動を行っているが、一番苦労したところはそういったフェアプレーの精神を伝える事に苦労したそうだ。点棒を隠したり、牌を下から渡したり等々、勝つ為には何でもやってくる。今後、麻雀を競技として世界に普及させていきたいのならばルール整備の徹底は必要不可欠だと思う。日本にしか視野が向いていない或いは考えられていないとすれば、今後世界に普及させていくことも考えてルール整備をするべきだろう。

続いてDEについて。
そんな事を全員がやり始めたら対局時間が長くなる一方だ。麻雀は限られた時間の中での選択に対し優劣を競う競技であって、有限の時間の世界の中で勝負しているのだ。
4番と9番の話にも関連するのだが、競技の公平性を担保する為に4番の決まりを定めているのであれば、なぜそこに時間の概念が含まれないのか?
時間こそ最も公平性が担保されなければならないはずなのに、そこだけ選手の裁量に委ねるというのは思考放棄と言わざるを得ない。麻雀を競技化し、国際的に広めていく為には必須の検討事項だ。Mリーグが出来たことを機会にどのように定めていけば良いのか?建設的な議論をして貰いたいと思う。

具体的な例を挙げるとフィッシャールールや極雀のようなルールの導入も検討すれば良いと思う。

『極雀』で面白いのが、長考罰則があること。
手牌をツモって(牌に触って)から10秒経過で、けたたましい警告音が鳴ります。
さらに5秒経過すると、1000点の罰符を払う事になります。

13番について
↓↓↓
13.SNSで主張している人達は上級者だから早く切るように主張している

これは渋川さんの主観なので何とも言えない。客観的なデータがないのでコメントのしようがない。ただ私の立場でいえば上級者だから早く切れというような単純な話をしているのではない。それはこのnoteを読んで頂ければ分かるはずだ。

14番について
↓↓↓
14.Mリーグを見ている初心者にとっては今のMリーグは早過ぎるくらいなので、遅くした方がいいくらい

これもデータの裏付けや根拠のない話なので何とも言えない。
視聴者アンケートを取るなりして改善に向けて動き出すべきだ。

最後に

渋川さんはYouTubeの最後に結論として「現状のままで良い」と述べている。私は決してそうは思わない。麻雀は時間短縮のために全自動卓が開発され、サイコロを振る文化から自動配牌へと進化を遂げていった。最近では牌の上下が揃う卓まで開発されている。このように時代の流れと共に麻雀も社会のニーズに応じて少しずつ変化していっている。
放送対局において何が最適か、どうあるべきか、議論を重ねていくことで新たな世界が見えてくるのではないだろうか?その努力を惜しんではいけない。

おしまい。

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加藤博己(かとうひろき)
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