けいこにっし 二日目

2日目


 昨日お風呂で身体洗うときに、ボディーソープと間違えてシャンプーで身体を洗ってしまいました。シャンプーで身体洗うと心なしかぬめぬめ感がすごいですね。そのあと5分以上念入りにボディーソープで身体洗いなおしました。

 今日の稽古はストレッチととにかく筋トレをします、と予告をされて稽古場へ向かいました。でもきっと前回やった脳トレみたいなのもきっとやるだろうと思って狭い家でめっちゃ練習して臨んだんですよ。できるようになってる!って驚かせてやろうって思って。ですが、ストレッチの途中で一体何を目的として、どの目標に向かっていま私たちはこうして稽古して演劇をしているのかという問題にぶつかってしまいました。

 どういうことかというと、私にとって演劇って呼吸なんですよ。ないと死んでしまう存在です。だからといってじゃあ演劇ができればいいのかと言われたらそういうわけじゃないです。面白い作品をやりつづけたい。そうじゃないとやる意味がない、生きる意味がないんです。なので私はどうなりたいとかこうしたいとか具体的な目標を持ってそれに向かって走ることよりも、まずは演劇をやる、やり続ける、ということを大事にしてきました。

 もちろん演技だって上手くなりたい、お客さんにおもしろいと思ってもらえる作品創りに貢献したい、いい役者でありたいって思っています。じゃあどうしたらそうなれるのか、具体的な目標はなんなのかと聞かれると言いよどんでしまうんです。それはきっといま書いたように「演劇をやる」ということが私のなかの最終目的になってしまっていて、それ以上でも以下でもないからなんだと思います。
 話が少しずれるようですが、私はTwitterにほとんど浮上しません。それは他者の情報を入れることがしんどいからです。何者でもない、何者にもなれなかった私にとってTwitterのみなさんの活躍が眩しくて、でもそこにいけないって思っていて、違うんですよ、本当はいきたいんですよ。でもそんな風に思う自分が嫌いなんです。できないことを頑張っている自分がみっともなくて情けなくて。頑張ってもできないことが怖くて恥ずかしくて。

 そもそも、昔から親に「負けず嫌いの精神がない」とか「プライドがない」って言われて、自分はそういう人間だと振舞っていたので、今更そうじゃない自分を受け入れられないんですよね。本当は悔しいって思ったことも勝ちたいって思ったこともあります。でも、そういう感情になる自分がいやで、だったらそうならないように予防するしかないじゃないですか。私にとってその予防というのが興味を持たないこと、情報を入れないということなんです。目標に向かうことって情報を得ることだと思うんです。

 だから私は「演劇をやる」ということばかりが頭でっかちで、やる上での大事にすべき点が不明瞭だったし、なんなら明瞭にさせることから逃げていたんですよね。なんなら目標を定めることに対しての恐怖心や羞恥心すらもあります。

 そんな私に向かって林さんは「今から新宿の紀伊國屋書店に行きます。」と言いました。情けないやら恥ずかしいやら恐怖心やら戸惑いやらと、いろいろな感情がぐちゃぐちゃになったまま稽古場を後にしました。

 紀伊國屋書店に着いて林さんに演劇の本のコーナーに連れていかれて「ここから2冊選んで。買ってあげるから」と言われました。

 お恥ずかしい話ですが、実は私は戯曲というものにほとんど触れていません。林さんに出会っていくつか戯曲を貸してもらって読むまでは読んだこともありませんでした。本は好きでそれなりに読んではいるんですけどね。
 悩んだ結果、1冊目は別役実さんの『空中ブランコのりのキキ』という本にしました。手に取ってパラパラしてみたら戯曲じゃなかったんですけど、まあいいよって言ってもらえたのでそれにしました。なぜこの本にしたかというと、帯に「別役実の傑作童話が装い新たに復刊!」って書いてあったからです。実はこの間別役実さんの『ねこのおんせん』っていう絵本を読んだんですね。私ひみつまたたきに対して「絵本のような」とか「私は絵本が好きで」とかよく言ってると思うんですけど、まさにこういうことだなって『ねこのおんせん』を読んだときに思って。だから帯を見てこれに決めました。表紙の絵も可愛くて不穏なんです。童話や童謡も、表面の明るさの裏に不穏なものがあったりするじゃないですか。あれがゾクゾクして大好きなんですよね。
 2冊目は演劇の教本コーナーから選んでと言われたので、今の自分の最も必要なものを考えました。過去に買って読んだものは発声や滑舌、台本の読み方についてみたいなものばかりだったので、いろいろパラパラした結果、安田雅弘さんの『魅せる自分のつくりかた』という本を選んでみました。これも帯が決定理由なんですけど、この本の帯には「正しい「自己アピール」と「コミュニケーション」のレッスン!」と書いてありました。私はコミュニケーションが本当に苦手なんです。日常会話が既に自分が一方的に喋るか、一方的に聞くかのことがあるんです。特に真剣な話をされると顕著に出ます。私としては相手がそう思っているならそうなんだろうなって思って私がなにか言うまでもないって思っているだけなんですけど、それはコミュニケーションが成り立たないみたいで。でも理屈はわかってもどうしたら成り立つのかわからないんですよね。本を渡したら林さんにも「いいですね」と言われたのでよかったんだと思います。

 それから手近な喫茶店に入ってひたすら買った本を読む会となりました。まず『空中ブランコのりのキキ』から読むことにしました。読んでみたら短編が3話と中編が1話のオムニバスでした。中編はもう一度読み返してからじゃないと感想言えない気がするので、短編に関してのみ書くんですけど、いやー黒いですね。表面は軽いのに中身が重いというか。人ってなんて脆いんだろうと思いました。でもなんでこの本のタイトルが『空中ブランコのりのキキ』なんだろうな。少し不思議。SF。
 

 長くなってしまいましたが、こんな感じで稽古は終わりました。せっかくメニューを練ってくださった林さんには申し訳ないですね。次回こそ鬼の筋トレを頑張りたいと思います。
 そういえば本を買ってくれたお礼に喫茶店でおごりますって言ったのに完全に忘れてたな。本当にすいません。今度なんかおごります。

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