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偏愛鉛筆

鉛筆一本あれば絵は描けるはずなのに、「ここをこうしたい」が積もり積もって画材が増えてしまいました。
画材の整理をしながらふと、鉛筆のことをまとめてみようと思い立ち、これを書いています。
「鉛筆なんて選挙のときしか使わないよ」という方が大半だと思うのですが、次に鉛筆を握るとき、この記事のことを思い出してもらえたらうれしいです。

1.鉛筆

絵の教育をきちんと受けてこなかったわたし個人の感想です。
わたしと鉛筆の好みが合う人はたぶん少数派なので、おすすめはしません。ただ愛を語っています。

・最愛鉛筆 ーステッドラー トラディションの2Hー

しっとりなめらかな描き味の鉛筆よりも、若干紙に引っかかるようなシャリシャリした鉛筆が好きなのですが、ステッドラー トラディションは描き心地のシャリ感が最高に好み、かつすぐれた描写力を持つ最愛鉛筆。値段もお手頃。他の鉛筆に比べて若干軽いところも好き。

この鉛筆は固めの芯が秀逸なのでH〜3Hを重点的に保有している。どれか一本選ぶのであれば2Hがいちばん好き。
紙やすりで尖らせた芯の先端で細い線を描けばエッジの立った線が引けるし、グラデーションを描けば繊細な階調で期待に応えてくれる。

デッサンの教科書によく載っている優等生鉛筆ステッドラー マルス ルモグラフ(下の写真の青軸の鉛筆)はバランスの取れた逸品だと思うけれど、しっとり系のリッチな質感なのでわたしはトラディションの方が好き。

・親友鉛筆 ー三菱事務用鉛筆9800のHBー

デッサン用の鉛筆はもっちりしっとりすべすべな描き心地を目指しているものが多いので、事務用鉛筆の方が好みに合うものが見つかる。安価なものは色がやや安っぽいような気もするが、欠点を補って余りある良さがある。

三菱事務用鉛筆9800は描き心地にくせがなくややシャリ感もあり、もっちり感は抑えめなので普段使いに欠かせない親友的な存在の鉛筆。肩肘張らずに使えるのでラフを描くときはほぼこれに頼っている。安価。見た目が一番好み、朴訥とした佇まいがたまらない。
この鉛筆は気軽に使いたいのでHBをダースで買っている。

他社の事務用鉛筆も試したけれど、シャリ感が強過ぎたり粒子が荒かったりして、結局これに戻ってきている。

以前、無印良品にダース売りのHBの鉛筆があって、当時のわたしにとって親友的ポジションの鉛筆だったのですが、販売停止になってしまい(今は2Bのみ)失意のなか代わりを探してたどり着いたのがこの鉛筆。今でもたまに無印HBが恋しくなる。

・必要鉛筆 ー三菱ユニの3B〜6Bー

三菱ユニはわたしの苦手なもっちり系だけれど、淡い鉛筆で描き込んですべすべになってしまった紙面の上にもしっかり色がのってくれる粘度が頼もしく、締めの黒として重宝している。
色味が若干茶色っぽい気がしていて(軸の色に引っ張られているだけかもしれない)、モノクロの絵に茶系の黒が入ることで絵に深みが出る(ような気がする)ので気に入っている。

ユニは柔らかい芯が好きなので、3B〜6Bをよく使う。削っていない鉛筆の量が多いのは、過去に購入した4H〜Hの在庫が一向に減らないから。

ちなみにステッドラー マルス ルモグラフと並んでデッサン向け優等生鉛筆として挙げられることの多いハイユニですが、硬め数本しか持っていないので、在庫のユニが尽きたら柔らかいものを試してみたいと思っている。ユニよりもっちりしていたら黒担当として最強では?と期待している。

シャープペンシルの芯もユニはなめらかすぎるので、ぺんてるのアインシュタインを愛用している。

2.鉛筆画に欠かせないツール

・消しゴム(ねり・固形・ノック式)

ねりゴムは、よく消えて、紙にカスが残りづらく、ネバネバ感が抑えめでさらっとした使い心地のものが好き。
だいぶ昔にいろいろ試してホルベインにたどり着いたけれど、ここ1〜2年は伊研も気に入って併用している。伊研は溝に沿って縦に裂ける形状もよい。

固形の消しゴムは使っている途中からどれがなにやらわからなくなってしまうことが多く、気に入ったものがあってもリピートできない、という悪循環が続いている。

写真の中央下寄りに写っている一番小さなかけらが使い心地・パフォーマンスともに最高すぎて、特殊な形状のプラスチックのケースに入っていたのを解体して使っているくらいお気に入り。海外旅行のおみやげでもらったものなのでもう買えないだろうと諦めていたけれど…今ネットで見つけた。うれしい。

細かいところを消すときはノック式の消しゴムが便利。
一番使いやすく且つよく消えるのは透明水色のモノノック3.8。カッターで斜めに切った先端で消すと、かなり小回りがきく。
ノックする部分のクリップは、使うときに手に引っかかって邪魔なので折って使っている。ちなみに長すぎる筆も折る派。

・紙やすり

鉛筆の芯を尖らせるのに欠かせない画材。
メーカーは問わないけれど絶対に80番。100番だと細かすぎるし60番だと粗すぎる。

わたしは1/4に切って角にマスキングテープを貼り、マスキングテープの部分を左手でおさえながら右手で鉛筆を研いでいるけれど、youtubeで筒状の入れ物の中にヤスリを丸めて入れて、側面を芯でなぞりながら研ぐという方法を紹介されている方がいて目から鱗が落ちた。こんど真似させてもらおう。

・擦筆(さっぴつ)

こするとそこだけねぼけてしまうような気がして、緊張感が無い感じがあまり好きではないけれど、細かいところをぼかしたいときは擦筆を使っている。

ピンポイントでぼかしたいときはホルベインの1番の先端を鉛筆のようにカッターで削って尖らせて使う。使い始めは柔らかくてエッジが立ちにくいけれど、使い込んで中央に近づいていくうちに握力で目が詰まるのか、尖らせてもへたらず細かい作業ができるようになるような気がする。

広めのところをふわっとぼかすときは紙質が柔らかいナムラの太めの擦筆を使う。
擦筆は鉛筆画での登場は稀、木炭で描くときの方がよく使う。

セピア色のホルベインは使われずに長い間眠っていたもの。使用頻度の高い細いホルベインなのに年季の入った1本は、太いホルベインと一緒にいたために気づかれず、今日まで放置されていた。かわいそうなことをした。

・筆

広い面積を均一に塗りたいときや、擦筆ではムラになる広さをぼかしたいときは筆を使っている。ティッシュや指より繊細なぼかしができる。
鉛筆の芯を紙やすりで研いだときの粉を絵具皿に集めて、絵の具のように筆で塗ることもある。

・トレペとペン立て

鉛筆で描いた上に手を置くとこすれて汚れてしまうので、トレーシングペーパーを敷いている。
大量に使うのでロール状のものを買っているのだけれど、芯に近づくほど巻きぐせが強くてなかなか戻らないので、外側を絵を描くときに手元に敷く用にし、内側は絵の梱包に使っている。

鉛筆はぱっと見で硬さがわからないので(硬さごとに軸の色を変えて欲しい)マスキングテープの上からマジックで硬度を書き込んだペン立てを使っている。
このペン立ては澄敬一さんの作品。昔ハンコが入っていたものを元に製作されたとのこと。せっかくの美しいペン立てにマステ貼って台無しにしてしまいすみません、って思いながら愛用している。

・痛み対策

<内側からの痛み対策>
なにもしなくても痛いし描いていると熱くなるので手を冷やしながら描いていた時期もあったけれど、最近は初夏に少し痛むくらいに落ち着いてきた。
いろいろ試してみたけれど、局所的になにかをするというよりも体全体を動かした方が良いような気がしていて、個人的には水泳が一番効いたように思う。
絵を描く=体を動かさないイメージがあるけれど、長時間描くための体づくりは絶対に必要なので、みんな陰で鍛えていると睨んでる。『美術手帖』あたりで「絵を描く人のための体の鍛え方特集」をして欲しいと半ば本気で思ってる。画家○○さんの筋トレメニューとか、読んでみたい。

<接触による外側からの痛み対策>

まずは鉛筆に緩衝材を巻く方法でしのいで、それでも痛い場合は指に緩衝材を巻く方法を併用している。

鉛筆の方はなかなか良いものが見つからなくて困っていたのですが、数年前イギリスに行ったときに購入したRymanというロンドン中にある文房具屋さんで売っているペンシルグリップがすばらしくて、一昨年2回目に訪れた際にRymanを見かけるたびに買い占めてきた。
あまり厚みが出ないので感触も鈍らないし、適度な柔らかさがあって時間が経っても硬くならない。海外の鉛筆は日本のものより軸が若干細いのですが、日本の鉛筆でもぐいっと入れれば十分使えるし、わたしはアップルペンシルにも使っている。一本につき二個使うと、親指と人差し指の中間地点もカバーできる。

指の方は、マメとかタコ用のチューブ状の保護サックを指の痛いところにはめて使っている。だんだん横に伸びてくるので、細い指→太い指用に使い回している。

3.おわりに

ここまで細かいこだわりを書いてきたけれど、そんなこだわり全部捨ててほんとうに描きたい絵をのびのび描きたいと思ってる。

…のだけれど、わたしの好みに合いそうなおすすめ画材があったら教えてください。

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