見出し画像

KAFOとAFOの最適な使い分け方

タイトル
床反力解析に基づく治療用長下肢装具の適応の検討 ─ 長下肢装具から短下肢装具へ移行する際の足継手調整 ─

著者名
梅田 匡純、森下 元賀、川浦 昭彦、河村 顕治

雑誌名
日本義肢装具学会誌

公開年月日
2018年

研究の問いや目的

本研究の目的は、脳卒中患者の歩行獲得において、長下肢装具(KAFO)から短下肢装具(AFO)への移行における適応を床反力解析に基づいて検討することである。特に、膝継手遊動化のKAFOを装着した場合に、足背屈制限の有無が歩行時の床反力に与える影響を検証し、その結果からAFO移行に向けた有効適応を明らかにすることを目的としている。

研究や実験の方法と結果

方法
研究対象は、健常成人13名(男性2名、女性11名、年齢32.5±6.5歳、身長161.0±7.7cm、体重55.1±8.3kg、BMI 21.2±2.1 kg/m2)である。対象者は過去に下肢関節疾患の既往を有しない者とし、研究の目的・内容・方法について十分な説明を行い、書面で同意を得た。

測定には、歩行用フォースプレート(AMTI社、OR6-7型)を用い、ビデオ式動画解析システム(東総システム社、ToMoCo-Lite)と荷重圧解析システム(東総システム社、ToMoCo-FPm)を使用した。対象者は靴を履いた状態で、約6mの歩行路上を快適な歩行速度で歩行し、最高歩行速度に達する4歩目の右足がフォースプレート上に接地するよう練習を行った後、右側面からビデオカメラで撮影して矢状面の二次元解析を行った。

結果
立脚中期において、KAFOを装着した場合の足背屈制限の有無が下肢関節に加わる外的関節モーメントと推進力に与える影響を分析した結果、以下のような知見が得られた。

足関節背屈モーメント
  足背屈制限を付加した条件では、床反力を強く受ける傾向が見られた。特に、金属製のKAFOでは有意に大きい結果を示し、素材の違いが影響していることが示唆された。

膝関節伸展モーメント
  足背屈制限を付加した場合、装具の種類に関係なく膝伸展モーメントが大きく、膝関節の伸展支持性が得られることが確認された。

股関節屈曲モーメント
  金属製KAFOでは装具なしと比較して有意差がなく、股関節の伸展が制限されない結果となったが、プラスチック製KAFOでは足背屈制限を付加した場合に推進力を高める方向にモーメントが働く傾向が見られた。

床反力前後成分の前向きピーク値(推進力)
  金属製KAFOでは足背屈制限の有無に関わらず推進力が小さい結果を示したが、プラスチック製KAFOでは推進力に影響を与えなかった。

研究や実験の結果から得られる影響

本研究から得られた結果は、KAFOの足背屈制限が推進力を妨げず、膝関節の伸展支持性を向上させることを示唆している。特に、プラスチック製KAFOでは、足背屈制限が股関節のモーメントに好影響を与えることが確認され、AFOへの移行を考慮した際の有効な適応となる可能性がある。

この論文の結論

本研究は、脳卒中患者の歩行再建において、長下肢装具(KAFO)から短下肢装具(AFO)への移行における適応を床反力解析に基づいて検討した。その結果、足背屈制限を付加しても推進力は維持され、膝関節の伸展支持性が向上することが明らかとなった。これにより、KAFOの足背屈制限は、AFO移行に向けた有効な適応である可能性が示された。本研究の知見は、今後の臨床において、より効果的な装具選択と患者の歩行機能向上に寄与することが期待される。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?