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54 ブラック • クランズマン

人種差別を題材にしているけど観ていてちゃんと面白く、だけど重たいところはどこまでも重い作品でした。
これ、観る時期によってはめちゃくちゃな緊迫感を抱いていたんじゃないかな。
たとえば去年のアメリカ大統領選。
投票日からしばらく結果の出ない、あのひりひり焦れていた時にこれを観ていたら、現実の緊迫感と相まって大変なことになっていたような…
トランプが当選しなくて本当によかった。
なんだか過激なことを書きそうな自分が嫌になりますが。

KKKやネオナチ、白人至上主義者達が信じているものは何ですか?
何を守ろうとして、守った先には何があるんですか?
自分の理想の世界はそんなに美しいんですか?
ああ、だめだ。
何を書いても喧嘩を売ってしまいそうになる。
私は人種差別をしたこともないし、今後もしないと言い切れるけど、どんな差別意識も自分の中には一切ないとは言い切れない。
言い切れないからこういう人達を非難できないのかもしれない…
うん、映画の話しよう。

ロンは勇気のある警察官。
あの町で黒人初の警察官になろうと決めて、からかわれても差別されてもぐっと堪える。(最初は)
だけどKKKの連中と電話で話すだけのロンに比べて実際に潜入するフリップは負担が大きすぎてドキドキしました。
フェリックスに嘘発見器にかけられそうになったり、ユダヤ系じゃないかとしつこく疑われたり、メタ的に見ればこんなところで正体はバレないとわかってもドキドキしていました。
「お前にとっては聖戦でも、俺にとってはただの仕事だ」って言葉も考えさせられる。
見た目ではっきりわかる黒人と、ユダヤ系では差別に遭う頻度が全然違うんだろうな。
どの程度の差別を受けていたかで考え方もそれぞれに違ってしまう。
色の薄い黒人はすっかり白人のように振る舞っているって台詞もあったし…
根は一つに見えて地中では細かく分かれている、そんな光景を想像しました。

黒人にもKKKにもピッグと呼ばれる警官。
正義と秩序の側に立っているのに卑怯者扱いは酷すぎる…
確かに黒人に差別的な言動をする警官はいるけれど、その何人かのために他の警官も一括りに見てしまうのは間違ってる。
パトリスもそんなことを言ってるようじゃ、自分も職業差別をしていることになるって気付かないかな?

フェリックスの奥さんのコニーも、本当に愚かに見えた。
あの時代、まだまだ女性が差別されていただろうに、自分が差別されていることに気づかないで黒人を殺そうとする。
実際、男達は遠くから指示を出してるだけで実行犯にさせられてたじゃない。
おかしいと思わないの?
盲目的に何かを信じることは危険ですね。

ロンとパトリスの家のチャイムが鳴ったラストもとても印象的だった。
二人の前にあるのはまだ差別の終わらない未来。
70年代の設定だけど、この映画が公開された2018年になってもKKKもネオナチも元気にやってるんだよ。
果てしない苦難がこれからも待っているってことを象徴していた。

本当のラストカット、星条旗が逆さまになっていたけどあれは「緊急事態」という意味なんだね。
今この国の中では大変なことが起こっていますよと伝えている。
差別問題は根深すぎてどう解決していけばいいのか、私なんかには見当もつかない。
だけど自分が絶対に正しいとは決して思わず、視野を広くして柔軟な思考を持つことが必要だと思いました。
暗いことばかり書いてしまったけど、作品はとても面白かったです。

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