当選

わたしは一般常識に自信がないので、行政窓口や金融機関窓口に行くのが苦手である。
なるべくなら、電話もかけたくない。
実はかつて10年も金融機関の店舗で働いていて、窓口や電話での応対もかなり経験があるのだが、恥ずかしいことに自分がお客さんになると途端に緊張してしまうのだ。

今日は投函しなくてはならないものがあり、また、お年玉つき年賀はがきで当選していたものがあったので、郵便局の窓口に行った。余った年賀はがきも、手数料を引いてふつうのはがきや切手に交換してもらえると知り、やってみることにした。
(今まではシュレッダーにかけてしまっていた。もったいなかった)

お年玉つき年賀はがきは切手シートしか当たったことがないが、今回も切手シートだった。
誰かにお手紙を出すことも、今はめっきり減った。以前は複数人いた文通相手も今は便りがとだえて久しい。
年賀状交換もどんどん規模は縮小して、親族間の生存確認の通知のようになりつつある(しかし結婚式に呼ばれたことをきっかけに新しく始まるやりとりもあったりして、なかなか興味深かったりもする)。
そんな薄いはがきの束に、切手シートの当選を2枚も見つけた時には年末ジャンボが当たったような気持ちになったので、切手シートをもらっても使うかどうかはわからないが交換には行くことにした。
ちなみに宝くじを買ったことはない。これもいつか買ってみたいような気がする。

わたしは今仕事をしていないので、天気の良い平日の昼下がりなどにてくてくと出かける。
郵便局員さんは、わたしが手に持ったものを目にすると一瞬で言わんとすることを察してくれ、すぐに2枚の当選を確認するとぱっと笑顔になって、

「おめでとうございます!」

と言ってくれた。

「ありがとうございます!」

わたしも返した。
おお、切手シートが当選したのはおめでたい、嬉しいことなんだ。
テンションが上がって、壁に貼ってあったムーミンの切手などを買い求めそうになったが、それはなんとか自制することができた。
余った年賀はがきの切手への交換もスムーズにしていただけた。
郵便局員さんからすれば、この時期は一日に何度もこういうお客さんの応対をするのだろうから手馴れていて当然かもしれないが、
「差額が出ないように細かい額の切手で調整しますね。50円切手よりも10円切手のほうが使い勝手が良いと思うので、そちらでよろしいでしょうか?」
などと言われると素直に感動してしまう。
わたしは仕事をしていた頃(郵便局で働いたことはないが)、笑顔で「おめでとうございます」が言えていただろうか?
使い勝手の良い切手の組み合わせをご提案するような、相手の立場に立った仕事ができていただろうか?

そんなことを考えながら、てくてくと歩いて帰った。
帰ってからよく見てみると鶴と亀はなかなか可愛らしい顔をしていたし、切手を包む袋もいつもの切手用の袋よりもしっかりした素材感だった。
いつ、誰に出せる時があるかを考えなくてはならない。


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