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繁殖を禁じられたブリーダー⑨:ペットショップに期待したいこと

前回は犬の生体販売に関する問題について、ノルウェーの裁判から学びたいことをご紹介しました。正確な情報に基づいて、建設的な提案を理性的に続けていくことが大切なんじゃないかな、と個人的には思います。愛犬家や動物関心層だけでなく、広く社会的な賛同を得ることは遠まわりに感じられます。でも、実はそれが近道じゃないかと思います。

前回まとめたように、“不適切な”生体販売やそのための繁殖はなくしていくべきです。残念ながら現状では、多くのペットショップや繁殖業者、それから競りあっせん場に改善すべき点が見られます。でも、“命”を扱う重さをこの業界が理解してくれれば、「みんながハッピーで利益も増えるしくみ」が作れると思うのです…。
 
ということで、今回はあえてペットショップのメリットについて期待を込めて整理してみました。出会いの場と業界を変える可能性という2つの役割が思いつきます。みなさんは、どう思いますか?

"運命の出会い"

私たちがひめりんごと出会ったのはペットショップでした。時間をかけてブリーダーさんを調べ、トイプーの男の子を探す…という予定でした。その第一歩として、“ペット可”の物件を契約しました。
 
引越の翌日、カーテンを買いに近くのショッピングモールに出かけました。家具屋さんの近くにあったペットショップ。そこで出会ったMIX(チワプー)の女の子に一目惚れして今に至ります。

お迎え当日のひめりんご

ちなみに、この時は気に入ったデザインのカーテンが見つかりませんでした。代わりに、ケージやトイレシートなどを抱えて帰宅する思いがけない展開に。(室内が片付いていなかったので、お迎えは数日後にしました。)

衝動的にお迎えした、ちょっと情緒不安定で、かなり自己主張の強いチワプーの女の子。彼女のおかげで、「犬と一緒に暮らす」ということを、突き詰めて考えるようになりました。

一目惚れがくれた贈り物

あれからの8年あまり、ひめりんごから平蔵へと続く生活を通して、たくさんの貴重な出会いに恵まれました。獣医さん、動物看護師さん、トレーナーさん、ブリーダーさん、トリマーさん、愛犬家のみなさん。1つ1つのご縁から学んだことは数えきれません。

私は職業も変わっちゃいました^_^;;;

たくさんのお友だち

どれも、この子に偶然出会わなかったら経験できなかったことです。たくさんの贈り物を届け続けてくれるひめりんごには、毎日感謝です。少しばかりの恩返しとして、できるだけベストに近い"犬生"を送ってもらえるように努力しています。
 
ペットショップ(のおかげ?)で、そんなすてきな偶然に出会えたことを実感しています。だからこそ、ペットショップ運営企業には“まっとうな” ビジネスをして欲しいと願っています。

某大手ショップは、お店の従業員さんを“しあわせ配達人”と称しています。“ブリーダーさん”たちが、たくさんのご家族に“幸せを配達”をしているのを実際に見ています。同じ、というわけにはいかないと思いますが、これと近いことが、

できないはずはない

と思うのです。

"いとこ"の「陽(ハル)」をお迎えした日、"ファーストリボン"などと一緒に「お里のお母さん」からいただいたメッセージ

目的と手段を取り違えない大切さ

「その一目惚れ、迷惑です」ってCMをTVでやってましたね。意図は充分理解できます。TVCFというフォーマットの中では、メッセージをことさら単純化する必要性も分かります。でも、命に関わる問題には、もっと丁寧な情報発信をして欲しいなと思います。

伝えるべきは「最期まで適正に飼養」する大切さですよね?"衝動買い/衝動飼いの防止"の議論では、本来の目的が忘れられる傾向があるような気がします。"殺処分ゼロ" や "保護犬" についても同じような印象があります。

ちょっと話が逸れますが、こうした問題については心配な点がいくつかありますが、ここでは1点だけ挙げたいと思います。

その "ゼロ" は、
本当に評価できるものなのか?

これ↓は東京都の例です。 

“家族”の出自

さて、本題に戻って… このところ、ペットショップからお迎えするのが “悪” であるかのような風潮を少し感じます。出会いについて聞かれた時、「ペットショップです」と言うのを躊躇する飼い主さんが増えている気もします。

でも、出会いは様々。平蔵のような繁殖業者からお迎えする場合もあれば、ハルのお里のようなブリーダーさんに巡り合うこともあるでしょう。そのほか、保護シェルター、自治体のいわゆる"愛護センター"、友人・知人…。
 
どこから来たワンコも、お迎えすれば“家族”です。家族の一員として、最期まで大切に暮らせば良いわけです。家族の出自や出会いの形に、引け目を感じる必要はまったくありません。

ペットショップが本当にプロなら

前回まとめたように、ペットショップに所属するバイヤーさんや獣医師の“現在の姿勢”には大いに問題を感じます。

でも、バイヤーさんが本当に “プロの目利き” として、獣医さんが本当に “健康管理のプロ” として活躍してくれれば、こんなに心強いことはないはずです。これが、2つめのペットショップへの期待です。

いくら勉強しても、私たち一般の飼い主は素人です。毎日、たくさんの子犬たちに触れているプロにはかないません。正しい知識と豊富な経験をもった本当の専門家が自信をもって勧めてくれる子犬なら、素人の私たちも安心してお迎えできます。

業界を変える力

さらに重要なのは、繁殖業者や競りあっせん場に対する影響力です。ペットショップ運営企業の大手数社は、年間の売上高が100億円を超える大企業です。

あるペットショップ運営企業は、2011年度から2020年度までの10年で売上高が約6倍に成長し、昨年度の売上高は135億円にのぼる

この業界の文化は分からないのですが、一般的に考えれば取引先に”物申す”ことができる立場でしょう。

繁殖業者や競りあっせん場にとって、ペットショップ運営会社は大切なお客さん。特に大手は影響力も強いはず。繁殖や飼養管理方法の是正に向け、ペットショップは直接的な指導ができる立場にいるでしょう。

繰り返しますが、“今のやり方”には問題が多いと思います。その一方で、ペット業界全体を大きく改善させていくポテンシャル(あくまで“可能性”ですが…)をもつのもまた、大手ペットショップ運営企業かもしれない…ような気がします。

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次回はもう1つ丁寧なコミュニケーションをして頂きたいと思う、"保護犬" について考えてみたいと思います。