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近くて遠い恋

近くて遠い恋 作】葉月奏詩
性別不問 語尾、人称変更可能

ねぇ。君の事好きって言ったら怒る?
アハハ。そうだよね…。私たち友達だもんね…。それに今日は…。

私が君の事を好きなのかなと思ったのは、中学生の時だったと思う。
部活でも勉強でも思うような結果が出なくて。
夕日が綺麗な公園で一人悩んでいた時に、聞こえてきた君の無邪気な声。
「あっ!見つけた!!今日は一緒に帰る約束でしょ!」

君の底なしの笑顔を見ていると、何となく安心できた気がする。
でも君の笑顔は私だけに向けられるのではなく、多くの子に向けられていた。
何よりも君の周りにはいつもたくさんの人がいたんだ。
それなのに私は小学校の時からかけ始めた、メガネのせいであだ名は真面目ちゃん…。
断る事ができない私は陰で何でも屋とも呼ばれていた。
君がどんどん遠い存在になっていくのがどこか嫌で…。
心がクシャクシャになっていく気がした。
幼かった私は、この気持ちが恋だなんて分からなかった。
だって君とは、保育園からの友達で気が付いたらいつも一緒だったから。

自分の気持ちもよく分からないうちに中学も卒業して、高校・大学では君と離れ離れになった。
春の暖かい風から夏の爽やかな風に変わり始めた時に、君から伝えられた照れくさそうな一言。
「僕さ…。好きな人ができたんだ。協力してくれないかな?」
君は私の親友に恋をした。
「…いいよ。あの子優しくて可愛いもんね。」
私は上手く笑えていたのかな…。
どんどん親密になっていく二人を見ながら後悔や孤独感が私に覆いかぶさっていく。
何度も別れないかなと願いました。
酷い友達でごめんなさい。

君との関係を壊したくない私は自分の気持ちを封印して二人の相談にのってきました。
二人から届く相談メールの数が数え切れなくなった日に二人揃って私に教えてくれた。
「僕たち、結婚するよ。君には一番に伝えたくて」
そうか…。おめでとう。
今日から二人の幸せな日が始まるんだね。

ねぇ。君の事好きって言ったら怒る?
もっと早く気持ちに気付きたかった。
もっと早く自分に素直になりたかった。

凄く輝いているよ。
隣で一緒に歩けないことが寂しいです。
だけど隣にいるのが私が一番信頼している親友で安心しています。
これからも友達としてよろしくお願いします。

こうして私は何事も無かったように笑うことしかできなかった。

おわり

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