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抹茶
去年の12月中頃から付け始めた日記。6月18日現在、過去最高18日分を溜めていた。
病院終わりの昼下がり。地下一階にある喫茶店に来るのは今日で二度目。静かで正統派ながらどこか可愛らしい雰囲気の店である。ケーキと同じサイズのキッシュがある以外は食事らしいメニューもないので、ここに来る時はたいてい腹具合の微妙なときである。
今日も11時前に食べた朝食が腹に残っており、紅茶とケーキを頼むだけにした。濃ゆい抹茶のチーズケーキ。
抹茶を好きになったのはほんの数日前である。ずっと苦手に思っていたが、恋人から冷たい抹茶をひとくち頂いたとき、あんまりに美味しくて驚いた。濃厚でしつこさがなくさっぱりと味わい深い。
今回は初めて能動的に頼んだ抹茶モノだったが、やはりとても美味しかった。帰り際、思わず「あの、ケーキ、とっても美味しかったです」と声をかけてしまうくらいには美味しかった。
さて、この喫茶で過ごしたのが何時間だったか分からないが18日分の日記を書き上げた。ちびりちびりと惜しむようにケーキと紅茶を楽しみながら過ごす時間はとても心地いい。
日記を書くのも、本を読むのも、絵を描くのも、基本的に家よりこうした喫茶店の方がはかどる。美味しい紅茶や珈琲を喫するのは勿論、程よい他者の気配と完成された雰囲気、調度品のような音楽。
それらは粟立った呼吸や皮膚をなだめ、私がなにかするのを、或いは何もしないでいるのを助けてくれる。
半年としばらく分の日記を見返すに、私の心模様はころころと変わるし、嬉しかったり悲しかったり落ち込んだり忙しい。大好きなものを掻き集めて寄りかかりながら何とか立っている。
今日の日記には抹茶のチーズケーキが美味しかったことを書く。いつかの疲れ果てた私が、この喫茶店に辿り着けるように。