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青井 葉
2023年3月25日 04:43
身体が熱く重く。喉は焼けるよう。力の入らない四肢。文字をおう眼も霞む。雨音が優しいのは春だからだろうか。雨戸を伝い、暗い下水になる様を思う。この家の客人になって3年が経った。家具も家電も所々入れ替わり、模様替えもされ私の部屋はもうない。年に数回貸される部屋は、本棚とピアノだけがある。押し入れを埋める本棚。誰も弾かないピアノ。家を出た私と弟は、時折自分の本を今の住処へ持ち去る。