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【超ショートショート】(145)~かけがえのない日々へ~☆ASKA『you&me』☆

新しい家に、
新しいダイニングテーブルが届いた。

君と僕で、少し好みが違ったが、
ここは君の希望を採用して、
白いダイニングテーブルに決めた。

君と僕は、
ダイニングテーブルが届いた最初の夜、
一緒に暮らす記念として、
ふたりで買ったマグカップで、
コーヒーを飲んだ。
猫舌の君は、ミルクを入れて、
飲みやすい温度にする癖がある。
僕は、そのまま。

白いダイニングテーブルに朝陽が届く、
今よりもっと寒い朝。
マグカップに入れたコーヒーから、
まるで温泉の湯気のように、
メガネを曇らした僕は、
目の前の君を見失う。
その時、君は、
湯気で真っ白なメガネの僕を見ては、
朝から大笑い。
何がそんなに面白いのだろうか。

マグカップに入れた熱々コーヒー。
本当に熱々で、飲むのをためらう、
穏やかな春の日。
君も僕も喉の乾きを感じて、
熱々コーヒーに氷を入れた。
その上、君は、自分だけ、
バニラアイスを乗せ自慢げに笑った。
僕は負けたくないと、
バニラアイスと生クリームとポッキーで、
パフェのようにしてみた。
出来立てのそのコーヒーパフェを
ダイニングテーブルに運んで自慢しようとしたら、
君は、もう自分のコーヒーを飲み干し、読書中。
結局僕は、自慢の声も出せないまま、
ただ君がパフェを見て笑ってくれるのを待った。

初夏の足音が聞こえてくる、
そんな湿った空気を感じる梅雨の頃。
ダイニングテーブルのマグカップには、
冷たい緑茶が注がれた。
ふたりが話に夢中になると、
マグカップから汗をかいたように、
ダイニングテーブルに水滴のリングが出来る。

君は、そのリングを面倒くさがらず、
拭き取るのが好きみたい。
いつも白いダイニングテーブルであるように、
大切に出来るからと話したこともあった。

夏の冷房で冷える君は、
夏なのにあったかいココアを飲む。
僕は、アイスコーヒー。
水滴のリングを作るのは僕だけになると、
自分で吹いてね!
そんな視線で、君は、
ちゃっかり布巾をテーブルに置いていく。
僕は、しつけされた子犬のようには、
飼い主にうれしいとしっぽを振るように、
テーブルを拭いた。
キッチンで布巾を洗い終え、
僕は君が誉めてくれると信じて、
君を見つめる。

おでんが恋しくなる秋。
ダイニングテーブルに、
僕が好きなお菓子が置いてある。

いつも手伝っくれてありがとう。
これはささやかなお礼です。

そう書かれたメモ書きがあった。

君と僕はなんでも話している、
仲の良いふたりだと思っている。

でも、いざ互いを誉めるのは、
苦手な時がある。

そんな時、ふたりが自然と始めた習慣。
君は僕が好きなもの、
僕は君が好きなものを買ってきて、
ダイニングテーブルに置いておく。
そして、必ずメモ書きを添える。

そのお菓子は、
ふたりのマグカップに飲み物を入れて、
一緒に食べる。

1日の終わりの習慣。
1日の始まりの習慣。
1日の何気ない時の習慣。

これからもふたりは、
こんな当たり前になった穏やかな時間を、
思い出アルバムに飾っていくのだろう。

ふたりでいることが、
どんなにかけがえのない日々であるかを
時に振れ、確認するために。


(制作日 2021.10.26(火))
※この物語はフィクションです。

今日は、
ASKAさんの曲『you&me』を
参考にお話を書きました。
今日は世の中的にはおめでとう日。
そのことを意識して、
一緒になったふたりの
何気ない日常を、
ダイニングテーブルとマグカップで、
お話してみました。

なんでもない当たり前といわれる時ほど、
思い出になる日はないのかもしれないな、
そんなふうに思うこともあります。

『you&me』はデュエット曲。
ご紹介できる映像がないので、
少し歌詞を書いておきます。

~~~~~
たとえば手袋を分け合ってみる
温もりそびれたもう片方の手は
つないで つないで つないで

you&me 止まりそうになったら
ふたりだけで 寂しくなろう

僕らに別々の 恋があったかなんてこと
本当に思えなくて不思議

はじめから 並んで いつも並んで
いたような you&me
~~~~~

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
ASKA
『you&me』
作詞作曲 ASKA
編曲 ASKA・十川ともじ
☆収録アルバム
ASKA
『NEVER END』
(1995.2.27発売) 

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