【超ショートショート】(155)～うまい棒、輪になるハート～

幼い頃、
駄菓子屋で、うまい棒を買ったことがある。

確か10円だった。
5円玉の形をしたチョコレートもあった。
もちろん5円で売っていた。

あれから、
どれくらい経ったのだろうか。
駄菓子も進化するものらしいのだ。

ある日の昼下がり、
職場の同僚が、
大好物であり、駄菓子収集家でもある、
女性が、うまい棒の進化版を持ってきた。

それは、
うまい棒1本を、
かつてあったカールのスナック菓子のように、
小さくされ、ポテトチップスのように、
大きな袋にたくさん詰められていた。

その同僚の女性が可笑(おか)しなことを言った。

「このうまい棒には、
ハートがたくさん入っているんですよ！」

「うまい棒を輪切りにしても、
ハートにはならないと思うけど？」

「でもハートになってるんですよ！
ここだけの話なんですけどね！(笑)
このうまい棒のハートを食べると・・・」

「お～い！いつまでおやつ休憩するんだ！(怒)」

と、上司の一声で、
ハートのお話が聞けずにお開きになった。

その日、スーパーに立ち寄ると、
同僚が持ってきたうまい棒のお菓子があった。
なんとこの日は特売日で、
値段は78円？！
安さにひかれ即座に購入、2袋。

帰宅後、
すっかり特売のうまい棒の存在を忘れていた。

電話が鳴った。
あの同僚の女性からだった。

「今、電話しても大丈夫？」

「うん。」

「今日、うまい棒の話が途中になってて、
ずっと気になっちゃって。」

「うん。」

「ハートの話、憶えてる？」

「うん。」

「あのうまい棒に入っているハートを食べると、」

「うん。」

「良いことがあるらしいんです。」

「うん。」

と、
やっぱりその程度の話だと予想はしていた。
もっと深い話かと興味を持った自分が、
急に恥ずかしくなった。
わざわざ特売のうまい棒まで買って、
それもついつい2袋も。

だが、
同僚の女性は、
予想を越えた奇妙な話をしだした。

「ハートの話は、いろいろあるんですけどね！」

「うん。」

「まだ誰にも話してないんですけど、
私、最近彼氏ができました！(笑)」

「うん。おめでとう。」

「あっ！ありがとうございます。(笑)」

「で？」

「あっ！はい(笑)。ハートを食べると、」

「彼氏ができるじゃあつまらないよ！」

「いえいえ、そうじゃないんですよ！」

「じゃあ何？」

「それは、話すと長いので、後でメールしときます。
今から彼氏と・・・なので。(笑)」

「はぁ～。はい、はい、仲良くやりなさいよ！」

「はい！(笑)」

それから、
朝まで待ったがメールは来ず。
この日は休日でもあったから、
夕方まで待っても来ず。
その翌日もメールは来ず。

結局、
ハートを食べたらどうなるのかは、
わからないままとなる。

でも、
家には特売で買ったうまい棒がある、2袋。
自分で食べて確かめるしかないと、
待ち疲れの期限切れで、
研究者となり、
自ら実験台に志願した。

その夜、
夕食後に、うまい棒の袋を開け、
ハートをいくつも確認した。

恐る恐る、ハートを1つ食べてみた。

何も起こらない。

また、1つ、また1つと食べ、
気づけば1袋完食していた。

だが、やっぱり何も起こらなかった。

その翌日、
突然上司に呼ばれ、昇進することが決まった。

久しぶりに会社の外のお店でランチをしようと、
和食屋さんに入った。
珍しく満席で、
私は相席することになった。

目の前に座る人と瞳があった。
軽く微笑み会釈する。

先にほっけ定食を食べていたその人は、
私の鮭定食が届くと同時に、
会計、店を出た。

店員のおかみさんが、

「あれ！さっきのお客さん、
これ忘れて行ったみたい。」

おかみさんの手を見ると、
名刺があった。
おかみさんが私にその名刺を見せると、
微笑んで、私の肩を叩いて、
また別のお客さんの接客に急いだ。

渡された名刺をよく見ると、
こう書いてあった。

「今晩、一緒にお食事しませんか？」

このとき思った。
ハートの話は本当かもしれないと。

(制作日 2021.11.5(金))
※この物語はフィクションです。

今日は、
お話に書いたように、
うまい棒のポテトチップスのような袋入りの
小さく輪切りにされたうまい棒。
本当にハートの形をしたうまい棒が、
最近食べた袋にたくさん入っていました。
製造過程でハートになってしまうかもしれません。

そのハートで今日のお話にしてみました。
早く食べないと湿気ってしまうので、
とりあえずお話にして、写真を撮り、
食べてしまおうと思います。(笑)

商品名は「うまい輪」というみたいです。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
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