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弟、帰る

一人暮らししている弟が帰ってきた。
Cさんの影響でここ最近、全く顔を合わせることなかった弟が。

「うちに釣竿なかったっけ?」
ここ最近、メール一通よこさなかった弟の最初の言葉は、釣竿の確認だった。
いや、正確にはメールはよこしたけど、イナダを綺麗に捌いた写真を送ってきたのみ。
彼は釣りに夢中のようだ。

勢い私の話になる。日本酒を飲んでお花畑心地ながら個人事業主の登録をしたんだよと語ると、変態を見たような表情になってから、「うわぁ、ついにうちから出たよ。どうするよ親父」と父に語る。さあなあ、なにやってるか全然わからねえよなと答える父。

「とうとう、うちから出てしまった……」

弟、一族からタタリ神が出たことを嘆く乙事主様みたいなセリフを吐き出した。いつから私は平和な村を攻撃するようになったのかね。今は周りが自分で仕事している人ばかりだから別に珍しいことでもないと思うけど、会社に勤めていた頃の自分なら個人で仕事する人に対してそう思ったかもしれない。

自分が変わるにつれて環境も変わってゆく。

「安心しろ。近くの公園に行ってぼーっとしてれば、ああ、あの人ちょっとおかしいんだと言ってもらえる」
父、まったく関係ないこと言う。

「姉貴の人生って白か黒しかないよね。でもこうなったら大穴狙えるよ。一発逆転。そして楽させて」
なんで穴馬扱いなの?

一晩泊まり、弟は釣竿を持って帰っていった。持ってきたひき肉を冷蔵庫に忘れて。

もうすぐ2020年上半期が終わる。できていないことを考えるとどよどよするけど、後半は大車輪ではりきろう。さっさと「ステータス:得体のしれない何かをしている人」から抜け出そうと思う。ほんとに。

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