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腹黒中間管理職のクロトワさん

謎の体調不良に襲われ、しばらく寝込んでいた。直前に風の谷のナウシカを観にいったためか、繰り返しナウシカのことを考えていたのでちょっと記しておこうと思う。

ナウシカ、久しぶりに観ると随分印象が変わった。
どちらかというと王蟲や腐海の神秘に惹かれ動植物や人を愛する女性というイメージが強い。でも大画面で久しぶりに再会した彼女は優秀な軍人・研究者の要素と人の美質を備えている超人であり、印象に残る順番がちがった。

ナウシカがくつろいだ格好をしていたのは、序盤のユパが風の谷を訪れて父親のジルや大婆様と共にユパの話を聞いたいた時くらい。
以後は捕虜からの脱出、腐海での王蟲との邂逅、ペジテのブリックからの飛行、子供王蟲の救出からの王蟲の暴走阻止と大忙し。

また捉え方が変わっているのは敵役として登場するトルメキア帝国の参謀、クロトワさんも同じ。漫画版だともっと奥行きのある人物として描写されるけど、クロトワさんは映画版でも参謀というより、めちゃくちゃ優秀な腹黒中間管理職だよ。

詳しい説明はないけれど、トルメキア帝国の要職は特権階級の人間が牛耳る構造になっているらしい。クロトワさんはあわよくばクシャナを出し抜いてでも栄達したいと野心を抱く。

一方で行方不明となっていたクシャナが再登場した時は「短けぇ夢だったなぁ」とぼやいて次の瞬間には忠臣の行動に切り替えている。最初から最後までクシャナに看破された通りのたぬきっぷり。

ナウシカやクシャナがカリスマとして描かれている一方でクロトワはとことん人間臭い。生臭い。そんなところが妙に印象に残る。

クロトワさんの立ち位置は参謀とは言え、まったくままならない。
上司のクシャナ、「参謀!」と指示を仰ぐ部下たち。貯水池を守ってきた森を失くしたことに悲しみ、反乱に転じる風の谷の住民たち。本国から持ち帰れと命令されている巨神兵ですら、どこまで制御できるかは全くの未知。

そんな中でのらくら(?)たぬき力を発揮して生きてる中間管理職。そもそもナウシカの世界自体が自分たちの力だけではどうにもならないものと共存するしかない。

戦も飢えも腐海も王蟲も腐海の毒も一人の人間の力や意思だけではどうにもならない。まっすぐ、まっすぐに願ったように進めたら良いのだけど、なかなかそうはならない。それでも生きていくしかない。

体調を崩している間、自分の力だけではどうにもできないことが多々あった。はがゆいなあと思うことも多かった。腹黒有能中間管理職クロトワさんを妙に何回も考えていたのは、ままならない世界でたぬき力を発揮して淡々を生きる姿勢って大事だなあと思ったからだろう。

思ったとおりにいかなかったら、短い夢だったなぁとぼやくくらいでよし。そこで終わり。それでまた次に向かう。そんな姿勢を高速回転でまわしていきたい。

なにしろ、はっきりしきらないのにすごい勢いで変わっていく世界で生きているから。



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