ぜんぶ酒ありき

もう正月とはいえない日付になってきたぞ、と思いつつ、酒はやめていない。

《これも先生が言っていたことなんだけど、「アル中さんっていうのは、旅行に行くのでも、テレビを観るのでも、あるいは音楽を聴くのでも、全部酒ありきなんだ」と。だから、音楽を楽しんでいるつもりなのかもしれないけど、酒の肴として音楽を享受している。そういうところをあらためなくてはならないから、これは、飲まないで聞く音楽の楽しみ方を自分で考えないといけないよ、みたいなことを言われました。
 私は「ああ、そういうものなんですかね」と言ってたんだけど。確かに音楽を聴くとか、小説を読むとかっていうことを全部酒とセットにしてたから、酒なしで聴くとつまらないんですよ。あとでちゃんと聴けるようになりましたけど、酒やめたばっかのころは、音楽が不愉快なくらいつまらなく思えました。》

《飲みたいという気持ちを、「飲みたい」という直接の表現ではなくて、「音楽がつまらない」という別の苦情として自覚する一種の詐術ですよ。》

「上を向いてアルコール」小田嶋隆

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