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【人外の詩】 二人の世界について

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血の匂いがする ステンレスの灰皿
僕の体の中から ステンレスの安い灰皿

黄色く汚れた壁 回る換気扇
音もなく流れる ブレた野球中継
血の声が聞こえる 幸せになりたいと

あの子と結ばれて
僕たち二人 赤く回り続けて
毎夜毎夜回り続けて
いつかは老いて 枯れ果てて
人生がこの部屋に充満する その時
二人の亡骸の重みを受けて
世界に本当の明日が来る
その時までの僕の今日
望み叶わぬ限りはずっと
ずっとずっと 僕の今日

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君の人生を拐って
僕の人生を始める
君の夢を奪って
僕の夢を叶える

そんなこと
善人の僕にはできなかった
賢者の僕には選べなかった
孤独な僕は離してしまった

ああ神よ、この命よ、
恨みがましいこの弱虫に
悪魔の軽やかさと享楽を
真新しいデートプランを
小綺麗なマメさと堅実な生業を
与えたまえ、育てたまえ、
与えたまえ、育てたまえ、
与えたまえ、育てたまえ、

うん、なんだか、
勘が冴えてきた
うん、なんだか、
五感が読み返る
うん、なんだか、
心がムケてきた

やっぱり、そうだ、
オケツに尻尾が生えそうだ
セナカに翼が生えそうだ
ヒタイに角が生えそうだ

♪ このままお前を拐って
 狂乱の市場の中へ
 荒れ果てた城壁の中へ
 いがみ合う価値観の中へ
♪ このままお前の手を握り 
 閉ざされた花園の中へ
 暖たかい果実の中へ
 穏やかな夢の中へ

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湿り気と無風の大空洞
いつの間にかここで ものごころついたこの身
才ある同胞から先に召されていった
一時だけの涼しさのように去っていった
僕の心に小さな焦げ目残して 去っていった

口の中のコロニー
授かった光 輝いたやつら
優先的にすりつぶされ
優先的に飲み込まれて消えた
その度に大地が喜んだ
足元に広がる赤い大地 濡れた大地

提案があるんだ
二人でこの世界を出ないか
あの閉ざされた象牙の白い扉
こっそり溜めたこの蜜で
懐柔して出し抜かないか
骨の髄まで溶かしていかないか

禁忌の穴に吊るされたあの鐘
痛そうに腫れた赤い鐘
叩くと突風を起こすらしくて
その勢いで外に逃げないか

この身が無価値と知ってもいいんだ
僕と一緒に逃げないか
このまま望まぬ糧になるより
未知の光に飛ばないか

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王宮に閉じ込められた裸の王子と
階級に締め出された灰かぶり姫と
ふたりを結ぶ
目に見えないモノ
ぴったりだったのに
脱げてしまったモノ

王子よ姫を見抜いておくれ
姫よ王子を見初めておくれ
この人生の繋ぎ目に置き忘られた
透明な靴
この世界の結び目に取り残された
裸の王様
魔法が解けた跡にも残るのは
ぴったり重なった曲線の記憶
荒野の行く末と
楽園の帰り道を結ぶ赤い糸

▼ 詩せる死人の酒場『バッカナール』
http://www.21styles.com/mybbs/pandemo/

ローロー
2020/04/09:デイアフター:リリス
2020/04/18:コロニー:リリス

himaring
2020/04/12:出楽園:サタン
2020/04/21:透明な存在:セーレ

ブルーハーツ『シンデレラ』

掲示板で使えるモンスターアイコンが増えるよ。