⑩暗い部屋で一人膝を抱えていた『断片的な記憶・期待』

友達と

歩いて

母の家に遊びに行った。

隣の町

田舎の隣町は

山をひとつ越える

歩道のない

道を

一列で歩いた。


歩き疲れて

限界が来た頃

やっと着いた。

鍵は植木鉢の下。

母は留守だった。

母には内緒で

驚かそうと

思っていた。

母に会いたい

一心で

仕事でいないかも

なんて

考えもしてなかった。


中に入り

母が作っていた

おじやを

温めて食べた。

置き手紙を残して。


帰る頃には

暗くなっていて

お友達のお爺ちゃんが

車で迎えに来てくれた。

お爺ちゃんは

「お母さんに会いたくて

こんな所まで歩くなんて

爺ちゃん涙出るな…」

と言った。

何で泣くの?

と思った。

私の気持ちは

歩いたんだよ!凄いでしょ!

だったから。

お母さんビックリするかな?

電話来るかな?

だったから。


母からの電話は無かった。


そして、
時系列が
断片的で
ここからあまり
不確か。
だから、
ここは
隣町の家で起こった事を
書こうと思う。
整理。
出来るだけ。

そう、書き忘れていた記憶を
思い出した。


姉が出産前

産婦人科に

入院中の事。

私がまだ、

母の家に

泊まっていた時の事。

その時はまだ、

兄は来てなくて

父も祖母の手前

頻繁には来てない時期があった。


学校が終わると

母の運転で

姉のお見舞いに

行っていた。

未成年の受け入れが多いと

紹介された病院は

車で1時間程かかる町。

帰りは夜22時にもなる。

車の中でご飯を食べて

家に着くと、

電気が止められていた。

電気代を

払えなかったのだ。

馴染みのない

真っ暗な部屋に

布団を敷く。


母は夜の仕事に行く。

私は

良い子にして

布団に入り

行ってらっしゃい

と目を瞑る。


暫くして、母が玄関を出て

エンジンをかける。

車のライトが窓に写り

一瞬部屋が明るくなった。


一人には大きすぎる部屋

暗い部屋で

母の車を

見送りながら

膝を抱えていた


手足を伸ばして

目を瞑ると

どこか暗闇に

引きずり込まれそうになったから。

頭が

可笑しくなりそうだったから。

お山座りの形で

横になった

目を開けて

朝と

母を待った。

車のライト

照らされる度

来た!

期待をした。


トントントントン

ドラマの様な包丁の音で

目を覚ました。

いつの間にか

眠っていた。

そんな日々が

続いた。


中学生になった頃

母に

「お父さんと離婚しようと思うの。」

と聞かされた。

私は嬉しかった。

ずっと望んでいた事だった。

これでやっと

怖い思いを

しなくて済むと思った

母と姉と

このまま暮らせるんだと

思った。

そう、思っていた。


中学校はお弁当で、

夜の仕事のせいで

母のお弁当が間に合わず

学校に届けてくれた時。

その日のお弁当のおかずは

お酒のおつまみの様な

冷たくて

固い物だった。

手作りの物はなく

出来合いの

冷たいお惣菜

何だろうあれ、

干した小魚に甘辛いタレを絡ませた佃煮?

甘納豆?豆類があったな。

固い大学芋と

たくあん。トマト。

ご飯は

値引された

コンビニのおにぎり。

ご飯粒が

ポロポロ落ちる

売れ残って

乾燥しきっていた。

具は

カリカリの梅。


覚えてる。

冷たかった。

母のお弁当が

初めて

不味い

と感じた。


父が来た時

言い合いになった

母が

「ここで叩くなら私何するか分からないよ!」

と言った。

それでも父は

当たり前のように

母を罵倒した。

引きずり回して

床に投げた。

中学生の私は

それを見ていた。

それまで

見ないふりをしていたけど、

なぜか

見てた。

見てしまっていた。


隣町の家での事。

小学生から

中学生になる

お山座りが

過ごした場所。


お山座りの癖

ここで

付いたのかもしれない。












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