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③記憶の整理『兄と姉』

   私の覚えている一番古い記憶は、

夕方、

兄と姉と一緒に、子供部屋に固まっていた事。

私は母の所に行きたかった。

でもその時、私は2人に抑えられていたんだと思う。

私が泣かない様に、まだ小学生の兄と姉が、

全ての事情を理解して、

一生懸命なだめていたんだと思う。

襖の隙間から

オレンジ色の光が溢れる

夏の夕方。

そんな記憶。


父は、子供達には優しかった。

仕事もしていた。

オモチャや、出張のお土産を沢山買って来た。

兄は、そろばんとサッカー、姉はエレクトーンを習っていた。

よく、近くの海にも遊びに行った。

ビデオカメラを持って、

たくあんお結びのお弁当と、

保冷剤代わりのチューチューアイス。

(ポッキンアイス?)


父は、子供達には優しかった。

でも子供達は、

父の優しさが怖かった。

優しく、楽しく、いい気持ちになればなる程、

子供達と母の失敗は

許されないからだ。

自分の思い通りにならないと、

少しでも計画が狂うと、

少しでも気に触ると…

母の目の前は

一瞬で暗くなる。

子供達は、見て見ぬ振りをする。

心配して母を見る事は、

父の前では許されないから。

何事もなかったかの様に

12歳、10歳、の子供達は

笑顔を作る。

お母さんごめんね。

と、その小さな

心の中で

思いながら。

私は、兄と姉が

笑ってるから

笑っていた

のかもしれない。


その頃のホームビデオを観ると、

兄と姉の、父への対応は、

親戚の叔父さんに対する

話し方の様だった。

父が食卓に座れば、

子供達もそこにつく。

正座、単語、即答。

父は満足気にお酒を飲む。

母は、

台所からお料理を運んで来る

映像ばかり。

一緒にご飯を食べてる

映像はなかった。


大きくなってから見た、

ホームビデオの中の記憶。

私も写ってるのに、

その日の記憶はない。

同じ時期の

オレンジ色の夏の木漏れ日と

たくあんお結びとチューチューアイス。

12歳の兄と

10歳の姉の

記憶は

あるのに。


記憶の整理をすると、

客観的に見る事が出来る。

当時まだ小学生の

小さな
子供達が、

大きな
大人
最大限

気を使って生きてた

胸が苦しくなる。

助けてあげたくなる。

私が、

小さな4つの手に

守られていた様に。





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