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今は閉店してしまったお店の思い出たち5店分

食べログに「行きたい店リスト」というのを作って気になったお店をリスト化しているのだが、コロナが流行り始めて「閉店」という文字をよく目にするようになった。そこで今まで行った店でどれぐらいのお店が閉店しているのか数えてみると、47 / 1170軒が閉店していた。割合にして4%で、かなり低い方ではないかと思っている。

どんな店が閉店したのか眺めてみると、かなり有名だったりめちゃくちゃ美味しかったお店が潰れていたりして驚いた。意外と全ての店のことを覚えており、それぞれに色々な思い出があることにも気づいた。そこでここには特に思い出深いお店たちのことを記していこうと思う。

旬熟成hakko / 銀座

GINZA SIXの13階に入ってたお店で、熟成肉の料理を食べさせてくれるお店だ。元々は会社のチームランチでコース利用してここの存在を知った。自分でピンセットで作るミニハンバーガーとか、ビーカーみたいなガラス容器で煙を閉じ込めてスモークしてる肉を小さな試験官みたいなのに入った数種類の調味料でいただく料理とか、楽しくて美味しい料理だったのを覚えてる。

あるとき、高校の友達が結婚するといいハネムーンを兼ねて九州から東京に来るというので、ここのお店でランチすることにした。友達と婚約者の女性と3人で食事し、すごく楽しかった。ランチは1人6000円ぐらいで、結婚祝いも兼ねておごった。その後も東京タワーとか表参道とかを案内し、夜も渋谷の居酒屋で3人で飲み、幸せな家庭を築くんだろうなと思ってこちらも嬉しい気持ちになった。

後日、あの結婚はなくなったと友達から連絡があった。会社の後輩との浮気がバレて、婚約は破談になったそうだ。そしてその友達はその後、その浮気相手と結婚し、今はお腹の中に赤ちゃんができて家も絶賛建築中だ。今度九州に行く機会があったら6000円を取り返しに行こうと思う。

昴 / 新宿

サントリー協賛のラウンジで、オープン50年ぐらいになる新宿の老舗バー。バーと言っても老若男女が楽しく飲める、ガヤガヤ系の空間だった。20代後半の頃に友人と3軒目で利用した。

問題だったのはその日私がビーチサンダルを履いていたこと。席につくなりボーイさんに話しかけられ、ビーチサンダルでの来店はお断りしていると伝えられた。謝って席を立とうとしたが「こちらに履き替えていただければ大丈夫です」と言われ、花柄のスリッパを渡された。礼儀知らずの若者を追い返さず、その後も慇懃に接してくれたホスピタリティに感動したことを覚えている。

ちなみにサブカルに人気の恵比寿の某バーではビーチサンダルを履いてたので入店を拒否された。まあそこまでは理解できるのだが、後日靴を履いて訪れてみると、客の声量とかにはうるさいのにカウンターで寝てる常連の頭を引っ叩いて店員同士でクスクス笑ってたりしてなんだこのクソなバーはと思った記憶がある。ブラジルから会社の同僚が来日したときにはマネジャーに「この店に行こう」と言われたが全力で止め、恵比寿横丁にぶち込んだ。

昴では250円のバランタインのソーダ割りを飲みながら気持ちよく酒を飲み、帰る際にはお勘定とビーチサンダルを頼んだ。バーで会計とビーチサンダルを頼む奴はあまりいないのではないかと思っている。

アマルフィイキッチン / 鎌倉

鎌倉の小町通り近くにあったイタリアンのお店。その日は大学の時の友達と後輩と鎌倉に遊びに来ており、夜までは海岸でキャッキャウフフしたり散々遊び尽くした。晩飯をどこかで食べようとなり鎌倉駅周辺を歩いてみたが、まあ空いてる店がない。空腹のまま何軒も渡り歩き、疲労が限界に達した状態でついにこの店に漂着した。

ワインのボトルを注文することにした。店員さんがワインを持ってきてくれて「テイスティングされますか?」と聞いてきた。20代半ばの自分は何を言ってるのかわからなかった。どうやらワインの味を一口確かめて、異常があったら別のにしてもいいみたいなシステムだと友人から説明を受けた。そのとき自分は空腹と疲労の限界と同時に喉も渇ききっていたので、そのような手続きが多い儀式に我慢できず、友人に「テイスティングなんかいるか〜?」と謎の関西弁で言ってしまった。店員さんはすぐにワインを注いでくれた。

その後、ワイン3本飲みピザとパスタをたらふく食って帰った。大満足だった。今後はあんな無礼な発言をしないよう、体を鍛えるしかない。

大浦食堂 / 東京藝術大学

芸術界の東大と言える東京藝術大学の中にあった学食。かつて受験して二次試験で落ちた思い出深い大学だ。受験して以来8年ぶりぐらいとなる20代後半の時に校門を再度またいだ。

名物は480円のバタ丼で、バターで焼いた豆腐ともやしが乗ってるだけのシンプルな丼。だがかなりクセになる味で、これを食べたあと自分も真似して何度も家で作った思い出がある。

食堂の近くには物々交換所というスペースがあった。誰でもそこに置いてあるのをもらってもいいというスペースで、モノを通して人々のコミュニケーションを作るというインスタレーションの一種らしい。

そこで折り畳み自転車を見つけた。じーっと眺めていると食堂のおっちゃんが出てきて「空気抜けてるなら守衛さんに借りてくれば?」と勧められたのでその通りにした。そしておっちゃんは新品の鍵と私物のライトをくれて、さらにチャリに油もさしてくれた。料理人かと思っていたら芸術の話もめちゃくちゃ詳しくて、タバコを咥えながら話す姿がかっこよかった。おっちゃん元気かな。

自転車を芸大でもらったという話をしたら、芸大卒を名乗る方から乗ることはおすすめしないと忠告を受けた。その方も以前、もらったチャリに乗り、警察署に行く羽目になったという。武蔵美では物々交換所にあったチャリが盗難車だったため、交換所が廃止になったという話も教えてくれた。

僕がもらったチャリはその後盗まれた。インスタレーションの思い通り、何かしらのコミュニケーションは生んでしまったわけだ。


岡むら屋 / お茶の水

とんかつチェーンのかつやを運営しているアークランドサービスHDの子会社のアークダイニングが都内に数店舗を展開していた肉めしチェーン店。このときちょうど、アークランドサービスの株を買おうか迷っていた。主力のかつやについては毎日通っていたので良い店だというのは知っていたのだが、展開している他の系列の店は知らなかったので行ってみることにしたのが岡むら屋のお茶の水店だった。

結果、すごくうまかった。めちゃくちゃ煮込まれたお肉と大根、豆腐、卵が乗った丼で590円。そして店員さんもハキハキしていて1分以内に必ず出すというオペレーションも良かった。

来店をきっかけに株を買う決意をした。そして実際に30%ほど株価は上昇し、当時の自分として株式投資を始めて以来最も稼がせてもらった銘柄になった。

都内にいくつかあった店舗はその後閉店し、最後となっていたニュー新橋ビルの店舗も2021年11月に閉店していた。絶対に売れると思っていたが、やはり飲食は難しい世界だなと思った。岡むら屋は嫌いになっても、かつやは嫌いにならないでください。

番外編

LB6 / 六本木

入店したことはないのだが、行ったことはあるお店。六本木のミッドタウンの近くにある熟成肉のお店だ。

大学のサークルの同期でサイバーエージェントに入社した友人が、同じサークルの友人を連れて合コンを開いていると聞きつけ、合コンに誘われなかったこれまた同じサークルの友人と様子を見に行った。

ガラス張りの店だったので外から様子を伺うことができて、楽しそうに合コンをしている様子を見てむしゃくしゃして、店内からも見える路地でタバコを吸って悪態をついた思い出がある。誘われなかった理由がわかる。


コロナ禍で多くの名店が閉店したわけですが、最後に僕もご飯屋さん情報を参考にしている編集者の柿内さんのツイートを貼っておきます。

今年も太りましょう。
以上

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