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半分くらい田舎に帰れ

鈴木実貴子ズの新宿駅という歌の冒頭がひどい。

新宿駅人の多さ、半分くらい田舎に帰れ。 
横断歩道人の多さ、半分くらい死ねばいいと。
思ったのは本当。
思ったのは本当。

自分の存在を棚に上げてる時点でダメなんだけど実によくわかる。
都会の人の多さは尋常じゃない。


ところが去年、緊急事態宣言で呆気なく人波が消えた。
半分どころか全部消えた。
無人になったターミナルは不気味なくらい静かで、この世の終わりかと思う雰囲気が漂っていた。
たぶんあんな風景を見るのは後にも先にも無いだろうと思う。

あれから1年半も経ち人は徐々に戻ってきたけど、やっぱりどことなく町は静かなままで、駅もお店も電車も道路も空いていることが多かった。
活気が無い、景気が悪い。なんて言ってみたところで会社員のわたしには仕事がなくなるわけではなかったし、実は街なんて空いていたほうが快適なのだ。お酒が飲めない。夜遊びができない。なんていうのも慣れれば慣れてしまう。


そんな生活がダラダラと、1年半続いたあと突然平常がやってきた。
人が多くなるだろうなあなんて予想はしたけど、実際に街へ出てみたら余りの喧騒に吐き気がした。空いている街に慣れてしまったぶん、今日の人波は凶器だった。

アップルストアで予約商品を受け取ったあと、わたしは逃げるように栄の街を抜け出した。


半分くらい死ねばいい。

鈴木実貴子ズを口ずさんでみた。
決して言葉にできない冗談で済めばいいと思う。

しばらく、街には行けないかなあ。

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