阿修羅について

【阿修羅】
 阿修羅は、サンスクリット語で「アスラ」と言います。アスラの名前の由来は「生命を与えるもの」です。asuが「命」で、raが「与える」だとされています。別の解釈では「a」が、否定の説頭語で「sura」が「天」という意味です。その場合、別名を「非天」と言います。アスラは、ゾロアスター教では、神々のことです。しかし、インドでは悪魔とされました。アスラは、文明の諸要素の神格化だとされています。リグベーダでは、司法の神ヴァルナ「水天」もアスラです。ヴァルナは、インドラと並ぶ、重要な神だとされています。
 通常の阿修羅像は、三面六臂で、肌が青か赤色です。右手には「剣」を持ち、左手は拳を握っています。阿修羅の3面は、仏教に帰依し、悟りを開いていく様子の表現です。右が「怒」を、左が「苦悩」を、正面が「悟り」を表しています。有名な阿修羅像と言えば、興福寺のものです。興福寺のものは、天龍八部衆の一体として安置されています。ただし、それは一般的な阿修羅ではありません。しかし、その憂いを含む表情が、天平文化の名作だとされています。

【正義】
 阿修羅は、もともと正義を司る神でした。その正義ために、天上の神々と戦っているとされています。ちなみに修羅場という言葉は、阿修羅が語源です。戦いの原因は、阿修羅王の娘「舎脂」を、神々の王「帝釈天」が力づくで誘拐したことです。ただし、舎脂は、後に帝釈天の正式な妻となっています。しかし、阿修羅は、帝釈天を許すことなく、戦いを挑み続けました。戦いは、帝釈天側が、常に優勢だったとされています。しかし、帝釈天が、敗走することもありました。その時のことです。退路に、アリの行列が横断していました。帝釈天は、慈悲の心で、アリを踏み潰さずに引き返したとされています。阿修羅は、それを帝釈天の計略だと思い退却しました。このエピソードは、仏教のものです。仏教では、他人のことを思いやれる方が勝つとされています。

【仏教】
 阿修羅は、仏教に帰依し「八部衆」「28部衆」の一人とされました。その役目は、阿弥陀仏に救われた人を昼夜守ることです。阿修羅は、血気盛んで、怒りっぽく「自惚れ」と「猜疑心」が、強かったとされています。その寿命は、約5000歳くらいと長寿で、衣食には、不自由していませんでした。阿修羅の住んでいる場所に関しては、諸説あります。例えば「天界」「海底」「地下」などです。天界では「忉利天」という場所に住んでいたとされています。しかし、帝釈天と争って、追放されました。六道輪廻説では、修羅道に住むとされています。修羅道は「いかり」「おごり」「おろかさ」という3つの心から生じる世界です。そこでは、終始戦いが繰り広げられました。修羅道に関しては、善とする説と、悪とする説があります。

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