ミュシャと「アール・ヌーヴォー」
【ミュシャ】
ミュシャは、アール・ヌーヴォーを代表する画家です。影響を受けた人物には、ウィリアム•モリスがいます。ミュシャは、チェコで生まれ、パリで成功しました。後期印象派の画家ゴーギャンとは、友人関係にあり、一緒に写真をとったりしています。ミュシャは、敬虔なカトリック教徒でした。また、フリーメイソンに所属していたとされます。金銭には、比較的無欲でした。ミュシャは、ジャポニスムの影響を受けています。ジャポニスムとは、当時ヨーロッパで流行した日本趣味のことです。逆に日本の方からもミュシャは愛されています。
【デザイン】
ミュシャには、卓越したデザイン力があります。独自の感覚で、草花などを簡略化し、自分のデザインにしました。ミュシャのデザインは、イラストの模範とされています。デザイナー、イラストレーター、漫画家に大きな影響を与えました。ミュシャは、舞台女優サラ•ベルナールと独占契約を結び、そのポスターを手掛けます。そのことで一気に名声が上がりました。 描いた芝居用のポスターに「椿姫」「メディア」などがあります。ポスターとは、当時の産業化したパリで誕生したものです。
【ミュシャ様式】
ミュシャの絵は、装飾的です。絵に植物、花、女性、星、宝石などの装飾をほどこします。ミュシャの異名の一つが「花と美女の画家」です。描く女性は、風になびく豊かな髪に、流れるような衣装を着ています。それは、異国情緒溢れる優美で華やかな女性像でした。ミュシャは、女性を多く描いていますが、実は女性が嫌いだったとされています。
ミュシャは、線の画家です。その流れるような曲線から「線の魔術師」と呼ばれました。その構図は、曲線や円を多用した独特なものです。ミュシャは、舞い踊るかのように滑らかで、太くはっきりした輪郭線を描きます。それが優美で繊細な描写を生み出しました。そのようなミュシャのスタイルは「ミュシャ様式」と呼ばれています。
【チェコ】
ミュシャは、スラブ系のチェコ人です。愛國主義者であり「スラブ叙事詩」という連作を描いています。この作品は、同じチェコ人のスメタナの曲から着想を得ました。ミュシャは、チェコの国民的な画家です。アメリカやフランスに住んでしましたが、最終的には故郷チェコに戻りました。その絵画がチェコ国民の愛国心を刺激するものだとして、ナチスドイツに逮捕されたこともあります。ミュシャにとって、自分の絵画は、人々とコミュニケーションをとるための言語のようなものです。特権階級のための特別なものではなく、民衆に親しまれるような芸術を目指しました。
【アール・ヌーヴォー】
ミュシャは、アール・ヌーヴォーの旗手です。アール・ヌーヴォーとは、フランス語で「新しい芸術」を意味します。それは、ベル・エポックと呼ばれる、パリがもっとも繁栄していた時代に生まれました。アール•ヌーヴォーの特徴は、自然の有機的な曲線を使った装飾性と、平面的な画面です。ミュシャの芸術は、特定の美術運動、芸術理論から派生したものではありません。そのため過去の伝統や様式には、とらわれませんでした。
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