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ニーチェの「ニヒリズム」


【ニヒリズム】 

  ニヒリズム「虚無主義」とは、価値や意味は何もないとする否定的な考え方です。ニヒリズムによって、これまで理想とされてきた諸価値は否定され、その意味は徹底的に否定されます。 そのため何も信じることが出来ず、何事に対しても確信を持つことが出来ません。ニヒリズムの立場の人間を「ニヒリスト」と言います。ニヒリストは、これまで信じられてきた、いかなる真理も信じません。そのため、世界をあるべきではなかったものと判断します。ニヒリストが生まれるのは、特に大衆が例外者を抑圧した時です。

 【意味】 

  ニヒリズムには「何のために」への答えが欠けています。その問いを発するのは、これまでの思考習慣からです。世界の生成の意味や目的を考えた場合、ニヒリストは究極的な意味や目的などないと結論付けます。そのため、人がニヒリストになるのは、目的のない生成に対しての幻滅です。ニーチェは、世界に完成すべき目的などというものはなく、無意味なものが永遠に続くものだと考えました。その前提となるが、世界が永遠に同じことの繰り返しだと言う「永劫回帰」と言う世界観です。もし、全てが同じことの繰り返しなら、何のためにへの答えは、どこにも見出すことは出来ません。 

 【永劫回帰】 

  永劫回帰の世界では、全ての出来事は、相互依存関係からなる運命によって決まっています。全ての生起の過程は、全体として働いており、個々のものは個別独立しておらず、その連鎖から逃れる術はありません。そこで人々は、運命から逃れるため、生成の世界を妄想だと判断して、世界の外にある真の世界を捏造します。その真の世界にこそ希望を見出すことが出来るからです。人は、生きているかぎり、なんらかの意味を生み出しています。なぜなら、まったく無意味なことには耐えられないからです。 

 【デカダンス】

  ニヒリストが感じるのは、徒労のパトス「感情」です。徒労は現代ニヒリズムの性格を表しています。ニヒリズムは、徒労の苦しみです。それは、不健康な人間の地盤の上に成長します。ニヒリズムは、デカダンス「退廃的なもの」の表現です。それは、健康な生命力を下降させます。ニヒリズムは、ペシミズム「厭世主義」の先行形式です。

 しかし、世界には、もともと意味と言うものがないなら、ニヒリズムは、一つの正常な状態なのかもしれません。意味というものは、そもそも人間の側が創るものです。これまで西洋では、世界や人生には意味があるものだと考えて来ました。しかし、徹底的に考え抜かれた結果、ニヒリズムに辿り着くのです。ニヒリズムは、生きる意欲を低下させます。その最終的な実行は、生の否定である自殺です。 

 【受動的ニヒリズム】 

  ニーチェは、ニヒリズムには2種類あるとしました。その一つが、デカダンスの生の表現である受動的ニヒリズムです。ニーチェは、受動的ニヒリズムを、絶望に疲れきり、生を下降せしめる弱さの兆候だとしました。それは、生を衰退させる疲労のニヒリズムです。人生が無意味なものだと感じ、何事にも消極的になり、諦めた態度になります。それは、何に対しても抗おうとせず、その時々の状況に身を任せる流されたような生き方です。ニーチェは、それを仏教徒のようなものだとしました。 

 【能動的ニヒリズム】 

  受動的ニヒリズムに対するのが能動的ニヒリズムです。能動的ニヒリズムは、強さの兆候であり、生命が上昇している時に現れます。その目的は、ニヒリズムを超克し、新しい価値を創造することです。生成の世界を無条件に肯定し、創造的に生を表現しようとします。生成の過程には、そもそも目的というものがありません。しかし、それにもかかわらず、その全過程を肯定します。能動的ニヒリズムは、従来の価値を乗り越えるために破壊的です。古い価値観を破壊したあとは、新たな価値を能動的に創造していきます。


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