帝釈天とインドラ

【帝釈天】 
 帝釈天は、3界の王者です。そのため「天帝」とも呼ばれました。サンスクリット語では、インドラと言います。漢字表記では「因陀羅」です。インドラは、忉利天「とうりてん」の喜見城「きけんじょう」に住んでいます。忉利天があるのは、須弥山「スメール」の山頂です。喜見城の庭園「ナンダナ」には、あらゆる願いを叶える、如意樹「にょいじゅ」があります。インドラの乗り物は、3本牙の白象「アイラーヴァタ」です。それ以外に「ウッチャイヒシュラヴァス」という天馬を所有しています。

【神々の王】
 インドラは、アーリア人が、インド族とイラン族に分かれる以前の古い神だとされています。インドでは「デーヴァ」と呼ばれる神々の1人です。しかし、イランでは悪魔とされました。インドラの敵とされるのが、アスラ「阿修羅」です。アスラは、戦いを好む鬼神だとされています。インドラは、アスラと何億年間も戦い、それに勝利しました。そのアスラの首領だとされてるのが、水の神ヴァルナです。ヴァルナは、司法や道徳などを司る神だとされています。
 インドラが、仏教に入ってからは、仏法の守護神とされました。仏教の神々の中で、帝釈天「インドラ」は、王者だとされています。その帝釈天と双璧をなすのが梵天です。帝釈天は、梵天と一対で「梵釈」などと呼ばれました。また、仏教の「12天」の1人として、吉祥の方角である「東」を守護するとされています。

【雷神】 
 インドラという名前の由来は「雨の滴を持っている」です。もともとは、雨を降らせる雨雲の神だったとされています。そこから、雲を集め、雷を生み出す雷神ともされました。恵みの雨は、大地を潤すので、豊穣の神だともされています。インドラの武器は、雷の象徴である「ヴァジラ」です。ヴァジラは、仏教では「金剛杵」や「独鈷杵」などとも言います。それは、工巧神トゥバシュトリによって作られました。
 インドラの最大の功績は、大蛇ヴリトラを退治したことです。ヴリトラは「旱魃」「冬」「カオス」などの化身だとされています。カオスとは、天地創造以前の形なき状態のことです。別の説では、ヴリトラは、水をせき止める障害のことだったとされています。インドラは、堰き止められていた7つの河を解放し、水路を拓きました。

【ヒンドゥー】
 インドラは「城塞の破壊者」とも呼ばれる戦士で、アーリア人の理想像だったとされています。しかし、ヒンドゥー教の時代には、その地位は低下しました。叙事詩ラーマーヤナでは、ラーヴァナの息子「インドラジッド」にも敗北し、アスラとの戦いにも、たびたび敗れるようになったからです。インドラは、戦いに弱くなっただけではありません。不道徳な行為も目立つようになりました。例えば、バラモンの妻と不倫などをしたからです。その罰として、ブラフマン「梵天」に千個の女陰の徴をつけられました。ブラフマンは、ヒンドゥー教でも最高神の1人です。女陰は、後に千個の目となったので、インドラは「千眼天」と呼ばれるようになりました。インドラに、以前のような威厳はなくなりましたが、それでも他の神々よりは、優れた存在だとされています。

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