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孔子の「仁」と「礼」


【仁】 

  仁「じん」は、「人」と「ニ」という二つの漢字からなります。それは、人と人の間に自然に発生する家族愛などのことです。心の内にある愛情は、外に対して、実際に人を愛するという主体的行為としてあらわれます。仁は、道徳、礼「社会規範」、政治の前提となるものです。儒教倫理において、最高の理念とされ、個別に「恕」「忠信」「孝悌」「克己」などに分類されます。 

 【孝悌】

 子の親に対する親愛の気持ちが「孝」です。孝の漢字は、年老いた親を子が背負っている姿を表しています。子供は、親に心配をかけてはならず、忠実に尽くすものです。ただし、親孝行をする場合、礼儀作法に合致したやり方でなければなりません。

 弟が兄に、年下の者が年長者に対して、恭順する心を「悌」と言います。年上の人を尊重し、言うことはを聞くのが悌「悌」です。孝と悌を合わせて、「孝悌」と言います。孝悌「こうてい」は、人間関係において、基本中の基本です。外では悌を、家では孝を守ります。 

 【恕】

 恕「じょ」とは、他人を思いやることです。恕を表す諺に「己の欲せざるところは、人に施すなかれ」というものがあります。意味は、自分がされたくないことは、他人にもしてはならないということです。他者を思いやるには、他者も同じ人間として認めなくてはなりません。寛大な心で許しあい、自分と同じように大切にすべきです。仁は、この恕と忠によって完成します。 

 【忠信】 

 忠実で思いやりがあることを「忠恕」といいます。「忠」とは、偽りのない純粋な真心のことであり、一般の友人関係においては、真心を込めて誠意を尽くすことです。誠実で、他者を欺いたり、騙さないことが「信」であり、忠とあわせて忠信と言います。 

 【克己】 

  しかし、仁を身につけることは、容易なことではありません。それを身につけるには、常に努力する必要があるからです。欲望に打ち勝って、自分を抑えることを「克己」といいます。社会の秩序は、個人がそれぞれ好き勝手にやっていたのでは、成り立たちません。社会の秩序を維持するためには、自分を抑え、社会の規範に従う必要があります。この人間が従うべき社会規範が「礼」です。おのれに克って礼にかえることを、「克己復礼」と言います。 

 【礼】

  孔子は、外面的な礼と、内面の仁を結びつけて、社会秩序を再建しようとしました。礼は、人間の外面的な行為を統制する形式的な規範です。伝統的な礼の秩序が失われると、下剋上が起こり、天下は乱れます。礼の由来は、神を敬うことであり、もともと祭礼や儀礼のことでした。それは、周王朝の周公旦が定めたとされています。孔子は、人間が守るべき人倫の道を、礼に見出し、その復活を求めました。

  礼は、氏族を結びつけ、個人の行動を統制し、社会集団を維持する働きをします。それは、社会秩序を保つために必要ですが、形式ばかりの礼にかなった行動になってしまいがちです。そのため、内面の仁と外面の礼を兼ね備えた人間が理想とされます。仁と礼を備えれば、他者を敬う態度やふるまいが自然と出来るはずです。


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