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地蔵菩薩について

【地蔵菩薩】
 地蔵菩薩は、サンスクリット語で、クシティガルバと言います。クシティが「大地」で、ガルバが「胎、子宮」という意味です。続けると「大地の蔵」や「大地の母胎」となります。日本の仏像で、最も数が多いのが地蔵菩薩です。地蔵菩薩には「僧形」と「女神形」があります。
 僧形の場合は、子供のような僧侶の姿です。この時、特に装身品は身につけていません。剃髪に、衲衣「のうえ」と呼ばれる袈裟を着ています。そのポーズは、与願印に結跏趺坐です。地蔵菩薩の眉間には、白毫「びゃくごう」と呼ばれる長い毛がありました。そこから、光を放ち、世界を照らすとされています。この白毫は、如来や菩薩にはありますが、明王や天部にはありません。
 地蔵菩薩が、右手に持つものは錫杖です。錫杖は「悪」や「煩悩」を除き、菩提心を起こさせるものとされています。菩提心とは、悟りを求める心のことです。地蔵菩薩の錫杖には、六つの輪がついていました。それは、六道を巡礼することを意味しています。左に持つものは、如意宝珠をつけた蓮華です。如意宝珠とは、願いを叶えてくれる珠のことで、仏教の教えの象徴とされています。

【プリティヴィー】
 女神形の場合、インドの地母神プリティヴィーが、モデルとされています。プリティヴィーとは「広き者」という意味です。大地の恵みを擬人化した女神とされています。仏教では、地天と呼ばれました。それが、地蔵菩薩の起源になったとされています。プリティヴィーは、慈悲深い女神でした。大地が、万物を育成するように、人々の良い心を増長させると言われています。地上のあらゆる生命を、慈悲の心で育て、繁栄させました。地蔵とは「地」と「蔵」の合成語とされています。「地」は、大地のことです。そこに種子を撒けば、植物などが育成します。「蔵」は、生命が大地に内在していることを意味していました。

【六地蔵】
 釈迦が死んで、弥勒菩薩が、出現するまでの間、現世には、仏がいなくなるとされています。その期間、六道の人々を救ったのが地蔵菩薩です。六道とは「地獄」「餓鬼」「畜生」「阿修羅」「人間」「天」という生死を繰り返す六つの迷いの世界のことです。その六道全てに、地蔵菩薩の功徳力がおよぶとされています。地蔵菩薩は、地獄に落ちた人々をも救おうとする慈悲深い仏です。そこで苦しむ人々を救うために誓願を立てました。地蔵菩薩は、姿を変えることが出来ます。六道ごとに姿を変えながら、人々の代わりに苦しみを受けました。それを表すのが、6体の地蔵「六地蔵」です。

【地獄の菩薩】
 親より先に死んだ子供は、賽の河原で、獄卒「地獄の番人」に責められるとされています。その子供たちを救うのが地蔵菩薩です。そのことから、地蔵菩薩は、子供の守護仏とされました。地蔵菩薩は、常に弱い者ものを救済する仏です。そのため、庶民に親しまれました。また「笠地蔵」や「地蔵浄土」などの昔話にもよく登場するため、人々に身近な存在でもあります。中国では、道教の10王思想と結びつき、閻魔大王と同一視されました。地蔵菩薩は、公平に死者を裁くことが出来るとされています。そこから「地獄の菩薩」と呼ばれました。

【道祖神】
 地蔵菩薩には、道祖神としての一面もありました。そのため、旅の安全を守る守護神として、道端でよく見かけます。また、村の境界線に立っているのは、結界としての役割があったからです。交通手段が、まだ発達していなかった時代、疫病の流行は、局地的なものにすぎませんでした。感染を広める人々の移動があまりなかったからです。流行り病などを持ち込むは、村の外からやってくる、旅回りの芸人などでした。その病を防ぐのが道祖神の役割です。道祖神は「塞の神」とも呼ばれています。その塞の神が訛って「せいのかみ」となり、性器をかたどった姿で表されるようになりました。


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