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北欧神話のスルト


【ムスペルヘイム】  

 スルトは、炎の国ムスペルヘイムの入り口に立つ番人であり、守護者です。ムスペルヘイムは、世界の南にあり、世界が作られる以前から存在していました。そのため、スルトは、原初の巨人ユミルより古い世代に属しています。ムスペルヘイムの住人は、炎の巨人ムスペルです。スルトは、ムスペルたちを支配する王でした。ムスペルヘイムは、灼熱の国です。あまりの暑さなので、ムスペル以外は暮らせないとされます。この国の炎によって、太陽、月、星は作られました。 

 【炎の巨人】 

  スルトは、火山の噴火や溶岩を神格化した巨人です。そのため、全身に炎をまとい黒ずんだ姿をしています。スルト自身が、世界を破滅させる大火災として、終末の日ラグナロックの象徴でした。巨人とは、自然の原初的な創造力の象徴です。それは、世界の基本的な構成要素でした。神々と巨人族の対立は、人間的な神「秩序」と野蛮な巨人「混沌」の戦いです。北欧神話において、幾度も神々と巨人は戦ったり、関わったりしています。しかし、スルトは、他の巨人とは異なり神々とは絡みませんでした。 

 【レーヴァテイン】 

  スルトは、レーヴァテインと呼ばれる炎の剣を持っていました。レーヴァテインの別名は「枝の破滅」です。これは、世界を焼き尽くすことが出来る究極の武器でした。レーヴァテインは、太陽を超える光を発し、絶えず火の雨が降っていたとされます。普段は、妻のシンモラがレーギャンという箱に9つの鍵をかけて保管していました。 

 【ラグナロック】 

  光の神バルドルが死に、太陽の光が弱くなり、極寒の冬が続きました。その上、狼が太陽を飲み込み、世界が闇に包まれてしまいます。光の力が弱まり、封印していた悪の巨人たちの拘束が解かれてしまいました。巨人たちは、神々へ報復するため、神々の国アースガルドに進行します。スルトも炎の巨人ムスペルの軍勢と共に死者の爪で作った船「ナグルファル」に乗り込み、南から進軍しました。それを見た神々の見張り番であるヘイムダルは、警告のため角笛ギャラルホルンを吹きます。こうして、神々と巨人は、ヴィーグリーズの野で合戦をすることになりました。これが、神々の死と滅亡の運命であるラグナロックのはじまりです。 

 【フレイと戦う】 

  スルトは、豊穣の神フレイと一騎討ちをし、これを討ち果たします。フレイは、一人で巨人と戦う「勝利の剣」を持っていましたが、従者スキールニルに譲ってしまったので、雄鹿の角で戦っていました。フレイは、勝利の剣がないことが災いして、敗れたとされます。スルトは、ラグナロックにおいて、最後まで生き残り、地上に炎を放ち全てを焼き尽しました。その後、自ら放った炎に飲まれたのか、どこかに姿を消したとされます。 

 【世界の再生】 

  ラグナロックによって、九つの世界が海中に没し、世界は滅亡しました。長く静寂の時が流れましたが、やがて海に沈んでいた大地が再び浮かび上がります。ラグナロックの破滅からも、オーディンの子ヴィーザルとヴァーリ、トールの子モージとマグニは、生き残っていました。また、光の神バルドルと弟のヘズは、死者の国から復活します。そして彼らは、新たな時代の神となりました。



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