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「大日如来」について

【大日如来】
 大日如来は、別名を盧舎那仏「るしゃなぶつ」と言います。サンスクリット語では「ヴァイローチャナ」です。初期の仏教では「転輪聖王」とされました。転輪聖王とは、理想的な王のことです。また、大日如来は、アスラ「アシュラ」の王とされています。アスラとは、ペルシャのゾロアスター教では神々のことです。そのため、大日如来は、ゾロアスター教の最高神アフラ•マズダーと同一視されました。アフラ•マズダーは、光明神とされています。光明神は、光り輝くものとして、太陽神でもありました。「大日」とは「偉大な太陽」という意味です。大日如来は、もともと、あまねく一切を照らす「太陽光」のことだったとされています。太陽光は、知恵「仏の力」の象徴です。大日如来が日本に入ってきて、神仏習合で、太陽神のアマテラスと同一視されました。

 通常、如来は、簡素な姿をしています。それは、悟りを開いた者には、物欲がないことを表現するためです。しかし、大日如来は、如来としては珍しく、宝冠などのアクセサリーをつけています。装飾品をつけることで、仏の王であることを表していました。日本で有名な大日如来像と言えば、奈良の大仏です。

【法界身】
 大日如来は、汎神的な仏です。「宇宙そのもの」を象徴する根源的な仏とされています。大日如来は、宇宙の真理を仏格化した絶対的な存在です。そのため「法界身」と呼ばれています。「法界」とは、大宇宙のことです。大日如来は、宇宙の中心にいる不動の存在とされます。それを表現するために、座った姿で描かれました。大日如来は、仏を含む全てのものを包括している存在です。そのため、究極の仏でありながら人々のうちにも内在しています。また、全ての生き物は、大日如来から生まれるとされるので「万物の慈母」と呼ばれました。

【四種の化身】
 大日如来は「過去」「未来」「現在」の三世にわたり、姿を変えながら、あらゆるところに現れる仏です。その変身を「四種の化身」と言います。四種の化身とは「法身」「報身」「応身」「化身」の四つです。永遠の真理としての仏には、色も形もないので、人間には認識出来きません。それを「法身」と言います。それを、人間にも認識出来るように、いろいろな姿をとって現れたのが「報身」です。その現れ方は、相手に応じるので「応身」と言います。例えば、地上に現れた人間としての釈迦などです。時には、人間以外のものにも変身しました。それを「化身」と言います。

【密教】
 大日如来は、密教において篤く信仰されています。密教とは、インド仏教の一つです。日本では、真言宗を開いた空海によって移入されました。真言密教では、大日如来を本尊としています。高野山金剛峯寺が、真言宗の総本山です。通常、全ての仏は、阿弥陀如来の極楽浄土から出たとされています。大日如来も、阿弥陀如来の教えによって悟りを開いた1人です。しかし、密教の解釈では「阿弥陀如来」や「薬師如来」なども、大日如来が変身したものだとされています。 また、大日如来は「阿字」という文字で表されました。仏教では、万物は、不生不滅のものだとされています。それを表すのが阿字です。阿字は、事物の始まりや根源を意味するとされ、空の象徴だとされています。

【曼荼羅】
 空海は、密教の教えは、言葉で伝えるのが難しいので、絵で学んだ方がよいとしました。そこで描かれたのが「曼荼羅」です。曼荼羅は、宇宙の真理を表現しています。その名前の由来は「本質を有するもの」です。曼荼羅は、欠けることのない円として描かれます。円は、始めも終わりもない永遠の時間の象徴でした。円の内部は、浄土世界における、諸仏の位置を表しています。曼荼羅は「金剛界」と「胎蔵界」の二つの世界で一つです。金剛界と胎蔵界には、それぞれ大日如来がおり、2人揃って密教の教えの世界を表現しています。金剛界は、知の曼荼羅です。行為によって、真理に至る過程を表しています。胎蔵界は、理の曼荼羅です。悟りにいたる過程と、それを導く仏の慈悲を表しています。胎蔵とは、母胎のことです。


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