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複雑なものを複雑なままに表現する(さよならテレビ)

ポレポレ東中野で再上映された映画「さよならテレビ」と、圡方宏史監督・阿武野勝彦プロデューサーによるオンライン舞台挨拶を観に行きました。

メディアの役割とKPI(=視聴率)のずれ

映画を観ていて、メディアの役割と組織や個人が追いかけるKPI(=視聴率)のずれの大きさが気になりました。

作品中、メディアの役割は繰り返し表現されていました。

①事件事故などの情報を伝えること 
②弱者を守ること
③権力を監視すること

そして、組織・個人が追いかけるべき重要な指標の一つが視聴率です。視聴率が高いのは、珍しい動物の番組や美味しそうな食べ物の番組のようでした。

本質的なメディアの役割である「事件事故などの情報を伝えること、弱者を守ること、権力を監視すること」を追求したからといって、必ずしも視聴率は上がらないことが容易に想像できました。

舞台挨拶において、「視聴率はメディアの収入源に大きく関わるし、どれだけの人に番組を届けられたかを測るという意味でも重要な指標だ」という言葉があり、視聴率の大切さは感じました。

しかし、今、インターネットの普及により、動画配信やブログ、SNSなど多様なメディアが登場して、メディアを取り巻く環境が大きく変化している中で、本来のメディアの役割を果たすためには、組織の在り方・評価指標の再設定・手段の変更を考える必要があるのかなと強く感じました。

メディアの在り方が大きく変化している中で、わたしはメディアを選ぶことと選んだメディアを応援することが大切だと感じました。

まずは、信頼できる番組、信頼できる製作者を選ぶこと。社会課題に本気で向き合って、変化を起こそうと発信している人を探すこと。それは、テレビやラジオ、新聞、映画など昔からのメディアの場合もあるし、SNSを活用した個人による発信の場合もあると思います。そして、多数あるメディアの中で、権力を監視して弱者を守るメディアを観たり、お金を払ったりすることで、メディアを支えていくことも大事だと感じました。

今回、さよならテレビの上映を行っていた「ポレポレ東中野」も、大切にしたいメディアの一つだと思い、気になる映画をこれからも観に行きたいなと思いました。

わかりやすく白黒はっきりさせないこと

上映後の舞台挨拶にて、わかりやすく白黒はっきりさせない表現も大切なのかもしれないと、なんとなく感じました。

この映画で何を伝えたいのか、カメラやマイクがある状況で撮影した作品はどこまでが現実なのか。

そういった議論の中で、「○○を伝えたくて○○を作りました」とわかりやすく言えるほど、世の中シンプルではないし、この映画で伝えたいことが何かはわからなくても、映画を観たことで感情が動き、考えさせられるということはすごいことだと感じました。

同時に、わたしは普段なにか文章を書く際に、あまりにもシンプルさやわかりやすさを追求しすぎていると気が付きました。シンプルに表現しない面白さ、シンプルに表現できないことを表現する大切さ、シンプルではないからこそ、人の心を動かす表現の価値があるのかなと感じました。

これから、仕事や趣味で文章を書く際に、複雑な感情・複雑なメッセージを整理しすぎずに、複雑なものを複雑なままに表現して、いつか誰かの心を動かし、誰かの支えになったり、ほんの少し自分の周りを良くしたりすることが出来れば嬉しいなと思います。