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Paradigm Paradox ネタバレ感想

Paradigm Paradox ネタバレ感想(辛口)

※ネタバレしまっくていますのであしからず

この作品は夏生さん原画ということで気になった作品でした。乙女ゲームでこういったシンプルで可愛いイラストってあまりないですよね。ビジュアルに関してはそこまで拘りがないのでシナリオが良かったら問題ないんですが、今回はビジュアルから入った珍しいパターンの作品です。
夏生さん原画なだけありスチルや立ち絵で不安になるようなことはなく、魅力あるキャラクターの表情がたくさん見れたと思います。攻略人数が多いので1人あたりのスチルは少なめでしたね。

話についてですが、乙女ゲーでは珍しい設定であるTSものがどう作用していくのか楽しみにしていました。これに関してはまず、女体化している時が可愛い!ですね。このままギャルゲになって攻略したいくらいには魅力的なキャラでしたね。乙女ゲの感想でこれはどうかと思いますが、女の子可愛かったです…。特にカムイに関しては女体化したセナの方が好きですねwツンデレお嬢様設定良いですよね…。
TSものですが、これはスパイス程度で恋愛過程では男の姿、主人公の認識としても攻略キャラは男性として話が進んでいくのでそこまで話に絡んでこなかった印象です。
設定で良いなと思った箇所は恋をすると能力が使えなくなってしまうという点ですね。主人公は特殊体質の為、これに該当しないというのも良かったです。これにより、攻略対象はほぼ、自分だけが能力が消えたから両想いではないと不安になるシーンがあるのですが、この一方通行感が良かったです。

全体的な感想というか評価としては奇抜な設定と若手声優を前面に宣伝されていた作品だったのでプレイ前は不安があったのですが、一定の水準にはある作品なのかな、と感じました。制作側の意欲を感じられる作品だったと思います。
ただ、個人的には惜しいというか、主人公が合わなかったですね。うーん、たぶん合わなかったんだろうな…。とても良い子で自分できちんと動く子なんですが、綺麗事に聞こえてしまうシーンが多々あったのと、理想を押し付けるわりには向こう見ずで考えが足りないと感じる箇所が多かったですね。攻略キャラは何かしらに大きな負の感情を抱いていたり、復讐心に生かされていたり、寂しさを抱えていたりとそれなりに壮絶な過去を背負っているキャラばかりですが、そんな彼らのトラウマを聞いて諭して理想を語って寄り添って、時には自分を犠牲にして攻略キャラを助ける聖人のような主人公なんですね。そこは良いのですが主人公がそこまでする心理描写がすっぽりと抜け落ちているのでなんというか、とてもとても綺麗な心の持ち主で、まさに正義のようで主人公に人間味を感じなかったですね。そして、結構なトラウマを主人公の理想論で考えを変えてしまう攻略キャラクターにも納得できない部分がありました。君のどうしようもない負の気持ちはそんなことで変わってしまうの?と疑問に思ってしまいました。これは私が乙女ゲーに求めているものが主人公と攻略キャラの心理的に殴り合う恋愛をしてほしいという特殊なあれが原因なので、このゲームが悪いわけではなく、ただ単に合わなかったんだと思います。

キャラ別感想
【高遠トキオ】
トキオルートは微糖も微糖と言われるこの作品の中で糖度が高かったルートでしたね。相手の気持ちを理解して人間味が徐々に垣間見えてくるトキオの変化が微笑ましかったです。恋を受け入れて進んでいくトキオはすごく好感が持てました。しっかり自分を持っていたキャラクターでした。

【栖原カムイ】
自己犠牲が過ぎる彼はルート中とても不安定でしたよね。そこまで体を張って自分を酷使する姿は痛々しかったですが、そこまでするわりに心理描写があっさり気味だったので、あまり入り込めないルートでした。おじいさんとの関係性はぐっときましたね。

【新記ミハヤ】
ミハヤくんは気持ちを言葉と態度に比較的表してくれるというか、表れていたのでその点で恋愛成分が少し多めに感じるルートだったと思います。自分の考えをしっかり持っていく子で良かったですね。

【間宮アユム】
このルートというか間宮アユム、いろいろとてんこ盛りなキャラクターでしたねwシスコンに猫かぶりで口が悪くてトキオと並ぶ糖度高めのルートという全部サビみたいなキャラクターでしたw濃いw「忌々しい」「粗野」「愚か」「ぞっとする」序盤は悪口のオンパレードでしたね。それに対して主人公も「あなたには敬意を払う必要はない」「ムカついた」と感情を露わにします。アユムルートの主人公は結構好きでした。この序盤の露骨に嫌悪感をぶつけ合う関係から徐々にデレていくふり幅が良かったですね。うん、濃いルートでしたw

【伊吹】
攻略制限がかかっている「悪」側のリーダー的存在のキャラクターなので、必然的に期待値が高くなりますよね。伊吹自体はつかみどころがない飄々としたタイプの好みのキャラクターですね。キャラが好きなだけにシナリオがこれまたあっさりで拍子抜けというか、もっとスパイスが欲しかったですね。主人公と和解する過程が薄いというかやっぱり心理描写があっさりなのが気になりました。物語の主軸となるルートなので余計にそう感じたのかもしれません。

【冨司リョウ】
彼は真相に近いキャラクターであり、実はシータの外のスパイという誰とも異なる立ち位置の人だったわけですが。いや、そんなあっさりシータ側について大丈夫なんですかね?と心配になってしまいました。そんなに外の世界の労働がブラックなのかと思ってしまうくらいシータ側についた変化があまりにも早くていまいち入り込めなかったルートですね。
どのルートでも言えるんですが本当にあっさりなのでおいてけぼり感が強くてですね…。

【日向】
日向ルートはなんだか納得できない箇所が多かったですwトラウマを主人公が指摘して日向が暴走→主人公が止めに入ってあっさり落ち着く→主人公が地雷を踏んで日向が暴走→主人公がまたまた説得し落ち着く。この繰り返しに日向の極端さと主人公の考えなしな言動に面白くなってしまったルートでしたw彼は正義ルートで研究者側に囚われて発狂するシーンがすごく良かったですね。彼の心の鋭利な部分がありありと感じられて良かったです。日向にとっては辛すぎるシーンですが。

【雪波】
雪波ルートが1番好きでした。キャラクターも雪波が1番かもしれません。雪波は最初から最後まで純粋でまっすぐなキャラクターでしたね。害獣も生活をする環境があることに驚く主人公に対して「普通に暮らしてちゃ悪い?ボクたちのこと、バカにしてる?」と返したこの雪波の言葉がすきです。自分の置かれた環境で与えられたものを素直に受け取り、素直に返す雪波の純粋さと残酷さが良いバランスだったと思います。あとは雪波の会話の中での返しがツボでした。主人公が初めてシータの外に出てこの世界に関して何も知らなかった事に対し戸惑うシーンで「本当に右も左もわからなくて…」「えっ、ウソ!右と左もわからないの?」と純粋に返す雪波が面白く、そして可愛くて何気ない会話ですがとても好きなやり取りです。彼にはこれから愛情をたくさん感じて生きてほしいですね。


この作品、大団円もあるのですが、大団円が1番好きだった気がします。キャラも大団円の方がらしくて好きですね。正義と悪で対立するのではなく、新たな共通の大きな敵を前に共闘するこの大団円がこの作品としてすっぽり収まった納得できる物語でした。大団円が1番好きになるという珍しい経験が出来た作品でした。奇抜な設定でしたが、設定が良いスパイスとなった意欲作だったと思います。


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