【MTG】黒歴史商品列伝

 こんにちは、はじめましての人ははじめまして。Twitterから記事を開いてくれた人はこんにちは、らすねーるです。

 皆さん、マジック・ザ・ギャザリングは好きですか? 僕の方は、最近スタンをやる気力が無くて新セット待ちになっていますが、大好きです。テーロス還魂記、楽しみですよね。

 特に、死の国から命を喪いし者が蘇ってくるギミック「脱出」はフレーバー的にも素晴らしく、構築的にも見どころのあるカードが多そうでワクワクしています。そして、ドミナリアから再登場の「英雄譚」。エンチャント推しかつ、歴史ある次元を深めるギミックとして、これ以上素晴らしいものはありません。見事なチョイスと言えるでしょう。

「死者」、そして「歴史」。

 というわけで、それに合わせて今回はMTGの「歴史」における「死んだ」サプリメント商品達を、記録的な意味で紹介していこうと思います。失敗がMTGをより良くするものであると、マローも言っているのです。メメント・モリ。

 なお、自分は旧イニストラードからのPWなため、それ以前の商品に関しては伝聞やログで見知った部分があるので「当時やってたけど、これはそこまで失敗じゃなかったよ」って人が居たらごめんなさい。それでは、マジックそのものの「英雄譚」を振り返っていきましょう。

  Global Series: Jiang Yanggu & Mu Yanling

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 MTGのサプリメント商品に於ける"最新の"失敗と言えばこの商品。現在のスタンダードにジアンとヤンリンがいることからご存知の方も多いでしょう。「MTG Arenaのおかげで中国圏から注目されてるな。よし、そのために導入用の商品を作ろう。それならば、馴染みやすいように新たな中国風の次元を作り、そこに関わりのあるプレインズウォーカーも新しく登場させよう」という思惑のもと生まれた初心者向け対戦キットです。

 実際、失敗した商品とは言ってますが、このセットの雰囲気はめちゃくちゃ良いです。MTGナイズされた中国風の生き物、アジアンテイストかつ幻想的なイラストの土地、"いかにも"な雰囲気を漂わせる2人のプレインズウォーカー。これらは「中国風のMTGのセット」としてはほぼ文句のない出来だと思います。

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 問題は、雰囲気以外の全てでした。「初心者向け」といえば聞こえは良いものの、入っているカードがとにかく弱い。この2つのデッキだけで戦う分にはなんとか楽しめるでしょうが、どちらかが最新のパックを3つほど買って色の合うカードを足すだけで、そのパワーバランスが一瞬にして崩壊してしまう……と言えば言いすぎかもしれませんが、それほどまでに弱い。実際のゲームに参戦するには土地以外のあらゆるカードが採用するに値しない。それがこのセットの全てです。

 ただ、これには理由があり……このセットはざっくり言うと「中国以外の地域ではスタンダードで使えない」という前代未聞の制限が掛けられていたのです。そのため、このデッキにもし少しでも有用であるカードが含まれていた場合、中国とそれ以外で異なるメタゲームが生まれてしまうことになります。マジックというゲームは皆さんの想像以上に複雑怪奇で、ぱっと見では採用に値しないコモンのカードが、その特異性を買われて採用されたり、特定のカードの「5枚め以降」として採用されることがしばしば発生します。それ故に、このデッキのカードは「どこに出しても問題ない」ぐらい弱くされる必要があったのです。

 後に公式のコラムでこのセットの事が振り返られた時、「もし、次やるならばスタンダードで使えないセットにする。それならば、コレクター向けの魅力的な再録をすることも可能だっただろう」と語っています。いつか日本限定のサムライと忍者のデッキが出ると……いいなあ。

 チャレンジ・デッキ

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 「ああ、チャレンジャーデッキね。あれのどこが失敗?」って思った皆さん。違います。チャレンジ・デッキです。

 このセットの事を語る前に、初代「テーロス」ブロックの発売時に、ウィザーズの行った実店舗でのキャンペーン「英雄の道」について語ります。この頃のウィザーズは、実店舗におけるイベント性を重視しており、様々なキャンペーンを行っていました。プレリリースの際にカードと共に謎の実績シートを渡され、突然セリフを言わされたりしそうになって困惑した経験の有る方は多いのでは無いでしょうか?(いや、嘘と思われるかもしれないんですけどマジであったんですよ。特にRTRブロックのプレリはやばかった。グルールとか)。他には、SteamでMTGのゲームを購入すると実店舗でプロモカードがもらえる、なんてのもありましたね。僕はこれで当時緑の必須カードだった漁る軟泥を2枚ほど貰った記憶があります。

 さて、そこまでは単発的かつ散発的なものが多かったのですが、英雄と怪物の次元のセットを出すに当たり、ウィザーズはブロックを通じた大々的なキャンペーンを行うことにしました。それが英雄の道です。ざっくり言うと、プレリリースに参加するごとに「クエスト」が貰え、それを達成するごとに景品として英雄カードが手に入り、その英雄カードにはちょっとしたプレインズウォーカーポイントがついており……という、言っちゃなんですが「日本でいい大人が体験するのは絶対ムリだろそれ」と突っ込みたくなるほどの壮大なものでした。そして、そのクエストの中の怪物退治の体験のために生まれたデッキ……これが、表題のチャレンジ・デッキとなります。

 で、これなんですが、まあ売れませんでした。そりゃそうですね。なんせ中身が本当にこの特殊ルール専用の「怪物カード」しか入っておらず、マジック・ザ・ギャザリングのゲームで使えるカードは1枚も入っていません。地元のカードショップでは、マジック・オリジンが出たあたりでも売れておらず、MTGの棚の隅の方で延々とホコリを被っておりました。もしかしたら今もあったりするのかも……。

Premium Foil Booster Pack:Shards of Alara Block


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 残り2つは「リアルタイムで見たわけではないけど、以降音沙汰が無いから売れなかったんだろうなあ……と思っているもの」です。違ったらごめんなさい(二回目)。

 このプレミアムフォイルブースター、全部のカードがFoil仕様でかつ箱も豪華なんですが、なんと通常のパックの4つ分、1500円します。(この頃は1パック440円だったのだ)。しかも、封入は通常のパックと同じでレア1枚。神話レアの封入率も普通のパックと同じ1/8。その上さらにアラーラの断片ブロック全カードからのため狙ったカードを出すのはほぼ不可能……と、流石に「コレクター向け」と言ってもやりすぎだったんじゃないかと思います。

 ちなみに、リアルタイムで見たわけではないけどというのは半分嘘で、僕は小学生ぐらいの頃に地元のショップでずっと売れ残ってました。当時は遊戯王しかやってなかったけど……。

Duels of the Planeswalkers Decks

ダウンロード

 さて、最後にだいぶマイナーな一品を紹介して終わろうと思います。MTG Arenaの前身となったデジタル版ゲームのDuels of the Planeswalkers、その初代のリリースと共に作られた5つの構築済みデッキです。

 このセット、実は「旗印」や「ロクソドンの戦鎚」、「苦悩火」など当時の人気カードがそこそこ封入されており、言うほど「失敗」とは言えないものではあります。オリジナルのエキスパンションシンボルもあり、コレクター人気は今でも結構あります、何が問題だったかと言いますと「ゲームのデッキを再現!」と言いつつ全くレシピが違う上に、スタンダードで使うことの出来ないいわゆる「カジュアル層」向けのデッキだった事で競技プレイヤーからはそっぽを向かれてしまったことです。最初に挙げたグローバルシリーズの大先輩と言えるのかもしれません。昔からウィザーズの入門編商品はそういうところがあります。

 まとめ

  以上、自分の見聞きしたMTG黒歴史商品の話でした。マジックを長年触っている人でも知らなかったり、忘れたりしていたものがあったのではないでしょうか?今回は、僕の観測範囲の関係で新枠以降のセットになりましたが、昔のアンソロジーや金枠デッキのセットなんかも、今では価値がありますが当時は結構疑問符がついた……みたいな事を良く聞きますし、いつか当時を知る人に話を聞いてまとめてみたいなと思っています。少々性格の悪い楽しみ方ではありますが、いつだって失敗の話は心の後ろ暗い部分をくすぐってくれる楽しいものです。

 だけど一方で、これらの失敗が今のウィザーズを作っている部分もあると思うのです。

 プレミアムフォイルブースターは失敗でしたが、Foilや特殊仕様のカードを集めたい人向けのブースターとして、エルドレインからは「コレクターブースター」が発売されています。

 チャレンジ・デッキは失敗でしたが、「MTGを使いつつ別のゲーム」という観点からは「Explorer of Ixalan」が発売されました(これが人気は一旦置いておき)。

 Duels of the Planeswalkers Decksは不人気でしたが、初心者に顔役のプレインズウォーカーを紹介しつつゲームに参入してもらう定番商品として「プレインズウォーカーデッキ」が作られてきました。

 そして、グローバルシリーズは失敗でしたが、そこで生まれたジアンやムー・ヤンリンは今のスタンダードでカードとして使われています。

 僕は、ウィザーズの強みはこの「失敗に対する寛容さ」だと思っています。2019年はデベロップ面での不安が多い年でしたが、それを生かして2020年以降のマジックがより素晴らしいものになることを願っています。

 それでは、ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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