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知行合一(ちこうごういつ)雑感

陽明学の命題の一つで、朱子学でいう「知先行後」(万物の理を極めてから実践に向かう)に対し、知と行動は不可分であることを説いたものだとされています。ただ、これに「良知」(人間に先天的に備わっている善悪・是非の判断能力)崇拝を絡めて、「思ったことは断固実行すべし」という理解も、少なからずあるようです。

しかし個人的に、こうした理解はちょっと性急に過ぎるのではないかという気がしています。むしろ、「何事もやってみなけりゃわからない」。つまり、行動に移してみて、初めてフィードバックされる知の存在を考慮せよ、ということではないかと感じられるのです。

何を言わんとしようとしているのか。いわゆる「PDCAサイクル」、つまりPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の繰り返しによる、ビジネスの現場でよく耳にされる様々な改善手法(手順?)に当てはめて整理してみましょう。

「良知」×「知行合一」系の方々は、「PDCAサイクル」に例えると、PlanとDoだけで完結してしまっているように思えるのです。しかしこれはいかにも危うい。ここはやはり、Doをフィジビリティスタディ(feasibility study)としてのDoがまずあって、そこから得られた新たな知(=Check)を加味した上での、文字通りのActionであるべきではないか、そう思われたならないのです。

ちなみに、この類の話で、よく引き合いに出される「先行其言而後従之」(『論語』為政第二)もまた、同じような意味合いで捉えることができるようです。

なお、私自身は決して「PDCAサイクル」の信奉者ではありませんので、念のため。