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山の宗教性

日本人にとって、山は異界に通じる場所であったようです。神体山や神奈備といった言葉が表すように、そこに神の存在を感じ取ったり、その結果として山そのものが神格化されたと考えられてきたケースも少なくありません。
「崇」という字は、「宗」の上に「山」が乗っています。「宗」という文字自体に、御霊や祖先を祭るところという意味があるようですが、そこに「山」を乗せることで、畏敬の念が示されたということなのかもしれません。
山はまた、かつては死者の放棄地でもありました。単に人目に付きにくい、人里離れたところに捨てた、という考え方は、現代人のそれに過ぎないのかもしれません。むしろ、そこが異界に通じている場所だからこそ、山に遺棄したと考えるべきなのかもしれません。
多少趣は異なりますが、寺に山号があるのも、やはり山を特別な場所と見立てた思いがそうさせたのかもしれません。だからこそ、人里にあっても、敢えて「山」を名乗る。そうすることで、山の霊性を取り込んでいるとも考えられるのです。