おすすめ本紹介:食欲人〜科学者たちが語る食欲〜(原題:Eat Like the Animals)
本書の内容のメモ
・ヒヒや粘菌はマクロ栄養素を最適なバランスで摂取している
・バッタの実験→タンパク質の摂取量を満たすため、炭水化物の摂取過剰ないし過小が起こる
・食欲とは「満腹になるまで食べる」システムではなく、五つの栄養素に対して個別に働く欲求である。タンパク質、炭水化物、脂質、ナトリウム、カルシウム。これら五つが選ばれたのは、これら五つを満たすことで微量栄養素(ビタミン・ミネラル)の欲求も本来は満たせるはずだから。
・人間を対象に実験した結果、みんな最終的にタンパク質が全体の15%になるように食事をとった
・人間での実験において、主な余剰カロリーは甘いスイーツではなく、しょっぱい系のスナックだった。旨み(タンパク質)を感じる味付けが原因と推測される。
・タンパク質が高いと繁殖に有利となり、タンパク質が低ければ長寿になる。動物は繁殖を第一にするように出来ている。
・とある研究で「人間もカロリー制限すれば長寿」との結論が出たが、マクロ栄養素のそれぞれの役割などについて考察がなかった。ショウジョウバエを対象に研究したところ、カロリーにおけるタンパク質と炭水化物の比率において、タンパク質の比率が高ければ産卵数が増え(ただし高ければ高いほど産卵数が増える訳では無かった)、タンパク質の比率が低ければ長寿だった。
・疾患にかかった生物はタンパク質の摂取比率を増やした。タンパク質の役割は「ウイルスの除去」にあると推測される。
・超長寿地域、通称ブルーゾーンの人たちの食事は、タンパク質9%、炭水化物85%、脂質6%であるらしい。マウスの実験で、この摂取比率を保ったマウスは最も長生きしたとのこと。
・サルも人も、炭水化物と脂質を過剰に摂取してでもタンパク質を摂取する特徴がハッキリと見られた。
・現代の食事環境は、あまりに早く変わりすぎた。人間が本来持っているシステムをそのまま適用すると肥満になるようになっている。まず炭水化物の摂取は食物繊維の摂取を伴い、これにより満腹感が生じる。しかしりんごジュースは、りんごの繊維が失われており摂取しやすい。りんご四つを食べるのは大変だが、りんご四つぶんのジュースを飲むのは容易い。
・太っている人は余計にタンパク質を必要としている。タンパク質を分解する働きが起こっているとかなんとか。
本書のポイント
全体の流れとしては、まず食欲とはただ満腹になることを目指すものでは無いこと、タンパク質欲求が食欲を左右する大きな要因であること、低タンパク質だと摂取量が増え肥満体型になること多くの動物は食環境の変化に柔軟に対応してきているが、人間の文明は適応の速度をはるかに上回っており、考え無しに摂取していては肥満まっしぐらであること、健康的に生きるためには超加工食品を避けるなどの意識的な心がけが必要であること、また食品業界に反省を促すのは大変難しく非現実的であること。
本書の要約
・この科学的発見は、増量、減量のヒントになるのみならず、今後の人生でどのような食事を心がけるべきかを考える上で参考になる。
・食欲とは「満腹になることを求めるものであり、何を食べても同じ」だと思われることが多いが、それは誤りである。人間の食欲は主に五つの栄養素への欲で構成されている。それはタンパク質、炭水化物、脂質、ナトリウム(塩)、カルシウムの五つであり、とりわけ重要なのがタンパク質欲である。
・サル、バッタ、粘菌、ヒトといった生物を対象に実験を行った結果、これらの生き物は「欲しているタンパク質を摂取するまで食べ続ける」傾向が見られた。理想的なタンパク質摂取比率が15%だとして、与えられる食事のタンパク質の比率がこれより少ない場合、摂取量は増えるし、与えられる食事のタンパク質の比率がこれより多い場合、摂取量は減ったという。
・つまり高タンパク質な食事をすれば摂取する総カロリーは少なくなり、低タンパク質な食事をすれば摂取する総カロリーは増える。
・余談だが、タンパク質の比率によって「繁殖に強いが短命」「繁殖に強くないが長寿」が決まるという。人間の例で言えば、超長寿地域(ブルーゾーン)の一つである沖縄県の伝統的な食事では、炭水化物85%、タンパク質9%、脂質6%だったという(ちなみに最近はジャンクフードなどが増えてきたため長寿度が下がってきたらしい)。
・先程の実験の話で言えば、ヒトを含む多くの生き物は、(食べるものを自由に選べる環境であれば)タンパク質を適当な比率で摂取する傾向がハッキリと見られた。それなのに何故現代人に肥満の傾向が強く見られるのか、その理由について下記のように説明される。
①食べやすく加工される過程で繊維質が失われて食べやすくなりすぎたため、たくさん食べることが出来る。
②加工品の多くは低タンパク質の傾向にある。本書ではその理由を「タンパク質が少ない方が価格が抑えられるから」等と説明している。この結果、タンパク質の必要量を満たそうとして食べすぎる現象が起きる。
文献紹介
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