チンじゃない 2022年9月4日

最近のレンジはチンと鳴らないけど、全然いまだにレンチンとかチンするって言う。
これは長年使って染みついている表現だから変えられない。
でもこれが、自分が子どもの頃に親世代以上に抱いていた「なんでそう言うの?」という感覚を下の世代から抱かれるということなんだろうな。

ダイヤルを回すが電話をかけるシーンの描写であること、
チャンネルを回すがテレビのチャンネルを順番に変えるということ、
写真を枚と数える理由、
電話のマークが受話器または黒電話であること、
写メ、
もう全部下の世代からしてみたら元ネタ(語源)を知らないとよく分からない表現だろう。
たとえ今の30代が見て「生まれる前の表現じゃん」というものでも、小学生からしてみたら平成も昭和も大差なく、自分が生まれるずっと前の過去であることに変わりはない。

今はチンのかわりに短いメロディが鳴ったり、喋ったりするレンジがある。
ちなみにうちのレンジはピーと鳴る。
レンピー。
……ないな。語感が間抜けすぎる。

調理系の仕事やコンビニの仕事をしている日本語学習者なら、教科書で習わなくても絶対に「チンする」という言い回しを覚えないといけない。
なんなら一日目で覚えさせられる。
例え外国人や若い世代に「なんでチン?」と思われようと、チンと言う世代が労働環境にいる限り、覚えなきゃいけなかったり会話で使うことになるのだろう。たぶん。

日本語として正確な表現なら「(電子レンジで)温める」だし、これなら時代に関係なく一貫して使える。
でもチンのほうが音数が短いから、今後も私は言っちゃうだろうな。
あたためるて。5音節もあるのに。
チンに代わる短く言い表せる言葉が出てこない限り、ずっとチンだ。チン。


普段人とあまり喋らないので、頭の中は直近でより多くインプットした言語がぐるぐるしている。
頭の中のひとりごとや夢の中の言語が切り替わるスピードと境界が、年を取ればとるほど曖昧になっていくのだということを、身近なお年寄りの話から学んだ。
私もこうやってコツコツ学んだ母語以外の言語を、ボケたらきれいさっぱり忘れてしまうんだろうな。
分かっていても、そのときまではもっともっと知っている言葉と使える言葉を増やしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?