絵画の見方、感想と考察

 突然ですが、「絵画とイラストの違い」ってなんだかわかりますか?
高校生の時、美大を受験するにあたって、先生に質問しました。
先生の答えはこうでした。
「私が描きたい物を描くのが絵描き、人にお願いされて描くのがイラストレーターだよ」
矢印の方向が全く違うのがわかりますか?

 デザイナー就職1年目で「自分はこうしたいのに、もっとかっこいいデザインを作りたいのに!」と悩む人、多いのでは無いかと思います。
デザイナーはお医者さんであって、クライアントの悩みを解決してあげる役割だと気づくと、仕事が格段にしやすくなるし、モチベーションも上がりますよね。

 お客様の悩みを解決する、相談に乗るという意識は、どんな職業にも言えるのかもしれません。

 しかし、絵画、つまりアートは真逆です。誰かの意見に流されるのではなく、自分発信であり、私だけの表現を模索し、私はこんなことを考えました!と発表するお仕事ですよね。だから、人からの評価とか関係ないのです。そこに「大衆に気に入られるように、こうしよう」ではいけません。そしてその人の“自分の表現”に対して、良し悪しを批判するのは、違うんじゃなのかなと思うわけです。批判したところで作者としては「は?」なわけです。

 そう思うと、美術館に行って、上手く感想が言えないなぁ、、、という悩みは無くなりそうですよね。
 作者の目線に立って、何を伝えたいと思ったのか、なぜ描きたいと思ったのか?を感じ取ってみようと思うと、絵の見え方が全然違ってきます。
「『この葉っぱのくにゃくにゃした感じが面白い!』と思って描いたのではないか、と思った」。もし、その絵を変な絵だなぁと思ったとしたら「『作者はこの形が変で面白いでしょ。この変な形、描きたい!』って思ったのかな」と思っても良いかもしれません。

 さて、ここまでが感想ですね。ここからは考察、深掘り。
例えば、歴史背景を知ると、考察が加わります。
「あぁ、この時代は戦時中に入ったから、混沌とした気持ちを表現しているのかな。ひとつ前の作品を見てみよう」
「宗教的にみると、聖書のあのシーンをモチーフにしていて、これは兄弟か!だから手にあれを持っていて、裏の設定は逆だから、本当のメッセージはこうかもしれない」
「この時代の画材はこうだったから、貧しい作者はこういう表現になったのか」など、「よくわかんなかった〜(鼻ホジ)」からぐぐーーーんと、人生の楽しみが増えるのではないかと思います!

 なぜ、こんな記事を書こうか?と思ったかと言うと、Youtubeの「超徹底解説!」とか「考察しました!」ドドン。っていうサムネを見かけて、気になってクリックすると、ただの感想やん、、、という事が多いくて、なんだかなぁと思った次第であります。再生回数を稼ぐのが彼らのお仕事なので仕方がないのだけれど。下手すると、もはや自分の感想でもなくただのあらすじを言ってるだけのアニメ解説とかもありますよね笑。

 実は本日、新海誠監督の「すずめの戸締まり」を見に行き、たくさんたくさん思うところがあって、解説動画をいくつか見たのですが、ただの感想、なんならよくわからなかったという文句を言っている動画の方もいて、がっかりしたのです。
 アート作品を見て「よくわからない」という感想自体は存在しても良いと思うのですが、「私の知識不足により感じ取る事ができず申し訳ない」というのが正しい姿勢だと思うのです。「作り手がわかりづらく作っているのが罪だ。大衆にわかりやすくもっと説明するべきだ」とうスタンスの「よくわからない」という感想はナンセンスだと思うわけです。

 冒頭に述べたように、表現者は自分の作りたい物を作るわけです。なぜあなたにわかってもらう物を作らなければならないのか。表現は迎合してはいけません。映画は芸術であり、ドキュメンタリーや報道とは全く別物だということ(妙に作り手の感情にだけ偏ったドキュメンタリーや報道も存在するとは思いますが)。

 良し悪しではなく「何を伝えたかったのか?」「何を表現したかったのか」「そして自分は何を感じ、今後の人生にどう反映していくのか」という視点でアートを見ること。ジャッジの眼鏡は外して、肩の力を抜いたほうが人生楽しいかも!そんな事を思った1日でした。

 次回はすずめの戸締まり超超考察!嘘です笑。
でも、日本神話好きの視点と、娘を持つ母としての視点からの感想は書こうと思います。