8/28 佐野徹夜『さよなら世界の終わり』
プロ小説家・住野よる
浪人3年目の友達が最近、オンゲのボイスチャットでブチ切れたらしい。同じチームにいた高2が住野よるが好き、という話をしてきたので「住野よるはヒロインを殺さないと気持ち良くなれない病気だ!あいつが跋扈する世界を俺は許せない!!」と叫んだらしく、めちゃくちゃ面白かった。後ほど他の人たちに「高2だぞ……」と軽く引かれたらしいけど「俺は住野よるアンチなんだ!」と言って譲らなかったらしい。
そいつはミステリー小説のオタクなのだけど、青春ミステリーとそのファンが嫌いらしい(文句言いながら読みはする)。住野よるはペンネームの由来が「教室のすみっこにいるような子の夜に創造性があるはずだという意味」という奴だし、アンチも沸くかもしれない。でも、住野よるは自分の気持ち悪さというか痛々しさをある程度ブランディングしている小説家だと思っていて(Twitterやあとがきを読んでいても感じる。特に5作目の『青くて痛くて脆い』で、気持ち悪い男を客観的に書いていて改めて思った。)、そういう意味で本物は佐野徹夜だと思う。
知らない高校生の日記を読んだ、ような……。
佐野徹夜も住野よると同じくLoundlowが表紙を描いている系の作家なのだけど、彼の書いた『さよなら世界の終わり』という小説がかなりキツかった。デビュー前から書いていた原稿を商業用に整えた作品らしいのだけど、何作かヒットを飛ばすことが出来たから本当に書きたかったものが企画として通って世に出せるようになった、というタイプの作品なんだと思う。それだけに、作者に思い入れが強いし、あとがきから本文からそれは十分伝わってくるのだけど、それがあまりにキツかった。「生きづらさを抱えるすべての人へ」というキャッチコピーがついていたけど、「生きづらさを抱えたあの頃のぼくへ」という方が良いんじゃないか?と思ってしまった。
これは見当はずれな例えかもしれないけど、あるタイプのボカロの歌詞のような痛さがあった。中高生、確かに「生きづらさを抱えた」ような人に刺さる部分もあるのかもしれない。感想を漁っていたら、「腕を切りながら読んだ」とか書いている人がいたし。まぁ、あとがきの冒頭で「この本が遺書にするつもりで書きました」とかなんとか言ってる本なのだから当たり前かもしれない。それこそ遺書ではないが、私小説として出した方が物語としてのクォンリティも上がったんじゃないかと思う。シンプルに言えばファンタジー要素のある青春小説なのだが、ファンタジー要素が邪魔になっているのではないかという印象を受けた。結果的に「どこにでもいる人間の葛藤がぶつけられた破綻しかけつつも生々しい小説」としてある種特別な作品になっているとは思うので、嫌いってわけじゃないんだけど。
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