デスクワークできま宣言

先日、ちょうど一週間ほど前にインターンを始めた僕は、さっそく一週間の休暇を申し出たのでした。

そもそも、僕は「労働」というものに色々なモヤモヤを抱えています。そのモヤモヤからかはわかりませんが、僕は高校2年の時に図書室の先生に頼んで文庫版『資本論』を全10巻注文してもらい、1巻時点でその難解さから一切読むのをやめました。

詳しくは以下にいろいろと書き連ねてあるが、要するに僕は仕事が好きではないんです!特にデスクワークが。それが今回よくわかりました。

高校の文化祭とかでもっと中心になって働いていればこんなことにならなかったんですかね?
たしかクラス全員がケバブづくりに勤しんだ最後の文化祭で、僕がしたことと言えば最初に店名の案をだし、それが採用されて終わりとかだったはずです。

あとはキャベツを雑に切って怒られたり、教室と調理室を行き来しているうちにローファーを失くして帰れなくなったりしたくらいか……ほぼほぼ何もしていないではないか、あと何だっけ……ケバブに火が通っていなかったせいでやたら怒っている先生がいて、誰の責任だったかという押し付け合いに参加した覚えはあるな……。

まぁ、それはともかく。そんな「仕事」という事に真摯に向き合って来なかった僕も先日「インターン」を始めました。
これで俺も昼夜逆転無収入生活を脱却するのだ!と久々に電車に乗り、秋葉原まで面接にやってきた僕はなんと時間通りにビルにたどり着き、元気に入っていきます。オフィスは10階らしいです。

「こんにちは!面接を受けにきたものですが!」
「あら!なんだか頼りがいがありそうだね!さぞ社会経験豊富なんじゃないの?」
「ハハハ、自慢じゃ無いですが、面接を受ける側なんて久しぶりですね!最近は面接する側だったもんですから!」
「こりゃ良い人材が入ってきたねえ!あんたと仕事が出来るのを楽しみにしてるよ!」

エレベーターに乗っている間、オフィスに入った時のシミュレーションをしてみます。今年始まって以来の万能感に包まれた僕は、隣に立っている女性が同じ10階に行こうとしているのに最初気づきませんでした。すると向こうが突然喋り出します。

「あ、もしかして面接の方ですか?」
「……!?」

この瞬間、「えっ、まさかもう面接が始まっているのか!?俺は試されている??これは社会性と注意力の試験なのか?」と僕はパニックを起こしました。

そして次のように考えます。
①帰りたい
②まず挨拶をしよう。
③先に挨拶しなかった事で心証が悪くなったはずなのでそこをカバーするべく謝った方が良いのか?
④帰りたい
⑤変に謝罪しても相手が困惑する可能性があるので、ここは無難に「あぁはい」とでも答えておくべきか。
⑥あまり簡素な返答もどうかと思うし、多少なりとも会話した方が良いのか。
⑦しかし、このご時世あまり不用意な会話は避けるべきなのかもしれない。同時に、あまり媚を売っていると思われるのも悪印象な可能性がある。
⑧帰りたい

「あ、そうです面接で今日は、はい。よろしくお願いします〜」

僕は相手の額あたりを見ながら、そう答えました。

10階につき、その辺に座っててくださいと促された僕は3人の社員からの面接を受けることになります。

電車の中で考えた志望動機を話し、自分がこの会社で働く事になったらどのような記事を書いていきたいか(Webライター系のインターンでした。)、そしてこのwebメディアを社会でどんな位置付けにしていきたいかというインターンの語るべき野望を若干超えかけたビジョンを展開していく僕は頼もしく見えたのか、その場で即採用になりました。

(ちなみに僕は、その面接の中でこれがインターンだと言うことを知りました。てっきりバイトだと思っていたので。)

次の月曜日から勤務は始まりました。zoomで行ったどっかの社長へのインタビューに付き添い、その音声をひたすら書き起こしていきます。

「じゃあ、終わったら声かけてね!」
「はい!」

文字起こしくらい出来るでしょう、と思い適当な椅子に座り、僕の初インターンが始まります。

1日目

「…………」カタカタカタ
「…………(今なんて言った?聞き取れなかった)」マキモドシー カタカタカタ
「…………」カタカタカタカタカタカタ

2日目
「……………」カタカタカタ
「………?…」カタカタカタ
「………カタカタ」

「?どうかした?」
「あ、いや何でもないです。」

3日目
「……………」カタカタカタ
「……………」カタカタカタ
「……………」カタカタカタ

「帰ります!」
「お、お疲れ様〜」
「さよなら〜!」

そして、3日目の業務後。近くにある、高校時代通っていた塾の講師と会う約束をしていたので御茶ノ水の方へと走っていきました。誰かにこの心情を打ち明けたいと思ったのです。

「あの僕インターン始めたんですけどもう辞めたいんですよ。12:00〜16:00までずっと椅子に座ってないといけないんですよ。いやトイレとかは行けますけどね。でもそんな何度も行ってたらおかしいじゃ無いですか。そもそも僕って4時間も黙って座ってたことなんてないんですよ。普通あります?僕は無いですね。だからTOEICもセンター試験も途中退室ですよ。TOEICは120点ですよ。センター試験も2教科しか受けてないんですよ。」

──「受験生の時、日大に模試を受けに行って、途中で逃げ出して地下で寝てたことあったよね」

「そうなんですよ。あれはちょっとおかしかったですけど……帰れば良いと思うんですけど……あの皆が黙って座ってる空間って苦しいじゃないですか、ストレスが溜まるんですよ。だから僕受験もAOでしたしね。一応、その合格を取った上で2月に受験もしましたけど……それ1教科受験でしたしね。1教科受験最高ですよ。毎日1教科ずつ受けられるなら僕も受験くらいまともにやりましたよ。」

──「給料はいくら貰えるの?」

「全然貰えませんよ。とりあえず出勤したら1000円、あとは出来高制ですけど……でも4時間って座ってるにはあまりに長いですけど仕事するには短いじゃないですか。だから何も終わらないんですよ。僕タイピング遅いし。Excel使えないし。フォルダーからファイルをクリック&ドロップ?するのもこないだ覚えましたしね。だから僕8時間働いて3000円くらいしか儲かってないんですよ?これ搾取でしょう。高校の図書室に買ってもらった資本論を今こそ読み返すべきだと思いましたね。革命ですよ、革命。政府転覆です。全国の学生、労働者諸君に呼びかけましょう。かの堂々たる破廉恥漢ベンチャーブルジョワジー共の不当な弾圧に屈することなく、断固とした戦いを今こそうち固めていくべきですよ!!レーニンに倣えば、まさしく対インターン戦争を内乱に転化せよ、ってね!!!」

──「最近は何してるの?」

「朝まで起きて……鳩にパンあげたり……。あと、こないだスポンジの剣とか買いました」

──「何それ?」

「これです」

──「あぁ……あるよね、こういうの」

「剣道部でしたからね」


こんな感じで時間は緩やかに過ぎていきました。鳩と、脳内仮想対話(僕は暇な時とかに頭の中で会話します)以外のコミュニケーションを親とするのは久しぶりです。僕は親にはあまり心配をかけたくないので、特に困りごととかは話さない事が多いですし。僕に必要なのは人間とのコミュニケーションだったのかもしれませんね。

そうだ、会社の人ともコミュニケーションを取ってみよう!

「あ、お疲れ様です」
「はい、お疲れ様!今日やってくれた分もありがとね!内容問題なかったよ!」
「あ、そうですか!良かったです。ところでご相談なんですけど……」
「?なに?」
「来週実はテスト期間みたいな感じで、ちょっと忙しそうなんですよね。1週間お休みさせて頂けませんか?」
「そっかぁ、それはしょうがないね。了解!じゃあ一応その旨slackで共有しておいて!」
「わかりました!!!ありがとうございます!!!」

僕は軽やかな気持ちでその辺りを歩き出しました。この辺りはちょうど夏目漱石『こころ』の舞台となった場所、漱石も書生たちと語らいながらこの坂を下っていたに違いありません。
御茶ノ水駅前をちょっと神保町のほうに向かうと、明治大学のキャンパスがあります。ということは、その前の通りはかつて学生運動の時代、血気盛んな学生たちがピッケルで地面を叩き壊し、その破片を持って投石した道ではないですか。
今ではそんな面影は全くありません。全ては平和なのです。革命……政府転覆……ナンセンスと言わざるを得ません。権力を持つものも、そうでないものも、大事なのはお話しする事。コミュニケーションなのです。なんとなくふわふわした気持ちで中央線に乗ると、頭の中で意見がぶつかり合いだしました。

理性的な意見「ねぇ、これで良いの?こんなのただの現実逃避じゃない。1週間のうちに辞めるって言う?言えないわよね。だって皆良い人だもんね。期待してくれてるもんね。再来週、また辛い辛いと思いながら出勤し続けるの?」

感情的な意見「いや、そうは言ってももう休んじゃったし。そんな事言っても仕方ないじゃん。来週のうちに考えるよ。会社が消えるかもしれないし」

理性「消えるわけないでしょ。選択肢は2つ。やめるか、それかリモートワークにしてもらって、家で立ち歩きながら仕事するかよ」

感情「やめられないよ……言い出しにくいし。リモートワークも……そんな特別扱いされたら身がもたない。そもそも仕事自体が嫌なんだ、アイドルスタッフの仕事がどれほど楽しいかわかったよ。あそここそ労働者にとって地上の楽園、約束された永遠のシャングリラだったんだよ」

理性「他にもリモートの人はいるでしょ?相談するくらい良いじゃない。アイドルスタッフの仕事が今なかなか来ないから始めたインターンでしょ?」

理性「……とにかく、1週間のうちに今後の進退を決めることね」

僕の中で結論が出たようです。来週の月曜から金曜まで、いや少なくとも水曜日までにはどうするか決めるべきでしょう。
ここまで読んでくれた皆さんも、退職する良い理由が思いついた方は本noteのコメント欄にどんどん書き込んでくださいね。馬鹿か甘えてないで働けという意見は、全て却下します。

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