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タイのコンドミニアムで理事に就任して思うこと 

先日、コンドミニアムの理事会に出席してきた。
理事会には2種類あり、一つは理事のみでおこなわれる理事会、そしてもう一つはこれに管理委託会社やデベロッパーが加わるもの。
それぞれ原則として隔月に開かれるので、理事は毎月理事会に出席することになる。

前者では新しいアイデアの提案やコンドミニアム内で起こる問題点の洗い出しが主に議案となり、後者では出費を伴う案件に関する採決や前者で練られた案件の進行確認、管理会社への引き継ぎ等が行われる。

私が暮らすコンドミニアムは現在多くの問題を抱えており、理事会が毎月行われているにも関わらず、会での議論は最低でも3時間に及び、時には6時間を超えることもある。最長では7時間に及んだと記憶する。

個別のコンドミニアムで事情は一様ではないし、タイ人にも多様な個性があるのは当然のことだ。それを一般論で語るのは適当ではないはと思うが、1年間に亘り理事を経験して強く思う事は、理事を務めているタイ人は「問題意識が希薄」もしくは問題意識があったとしてもそれを掘り下げて問題解決に向けた思考や具現化する意識が薄い、ということだ。
理事は私を含めて8人おり、それぞれが大学を卒業してそれなりの職に就き、一般的には教養のあるタイ人だろうと推察出来る。
そうであったとしてもこの状況なのだ。

過去一年、理事会が執行した案件は「貧弱な筋トレ用具の増設、それに伴う不要な現有器具の売却とジム全体のデザイン変更」。これは2023年6月に私が提案をし、レポートを何本も書いて多数の理解と了解を得て、やっとの思いで12月に設置が全て完了したものだ。これにより筋トレジムの面積は2倍となり、利用環境は劇的に改善したと自負しているが、理事会が成し得た目立った成果はこれのみ。

現在進められている重要な案件は、
「新しい利用規則の立案」
「公共施設におけるCCTVの増設とフェイススキャンの設置」
「公共施設の秩序維持の為の監視強化、セキュリティスタッフの再配置。」
「屋外公共エリアにベンチを10基設置。」
以上の4点だが、全て私が提案をして理事会の議案となっている。
ただ提案をするだけでなく、それぞれの案件に関しての概要をまとめたレポートの制作、販売会社に連絡を取り見積書を取得、それを元にして詳細を詰めるところまで、全て私一人で動いており、私が動かないと理事会は一歩も進まない状況だ。

他の理事から提案され、改善された案件も勿論ある。
「喫煙所の設置」
「バイク駐車場の増設」
「ジム内に消毒用アルコール設置。」
思いつくのは、、、これ位か。

私が各々の問題を提起しなければ、ほぼ何も改善されず現状が維持されたままだったろうと思うとゾッとする。
それでも致命的な不都合ではないため、日々の暮らしに大きな支障はなく、少々不愉快や不自由に思うことはあるにしても現状を受容して生活していたであろう。

理事会で物事を進めるにあたり、タイ人の遅々とした仕事の進行具合にげんなりすること度々ではあるが、これも文化の違いと割り切って、「誇り高く」「自己評価が異常に高い」タイ人のプライドを逆撫でないように注意はしている。
これらのことはタイで長く働く日本人にとっては自明のことかもしれないが、リタイア後にタイで暮らし始めた私にとっては、興味深い文化の発見であり体験ではある。

チェーホフが執筆活動をしながら深く社会と関わったように、または「異邦人」から出発したカミュが「ペスト」で止揚し目指した、社会との繋がりに現実世界の充足を指向したように、理事会の活動を通してタイ社会との繋がりをこれからも模索して行きたいと思う。


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