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子どもの夢中に付き合ってみたら思いがけない出会いがあった話 -虫が苦手なママでも楽しめる絵本-

自分の子どもに、虫好きにだけは育ってほしくない、と密かに願っていました。

私は大の虫嫌い。

東北の田舎育ちで、小さなころはおばあちゃんに作ってもらったイナゴの佃煮が大好物だったし、トンボやバッタを捕まえるのも大好きでした。オタマジャクシを手の上に乗せるのも平気だったし、学校の帰り道にネズミをつかまえて帰って、こっそり飼おうとして怒られたこともあります(今ならギョッとしていた大人たちの気持ちがよくわかる笑)。

それが、いつの間にやら虫が苦手になって、家の中に小さな虫がいるだけでもギョッとしてしまうようになりました。大人の生活で、虫は身近にいない(ようにしている)ので、虫の存在を感じず生きていましたが、そんな私も子どもと一緒の生活が始まります。

出産後、子どもに願うことは何もないけど、一つだけ願うとしたら、寝食忘れるくらい夢中になれる何かに出会えれば良いなぁと思っていました。それが虫ではないことを祈りつつ・・・

子育ては思うようにいかないもので、というより、誰かを思うようにするなんておこがましいことで、今や2人の子どもは虫好きに育っています。笑

2人とも、アリやダンゴムシがいるとジーっと観察。だったらアリやダンゴムシの絵本喜ぶかも!と一緒に読んでいるうちに、私もいつの間にかアリやダンゴムシに詳しくなってきました。

よく見かけるアリ(クロオオアリ)の女王アリは20年近く生きるってびっくりしませんか!?そもそも、オスアリと出あうのは空中で!羽アリになって飛ぶなんて知ってましたか!?・・・と小ネタを誰を語りたくなるくらいには、虫の生態に詳しくなれたし、虫って面白いなと思えるように。少しずつ虫と私の距離が近づいてきたように思います。

子育てが始まって、私は虫に出会いなおしたのかもしれません。

そんなときに、こんな展覧会が開催されることを知りました。

養老孟司先生の標本コレクションや特殊技術などを通して虫の世界を堪能できる展覧会とのこと。場所は鎌倉市の鶴岡八幡宮ということで、思い立ってすぐに行ける距離!会期が始まってすぐに早速行ってきました。

映像やにおいなど、展示方法もとても興味深かったのですが、我が子に大ヒットしたのが標本の展示。色鉛筆と紙も用意されており、研究としてスケッチが自由にできるようになっているのですが、4歳児が夢中になって動かない!(会場では”研究”に没頭できるような配慮がされていました)
1歳くらいの時から何かを描く/書くことが大好きな彼女。今は絵本の絵や字を模写することにハマっているのですが、まさか標本を描くことにもハマるとは!

観察用のルーペも置いてありました


標本になる前の、空を飛んでいる様子を描いたらしい

気が付いたらスケッチに熱中すること3時間・・・!!(途中、3歳の下の子はおねむの時間となりパパと一緒に先に帰宅。)この3時間の間、私たち親子の貸し切りになる時間帯もあったし、係の方が先が丸くなってきた色鉛筆を削って持ってきてくださったりもしました(ありがとうございました!)。

「ママも描いて!」というので、私も娘の横で一緒に模写をしていたのですが、描くためにじっくり標本の蝶々を観察していると、羽に産毛のような毛が生えていること、羽の模様がうっすら紫色や青色が混ざっていてきれいなことなど、いろいろな発見がありました。

蝶々の名前も模写

娘のスケッチする隣で、私も何となく蝶々を眺めていると、小さな黒い蝶々にくぎ付けに。同じ種類の蝶々に見えるのに、名前が異なる蝶々がいて、何が違うんだろう!?と目を凝らして眺めているとあっという間に時間が過ぎていきました。こんなに虫をじっくり観察したのは何十年ぶりだろう。もしかしたら人生で初めてかもしれない。

3時間もいたので、模写をしている途中で養老先生ご本人が来館されたタイミングにも立ち会うことができました。(会期中いらっしゃることがあるようです。)模写をしながら「なんでだろう?」と疑問がたくさん湧いていた上の子。もし先生に会えたら聞いてみよっか!と言っていたところだったので、早速お伺いしに養老先生のお近くに行こうとすると、急にモジモジしはじめる。せっかく直接お話しできるチャンスなので、代わりに私が質問させていただきました。

娘の質問は「なぜ、ダンゴムシとテントウムシの標本はないの?ダンゴムシとテントウムシ好きなのに」。養老先生は「いっぱい持ってるんだけどね。今回は持ってこれなかったんだ」と優しく答えてくださりました。

子どもの”好き!””夢中”に付き合った3時間。この間に私も虫をじっくり観察するという体験ができたし、養老先生とお話しするという機会にも恵まれました。何より、子どもの夢中な顔を見られたことがとっても嬉しい!こんな時間をプレゼントしてくれた娘に感謝した一日でした。


さて、今回は虫の絵本を紹介したいと思います。

「じぶん」のはなし

鎌倉駅西口で”ようろうせんせい”と待ち合わせし、虫取りに向かう子どもたち。虫を探しながらの子どもたちとようろうせんせいの会話が素敵です。
好きなことに出会った喜びや未知なるものへの好奇心、命の循環の不思議。私たちも自然の中で生きている種のひとつなんだということを改めて考えさせてくれます。絵をよく見ているといろいろないきものが出てくるので、それを探しながら読むのも楽しいです。


へんしん すがたをかえるイモムシ

私は大の虫嫌いだったので、子どもの絵本でも虫の写真が出てくるとみていられないほどでした。でも、この絵本に出会って、生まれて初めてイモムシを美しいと感じたのでした。美術作品を手元に持っている気分になれる絵本です。
作者はイモムシ画家を名乗ってらっしゃる桃山鈴子さん。桃山さんのウェブサイトで絵がたくさん見られるので、点描で描かれる虫の美しさをぜひ見て欲しいです。

どちらの絵本も虫が苦手な方にも楽しんでいただける絵本だと思います。

今回の展覧会で、好きの力ってすごいなぁ、素敵だなぁと養老先生と娘を見ていて改めて感じた私。この夏は、家族で好きなことに没頭する時間を過ごしたいなと思いました。私は読書に没頭する時間をつくるぞー!



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