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身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ


能の『敦盛』(あつもり)という作品に出てくる言葉です。


『敦盛』は、平家物語に登場する16歳の若武者武、平敦盛の物語を題材にした能の作品です。敦盛は、一ノ谷の戦いで源氏の武将・熊谷直実(くまがいなおざね)に討たれます。直実は若き敦盛を討った後、出家し仏門に入ります。この物語は、武士の宿命や無常観を描いています。


武士道と自己犠牲


この言葉は、特に武士の倫理観に深く根ざしています。武士道は、武士が守るべき道徳的な規範を示しており、名誉、忠誠、勇気、礼儀などが重んじられました。

武士にとって、名誉を守るために命を捨てることは最高の美徳とされていました。このため、戦場での覚悟として「身を捨てる」精神が求められたのです。

仏教の影響

また、仏教の教えもこのことわざに影響を与えています。仏教では、自己を超越し他者のために生きることが尊ばれます。

自己犠牲の精神は、利他の精神として仏教の修行にも取り入れられてきました。こうした背景からも、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」の精神が形成されました。

「身を捨てる」

「身を捨てる」という言葉は、単に自分の命を犠牲にするという意味だけでなく、自己の利益や安全を超えて目標や大義のために全てを捧げる覚悟を表しています。

現代風に言えば、自分の快適なゾーンを離れてリスクを取り、全力で挑戦するという意味にもなります。

「浮かぶ瀬もあれ」

一方、「浮かぶ瀬もあれ」という部分は、困難や危機的な状況の中でも、覚悟を持って行動することで解決策が見つかる、もしくは成功する道が開けることを示しています。

「瀬」という言葉は、川の急流や浅瀬を意味し、難所を象徴しています。それを乗り越えるためには、全力で挑むことが必要だというメッセージが込められています。

戦国時代の武将たちは、戦において自らの命を顧みずに全力で戦うことで、時には劣勢を覆し勝利を収めることができました。織田信長や豊臣秀吉といった名将たちも、己の身を捨ててこそ大きな成果を上げることができたのです。

現代でもこの精神は多くの分野で生きています。例えば、企業家が新たなビジネスを始める際には、多くのリスクを伴いますが、そのリスクを恐れずに挑戦することで成功を収めることができるでしょう。

このことわざが伝える教訓は、困難な状況に立ち向かうためには、自分の全てをかける覚悟が必要であるということです。

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